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ポンコツな少年 ③

食べちゃったからじゃねぇよ!


じゃあなにか、私はそんなくだらないことに巻き込まれてこんな大変な目にあってる訳?!


「そんなあからさまに怪しいヤツをなんで食べちゃったわけ?!」

「仕方なかったんだ!! だってめっちゃ腹減ってたんだもん!」

「もんじゃねぇよ!!! 普通は警戒して穴の中に落ちているものなんて食べないでしょ!いくらお腹が空いてたって!!お前はバカか!!!!」


口調が少々悪くなってしまったのは許して欲しい。


そりゃ怒りたくもなるよビックベアだって。

だって、自分の家に不法侵入された上に頑張って集めた大切な食料を勝手に根こそぎ食べられちゃったらそりゃ怒るよね!

私だってそんなことされたらブチ切れてるから。

食べ物の恨みは恐ろしいんだからな!!


「マジでどうすんのよ! あんたが元凶なんだから何とかしなさいよ!!」

「そんなこと言われたって………はっ!」


少年はなにか閃いたかのようにバッとこっちの方を振り向くと満面の笑みで

「一つだけ方法がある! 成功するかは運次第だが……運が良ければこの状況を打破できるとっておきがある!」と言ってきた。


………なんだろうか。

この……あんまり信用出来ないようなとてつもなく不安になる感覚は。

普通ならそう言われれば期待をして藁にもすがる思いでその提案に乗るんだろうが…………。


この少年に言われると希望に満ちた提案…というより絶望に満ちた提案に聞こえるのは何故だろうか。


この提案に頷いてはならないと私の何かが警告している。


ここまでこの少年と一緒にいた時間を思い返してみて、絶対にろくなことにならないと思った私は少年が早まらないうちにその提案を却下しようと口を開こうとした。

だが……少年の方が少し早かったみたいで私が口を開く前に手をガシッと掴まれた。


空間転移(テレポート)!」


そして高らかに少年がそう口にした瞬間、私の視界は一瞬にして真っ白に塗りつぶされた。

突然の出来事に驚いたが、驚きすぎて叫び声すらも上げられずに息を飲んだ。


「?!」


しばらくすると光が戻ったみたいに視界が明るくなった。

反射的にギュッと瞑っていた目を恐る恐る開けてみるとさっきまでの景色と若干違っていた。


………いや、さっきまでとの景色とあんまり変わんないような気がするな。


……? なんだろう、さっきまでいたところと若干違うような気もするけどほぼなんも変わっていないような気がするのは私だけなんだろうか。


隣にいる少年を見上げると少年は神妙な顔をして腕を組みながらボソッと「やっぱり失敗したか……」と呟いた。

しっぱい?……失敗ってなんだ。

一体何をしたんだろうかこの少年は。

聞いてもろくな答えがかえってこない気がするがこのまま何も聞かないでいるというのもなんかモヤモヤして落ち着かないのでとりあえず私はさっきの一瞬目の前が真っ白になった原因を静かに隣に佇む少年に問いかけた。


「さっきのは空間転移という魔法を使ったんだよ」

「…………まほう…………」

「この空間転移という魔法はだな…術者が行ったことのある場所ならどこにでも一瞬で行けるめっちゃ便利な魔法なんだ」

「……ふーん………さっきはその魔法を使ったの?」

「あぁ」


私の問いかけに少年は静かに頷いた。


「その……空間転移?だっけ……そんなすごい魔法使ったのに周りの景色なんも変わってないような気がするのは私だけ?」

「………そうだな」

「いや、そうだなじゃなくて。魔法使ったのになんも変わっていないのはなんでなの?」

「……………………………そう………だな」


私がさらに問いかけると少年は苦しげな表情で絞り出すように声を出した。


「おい……さっきからそうだなしか言ってないけどなんなの? 」

「………怒らないか?」

「………私が怒るようなことをしたってこと?」

「………………」


少年は何も答えなかった。

無言………つまり肯定したってことか?

またこの少年は何かをやらかしたらしい。


はぁ。起きてしまったことについてあれこれ言っても仕方ないし、怒りだしたい衝動を必死に押し殺しながら「怒らないから何したか話して」と言った。


「端的にかつ、簡潔に言うとだな……単純に魔法の発動に失敗したんだ」

「…………しっぱい?」

「あぁ……どうしてか俺昔から何故か魔法の成功率が低くてだな……その………どんだけ練習しても失敗する確率が99%なんだ」


………は? 失敗する確率99%ってほぼ高確率で失敗するってことじゃん。

何故そんな成功率で魔法使ったのこの人頭大丈夫?


私は、目の前の少年の頭を本気で心配した。


「9割方失敗するってわかってたのになんで使ったの?」

「残りの1%にかけてみた!」


私の問いかけに少年はものすごくいい笑顔で開き直ったかのように言い放った。

それを聞いた私は怒りのあまりに少年の襟首に掴みかかった。


「そんな不確かなものにかけんなよ! 」

「そんなに怒んなよ! 誰にだって失敗はあるだろ?」

「お前は出会ってから失敗しかしてないでしょ!!9割失敗するんだったらそれはもう失敗にしかならないから!残りの1割なんてあってないようなものなんだからね!!」

「お前……その言い草は酷くないか!? それじゃまるで俺が失敗しかしてないみたいじゃんか!」

「少なくとも私と会ってからは失敗しかしてないでしょ!」


グルルルルルルルルル

しょうもない喧嘩を繰り広げていると急に頭上から唸り声が聞こえてきた。

突然聞こえてきた声に2人して動きを止めて顔を見合せた。


「……ねぇ……なんか聞こえない?」

「…確かに……なんか獣?みたいな唸り声が聞こえるな」

「え?」

「え?」


唸り声? と首を傾げかけた途端にそういえば私たち逃げてる途中だったのを思い出した。


ということはこの唸り声は………。

2人して唸り声の正体に気づいた。

そうすると今度は2人して顔を真っ青にしながら「まさか…」と呟くとどちらともなくギギギッと効果音がつきそうな動きで後ろを振り返った。


「「わぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」」


振り返った先にいたのはビックベアだった。

なんと私たちはさっきの魔法でビックベアの真ん前に一瞬にして移動したらしい。


いや、ほんとにマジで何してくれてんの?!?!?!?!?!?!

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