魔王様は転生して追放される。今更戻ってきて欲しいといわれても、もう俺の昔の隷属たちは離してくれない。
こちら連載候補の読み切り短編になります。
大空を覆い尽くすように魔王軍の魔族たちが竜にまたがっている。
その魔族たちと対峙し、戦うは神の使者たる使徒たちの軍勢である。
使徒たちは真っ白な口も鼻ももたない能面のような顔形で衣服すら身につけていない。
神々の尖兵として突如出現し、その圧倒的な戦闘力で魔族を蹂躙してきた存在だ。
最終戦争の最終局面。
魔王たちはそんな中を最強竜種である暗黒竜のラミアに乗って敵の本陣へと向かっている。
ラミヤに乗るのは魔王をはじめ、彼の最上位の部下で3大隷属と呼ばれるものたち。
そしてその目的地は天空に浮かぶ城塞都市カルカソンヌだ。
かの都市は暴風の壁で守られ今まで一度も外敵からの侵入を許していなかった。
ラミヤはそこに向かって猛スピードで突き進んでいる。
「やー、もうそろそろなの。みんな準備を頼むの」
「了解ミャ。一発で決めてみせるミャ」
小柄な緑髪エルフのルルの呼びかけに獣人猫種のタマラが応える。
風はどんどん強くなっていっている。
あと少しで進行不能地点と呼ばれる暴風の壁にぶち当たる。
ルルの周りで旋風が生まれだす。森の眷属にして風の民エルフ。
その中でも最も風の精霊に愛され、最も長命でかつ全エルフの中で最強のルル。
彼女は暴風に暴風をぶつけてそれを相殺させるべく力を振り絞る。
「んんんんんんんーーーー、いくの! みんなラミアによく掴まっているの!」
ルルが発した高魔力を宿した風の塊は暴風の壁にぶつかると大爆発し、その壁に風穴を開ける。
「いまなの! 突っ込むのラミア!」
ラミアが間髪入れずに暴風の中へと突っ込む。
すると今度は次から次へと四方八方から飛竜たちの群れが襲いかかってきた。
「邪魔ミャ! ラミアの進路を開けるミャ!」
タマラの手が何本もの漆黒のナイフを携えたような形状へと変わる。
タマラは獣人種最強と呼ばれるキングキャット種と高位デーモン種のハーフである。
その手から次から次へと強烈な黒色の斬撃波が発せられる。
斬撃波は飛竜に命中し、飛竜たちは断末魔の叫びをあげて次々と地面へと墜落していく。
「城郭都市が見えてきたミャ! 後もう少しだミャ!」
長き戦いの日々の最終目的地点。
神々の眷属たちが住まうとされる城塞都市カルカソンヌの威容が俺たちの目の前に現れた。
中央の城を中心に大理石で構成された驚くほど美しい城塞都市だ。
ラミアが城塞都市に降り立つ。
俺たちをその背から下ろすと、ラミアは暗黒竜の姿から人型へとその姿を变化させる。
辺りはシーンとしている。妙だ。静か過ぎる。
外ではお互いの総力、死力を尽くした殺し合いが行われている。
それなのに城郭都市には人の気配というものが全く感じられなかった。
もしかして罠?
そんな思考が俺の脳裏に浮かぶ。
罠だとしたら一体なんの目的で?
問いは新たな問い生んでいく。
その時、目の前の何もない空間に奇妙なノイズが走ったと思ったら――
そこから天幕が開かれたかのように、俺たちの目の前に突如使徒の軍勢が現れる。
しかもその使徒たちは全身金色の能面だ。
全身金色の能面は白色の能面の使徒よりも何倍も強い。
俺の最強の3大隷属をもってしても1対1で勝てるかどうかという強敵だ。
そんな最強の金色の使徒たちがずらりと数百体、綺麗に整列して並んでいた。
荘厳でもあるが、絶望的な光景だった。
「んっ、こんな数、勝てるわけがないの。でもルルは最期魔王様と一緒でうれしいの」
「死力を尽くして戦った後はあの世で魔王様にいっぱい褒めてもらいますの。さあ皆さんで存分に踊りましょう」
「絶望的な戦力差だミャ。でも一緒に逝けるのが魔王様で最高なんだミャ」
「残念だがここまでだ」
ルルたち隷属の視線が一斉に俺に集まる。
その表情からは不安な心情が垣間見える。
俺は最愛の隷属たちを死なせるつもりはない。
「お前たちは死なせない。予め用意しておいた地下の広大なシェルターに転送魔法で飛ばす。そこで生き永らえて力を溜めるんだ」
「いやのなの! 魔王様の側にいられないなら死んだほうがましなの!」
「自分だけで死ぬとおっしゃるのですか魔王様! 最期までお供させてくださいまし!」
「ひどいミャ魔王様! 最後まで一緒にいさせて欲しいミャ!」
思えばルルたち隷属が俺の命令に逆らったのはこれが最初で最後かもしれない。
しかし俺の意思が固く抗いようがないと悟った彼女たちの瞳からは大粒の涙がこぼれる。
「すまない。きっと200年後くらいには転生できると思うから、文句はその時に聞く」
「ぐすっ、魔王様がいない世界に生きてもしょうがないの。お願いだから一緒に死なせて欲しいの」
「ひどいですわ。魔王様とともに生きてともに死ぬ。私たちの一番の願いを拒否なさるのですもの」
「いやミャ。一緒に死なせて欲しいミャ。こんな所でお別れになったら魔王様を恨むミャ」
ルルたち隷属を転送魔法で地下シェルターに送る。
最後に見えたのは彼女たちのぐしゃぐしゃの泣き顔だった。
心が痛む。だが仕方ない。
もし万が一、俺が運良く一人、生き残ったとして。
なによりも俺が彼女たちの死を受け入れられないだろうから……。
そこにパチパチパチと空虚な拍手の音が鳴り響く。
「すばらしい! 感動のお別れでしたね。さて、これでもう思い残すことはないでしょう。さくっと殺して差し上げますのでご安心ください」
天使長ガブリエルが真っ白な翼をたなびかせながら悠然と降り立つ。
「一つ聞いていいか?」
「なんでしょう? 冥土の土産に答えてあげますよ」
「我々を攻撃してきた理由はなんだ?」
この戦争は天使たちの一方的な魔族への攻撃からはじまっている。
「理由ですか。そうですね…………まあいってしまえば、すべてはあなたのせいですね」
「どういうことだ?」
「あなたは強すぎたのですよ。神々が嫉妬し、恐れる程にね」
「………………」
心当たりはないことはない。
実際下位神であれば、過去に横暴な振る舞いをしたものは懲らしめたこともある。
あれが神々の逆鱗に触れたということだろうか。
「じゃあ今度お前たちと戦争になった時は、直接神々の元へ乗り込むことにしよう」
「ご冗談を。いくらあなたでも一人で神々全員を相手に勝てる訳がないでしょう。それに現在こちらには神々の神力を存分に注がれた使徒たちがおります。この数の黄金の使徒たちを相手にするのは神々でも厳しいという戦力。もう諦めましょう」
にっこりと笑ってガブリエルはいう。
しかしその目は一切笑っていない。
「確かにこの戦力を相手にするのは俺でも厳しい。だからさきほど転生魔法を発動した。転生先は凡そ200年後だ。久々の転生で楽しみだ」
「一体なにを……?」
「魔王の俺だけが使える命を燃やす最終魔法がある」
「まさか……」
ガブリエルが眉間にしわを寄せ、その顔を青くする。
「ここ以外から神力はほとんど感じない。神たちも相当の力をこいつらに注いだのだろう。よってこいつらを殲滅すれば神々の戦力もほとんど失われる。そこで俺が死ねば長きに渡ったこの最終戦争も終結することになるだろう。おっと――」
俺は逃げようとしたガブリエルに拘束魔法をかける。
「う、動けない。や、止めろ! 死ぬなら一人で死ね!」
「まあそういうな、お前には色々とお世話になった。一体何人の罪なき魔族をその手にかけたんだ? 俺と一緒に地獄にいこう」
「ふ、ふざけるな! 天使たる私が向かうのは天国だ!」
俺は目の前に黒色の魔球を構築する。
俺は命の炎を燃やして全魔力をそこに注ぐ。
余りの魔力に若干時空を歪めながらその黒球はどんどん巨大化していく。
いつしか俺の身体内部から徐々に光が発せられるようになる。
こうなると最終段階でもう俺の命は長くはない。
「じゃあなガブリエル。またあの世で会えたら会おう」
「くそぉ! こんなはずでは!」
『自死爆散』
城塞都市カルカソンヌに黒色の閃光とともに凄まじい爆発が巻き起る。
最期、魔王ローランドの脳裏には隷属たる配下たちの面々が思い浮かぶ。
最高で最強の最愛な配下たち。
彼女たちはきっとこの戦争を生き永らえてくれるだろう。
そしてもし200年後に再会できることができれば……。
「楽しみだ……」
ローランドはそう最期の言葉を残して自らが発した黒色の閃光にその身を委ねていった。
それから200年後。
俺は布で全身を包まれている。
「見てレイズ、元気な男の子よ」
「ああ、エレン、君に似て整った顔立ちをしている。しかしこの子全く泣かないな」
真っ暗闇だ。
それが自身の瞳を閉じている為だと気づくのにしばらく時間がかかった。
俺は瞳を開く。
ぼんやりと目の前の二人の人物が目に入る。
若い女性に若い男性だ。俺の両親だろう。
俺はどうやら人族へと転生したようだった。
そういえば転生先の種族を指定しなかった気がする。
だからランダムな転生になってしまったのか。
「あうー、あうあうあーー」
「あらあらどうしたの、私の愛しいカイン」
俺の名はカインというのか。
両親たちの温かな眼差し。
その眼差しからそこにある愛情をはっきりと感じ取ることができた。
愛されているという絶対的な安心感。
自分という人間の必要性の認識。
どうやら俺は恵まれた家庭に生まれたようだ。
こんなに愛情を注いでくれる家庭であれば他がどんなものであっても耐えることはできる。
それに生まれもたぶん恵まれている。
恐らく両親の服装や部屋の内部の様子より家は貴族だろう。
母は俺を寝台から優しく抱き寄せる。
「もうしゃべれるかの?」
「あうーあうーあー」
「まだしゃべれる訳ないでしょ。でもほんとにしゃべってるみたいね。ほらカイン、ママっていってみて」
「ずるいぞ、エレン! ほらカイン、パパっていってみてくれ」
「きゃっきゃっきゃ」
俺は両親の親バカぶりに笑ってしまう。
思えば今まで転生してきたが、すべて魔族で人間として生を過ごしたことはなかった。
魔族に比べると寿命は短く、身体も弱く、潜在魔力も低い人間。
そんな人間でこの生は頑張ろうと思う。
この愛情深い両親の元で。
幸い転生魔法が成功したことにより前世の魔術の知識はある。
それにこのまま成長していけば魔王の時の魔力も徐々に引き継がれていくことだろう。
両親は俺を寝台に戻すと用事があるのかどこかしらへ消えていった。
少し魔力を練ってみる。
ぽわっと手の平が温まる。
どうやら問題なく魔法は使えるようだ。
「あうー、あーうー」
言葉はまだしゃべれない。
難儀なものだな。
そんなことを考えていると俺に急激な眠気が襲ってくる。
ダメだ意識が…………俺はそのまま気持ちよくお眠となった。
それから5年後。
「ちょっとお外へ遊びにいってまいります」
「気をつけて、お家の塀の外は危ないのでいってはなりませんよ!」
「はい、お母さま!」
俺はそう元気よく挨拶をしつつ、うちの外に出た途端に飛行魔法を使って自宅からは遠く離れていく。
歳を重ねてある程度、魔王時代の魔力が戻ってきたので、人気のない所で魔法の試し打ちをしてみるつもりだった。
しばらく飛ぶと近隣の岩山に到着する。
その頂上近辺の断崖絶壁の崖に囲まれた盆地のようになっている所に降り立った。
ここまでくれば人目を気にすることもないだろう。
早速俺は天上の大空へと向かって魔法を発してみる。
「じゃあ、いくか」
天上に俺の光魔法による閃光が発せられたその時――――
「メーデーメーデー、目標魔力が検知されました! 目標魔力が検知されました!」
地下都市に警報が鳴り響く。
「方角は!?」
「故障じゃないだろうな! 確かか!」
地下都市の住民の魔族たちからは怒号が響き、半ばパニックに陥っていた。
そして地下都市の司令部の大きなモニターに一枚の地図が映し出されている。
「魔力を検知したのはこちらになります。ここは何もない岩山で近隣には街や村どころか民家もありません」
「でも魔力を検知したのなら確かめないといけないの」
「間違いであれば間違いで別にいいミャ」
「間違いでなかった可能性を考慮して調査は必須ですわね」
そこには緊急で集まった魔王軍の幹部たちが勢揃いしていた。
「もしあの御方の復活だったとして誰が確認にいく?」
魔王軍No.2であり、参謀長であるガルムが質問する。
するとその場の全員の手が挙がる。
「あなたたちはこの場に残って」
「ずるいです。私たちももし転生なさったのならお会いしたいです!」
幹部たちの言い争いとなる。
「立候補者多数につき、私と3大隷属が調査に赴く。残ったものたちは警戒していてくれ」
ガルムとルルたちは不平を隠そうとしない他の幹部たちを残して、早速ラミアに乗り魔力をキャッチした場所へと向かった。
「うん、なかなかの威力だな。魔王だった時の大体5%くらいか? この調子ならこの肉体の鍛錬も併せて行っていくことで早いうちに昔の魔力を取り戻せるやもしれん」
カインは東の空から猛スピードでこちらに近づいてくるものを検知する。
近づいてくるものは恐らく竜でそれに何人かが乗っている。
いずれも凄まじい魔力だ。
「大した使い手たちだ。だがどこか懐かしいこの魔力」
カインの顔に思わず笑みが溢れる。
「見えたの! 岩山の崖に囲まれた中に誰かいるの!」
「人間ミャ。魔王様ではないミャ」
「残念ですわ。てっきり魔王様だと思いましたのに……」
「まてお前ら早合点するでない。あの魔力にどこか懐かしさを感じぬか?」
ラミヤは岩山へと降り立ちその姿を人間へと变化させる。
「……私たちを見て怯えないの?」
「まだほんの子供ミャ。かわいいミャ」
「久しぶりだなお前ら。元気にしていたか?」
俺のその一言でララたちの残念そうだった表情が一変する。
「まさか……そんな……魔王様なの?」
「この魔力……まだ弱いけど懐かしいミャ……」
「魔力の波長、特徴。魔王様に間違いありませんわ」
わっとみんなは俺に押し寄せる。
「わーん、魔王様にやっと会えたの!」
「私たちみんな魔王様の言いつけを守っていい子にしてたミャ! 褒めてほしいミャ!」
「200年分、褒めて甘えさせて欲しいですわ!」
みんな泣きながら俺を抱き寄せ抱きしめる。
「ガルム、お前にも苦労をかけたな」
「もったないお言葉」
俺は転生魔法を発動するときに誤って転生種族の指定を忘れていたこと。
今は人族の貴族の両親の元、幸せに暮らしていることを伝える。
そしてララたちを一杯褒めてやる。
一方、あの最後の戦いで最終戦争も終結して、それから魔王軍は最初は地下都市で力を溜めた。
その後は地上にも打って出て、人間社会に対してもある程度の影響力を行使できるほどになっているとのことだった。
「魔王様のご両親には是非一度ご挨拶に伺いたいですわ! 魔王様のご両親ですから我々の力で一国の国王くらいにはすぐにできましてよ!」
「まあ待て、ちょっと俺の話を聞いてくれ。後、俺はもう魔王ではない。人間でカインという名を授かっている。これからはカインと呼んでほしい」
「カイン様! いい名なの!」
「わかったミャ! これからはカイン様と呼ぶミャ!」
俺はこの生では人間として生きていきたいことを伝える。
「そんなカイン様! 私たちを捨てるつもりなの?」
すぐさま反論して説得する。
魔王軍のみんなには感謝していること。
別に人間として生きても魔王軍に後から合流することは可能であること。
まずは俺が人間としてどこまでいけるのか試してみたいということ。
元魔王としてではなく、一人間として一から人間世界でどこまでいけるのか。
「そうやって試してみてダメだったら諦めるし、うまくいけばいったでそこから魔王軍に合流してもいいだろ? はじめて人間に転生したからどこまでやれるか試してみたいんだ。それに俺はもう魔族じゃないんだから魔王軍を解散しても別にかまわないぞ」
「魔王軍を解散するとかありえないの!」
「私が魔王軍から離れる時は死ぬ時ミャ!」
「わかった、わかった。それはわかったが俺が人間として頑張っているときは変な干渉とかは止めてほしい」
「そ、それは当然なの。わかってるの」
ララは俺の目を見ずに明後日の方向を向きながらこたえる。
怪しいな、こいつらほんとに大丈夫か?
「…………まあいい。変な干渉とかしたら怒るからな。後、地下都市は前と同じ場所か? 今度遊びにいくよ」
「是非来て欲しいミャ! みんな喜ぶミャ!」
「地下都市建設以来のお祭りになりますわね。全力で歓迎いたしますわ!」
別に普通に旧友を温められたらいいのだが、なんだか大事になりそうでこわい。
まあでもこいつらの元気な顔を見られたのは率直に嬉しい。
こうして俺はその後、まずは冒険者を目指して精進することとなった。
それから十数年後。
冒険者として復活した邪神を討伐し、王から報奨をもらう段になった時のことであった。
「カイン! お前を我らが冒険者パーティー、蒼石の騎士から追放する!」
俺は突然所属冒険者パーティーからの追放を宣告された。
「…………念の為、理由を聞いてもいいか?」
冒険者パーティーを追放されるほどの責を怠ったことなど全く心当たりがなかった。
実際邪神討伐は俺というメンバーがいなければ難しかったはずだ。
「まずはその偉そうな態度だ。俺は王族だぞ? 言葉遣いには気をつけろと何度も注意したはずだぞ!」
「それはすまなかったな。どうしてもその辺り口が悪くてな」
王族で冒険者パーティーリーダーのラディウス=ラジミールがまず口火を切る。
『お前が注意しろミャ! このウスラトンカチがミャ! 恐れ多くもお前が目の前にしているのは元魔王様ミャ! あーもー我慢できないミャ。あいつぶち殺しにいくミャ!』
『あーちょっと抑えて、タマラ! 後もう少しでカイン様は人間たちの元を離れる絶好の好機!』
元魔王の動向は千里眼の能力によって指令室の大モニターに映し出されている。
もちろんカインにはそのことは知らされていなかった。
「後はその勘違いですわね。今回の邪神討伐でも自分がいなかったらなんて吹聴してるみたいですが、勘違いも甚だしいですわね」
「別に吹聴しているつもりはなくて聞かれたから答えただけだが。それに俺がいったことは事実だろ」
次は聖女でパーティー紅一点のアメリだ。
『あのアマもう我慢できないの! 止めないで欲しいの! チリも残らないくらいにしてやるの!』
大モニターに風弾を打ち込もうとするララをみんなで必死に止める。
「未来の王殿下であられるラディウスと教会重鎮になるのは間違いないアメリがそう言ってんだ。乗らない手はないだろ? お前が追放されると俺の取り分も増えるしな。元々てめえは気に入らなかったからせいせいするぜ」
「お前は何が正しいのかという自分の意見はないのか? ラディウスとアメリが正しきことをいっているとでも? 後悔するなよ」
最後はアマデウスが不敵な笑みを浮かべながらそう告げた。
『あの男のカイン様に対する不敬、万死に値しますわ! 人間の中で私が一番嫌いなタイプですの! ああ、私を止めないで頂けますか!』
今度は人化を解いて暴れようとするラミアをみんなで必死に止めた。
「お前たちの決意は固いわけだ。であれば俺はお前たちの意思を尊重してパーティーからの追放を受け入れよう。ただ一点。俺は今、ラジミール王族の不正の疑いを調査しているが、これがパーティーの追放判断に影響していないだろうな?」
「ええい、カインお前は追放されたんじゃ! さっさとこの報奨の場である王の間から消え失せい! それとも今この場で衛兵たちに我が命令違反で拘束されたいか!」
ラジミール王は俺に命じる。
王の傍らには勇者機関の幹部の男が薄ら笑いを浮かべながら佇んでいる。
勇者機関も不可解な動きをしておりその調査を開始した矢先のことであった。
王にそういわれると今は引き下がるしかない。
俺は城を出て、街を出て、街道をトボトボとこれからどうするかと歩いている時であった。
突然空高くより幾人かの魔族たちが舞い降りる。
みんなは魔王軍の幹部たちだった。
「理不尽な追放に憂き目にあいましたカイン様のご心痛、お察しいたします。我らが魔王軍のカイン様への忠誠は些かも衰えることも乱れることもしておりません。魔王様がその身を挺して世界をお救いになられた200年前から今日に至るまで一ミリたりとも」
「今こそ魔王軍に戻ってくる時なの。みんな首を長くしてまってるの」
「あのクソ馬鹿どもに目にもの見せてやるミャ」
「是非ともカイン様に不敬を働いたものたちに地獄を見せましょう」
「お前らなんで俺が追放されたことをもう知ってるんだ?」
魔王軍幹部たちは俺のその指摘に一様にギクッとなる。
「…………まあいい。うまくいかなかった時も魔王軍に戻るという約束だしな。みんなまたよろしく頼む」
その時喜びの余り、魔王軍幹部たちからうぉーーーという雄叫びのような歓声と、凄まじい魔力とが発散されてそれは近隣諸国まで響き渡った。
後から聞いた所によるとちょっとした騒ぎになったらしい。
こうして人間として生まれ変わった俺を長とした魔王軍は再結成されることとなった。
もちろん俺が調査をしているラジミール王族の不正を調査することを止めることはない。
例えそれで我が魔王軍がラジミール王国と敵対することになろうとも。
その過程で元冒険者パーティーのものたちとも激突することとなろうとも。
こちら連載候補の読み切り短編になります。
続きを読みたいと思って頂けましたらブクマや評価、感想を頂けると嬉しいです。




