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7 異なる世界

 ウィンダリアの村は活気と安堵に満ちていた。


 生意気できかん坊、やんちゃ坊主ではあったが、嫌われ者ではなかった少年が試練から帰ってきた。


 一時は絶望的かと皆覚悟をしていたのだが、クワンの帰って来た報は瞬く間に村中に広がり、村の正門は迎えの者で溢れかえった。


 クワンはとにかく憔悴していたのですぐに休ませ手厚く看病された。


 そして丸一日寝込み。体を起こせるようになるまでにさらに一昼夜を有した。


 朝日とそよ風が窓から差し込む部屋で、クワンは目を覚ます。


 いつもの朝だが、いつもと違う部屋の様子。


 起きるたびに頭をぶつけてくる者はもういない。


 全てが夢であればどんなにいいかとも思う。


 だがそれは叶わぬこと、と窓の外を眺める。


「クワン、起きられるようになったのかい?」


 声がした方を見るとディメディアが入ってきていた。


 帰って以来、ずっと世話を焼いてくれていたのだった。


「動けるんなら、大婆の所へ行っておくれよ」


 クワンは頷いて立ち上がる。


「その……。ハクは、残念だったね」


 小さく言うディメディアにクワンは黙って頷く。


 外へ出る前に小さくだが「ありがとう」と呟いた。





 大婆の住居へ行き、労いの言葉を受け、正式に試練を終えたことを認められる。


 クワンは立派な大人として認められた。村の外へ出るのも自由だ。


 大婆は終始優しい口調で、クワンの行動を咎めるようなことはしなかった。


 だがクワンには分かっていた。


 これはバツなのだ。命を軽んじた自分に当たったバチなのだと。


 そんなクワンの様子を見て取ってか、大婆は優しい口調で言う。


「こうしてお前が無事に帰ってきた。それは誰よりも、ハクが一番喜んでいるよ」


 クワンの感情はついに決壊し、大婆の膝にすがって村中に響くかというような声を上げて泣いた。

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