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白衣のブタ共

「申し訳ございませんわ」

 僕とエッバ、クリームヒルトの三人で医局を出るや、クリームヒルトは深々と頭を下げた。クリストハルト教授はまだ医局内部で他の教授たちに頭を下げているらしい。

「無理を言って帝都まで来ていただいて、更に無理を言って魔法医師大学で講義をしていただいたのに、お父様のミスであのような結果に……」

「別にいいよ。君のせいじゃないし、お父さんも悪気があったわけじゃないだろうし」


 彼女に気を使わせないようにそう言うけど、本音はやっぱり悔しかった。

 ろくに医術士の仕事を理解しようともしないのに、あんなに言われて……


「あなたにも、不快な思いをさせましたわ」

 クリームヒルトがエッバにも謝罪するが、


「別に? 怒ってないよ?」

 エッバは僕の腕に豊かに実った果実をいつもより強めに押し付けながら、あっけらかんと返事した。


「な、なんでですの?」

「だってご主人様が何を言われようと、ご主人様はご主人様だしー」

 廊下を歩くうちに、教室の一つから軽い物音がした。

 普段に比べれば軽い音だが、エッバが身を震わせた。


どれだけ気丈にふるまっていても、さっきの医局でのストレスで神経が過敏になっているのだろう。

 僕はとっさに彼女を抱きすくめる。

 背中を撫でながら、フードの中に手を入れて軽く犬耳を撫でてやる。

 そうするうちに彼女の震えは収まっていった。


「私がこうなっても、ご主人様は傍にいてくれる。私を見捨てない。それに比べれば誰に何と言われようと、いいですよー」

 エッバは向日葵の花のように明るい笑顔で、つぶやいた。


「私があの場で白衣のブタ共を切り刻んだら、ご主人様は困るでしょう?」


 僕は軽く頷いた。

「なら、いいんですよー。クリームヒルトさんも、気にしないで」

 普段なら収まっているはずの震えをかすかに残したエッバの背中を、僕はそっと離す。

 すぐにでもこの魔法医師大学から立ち去るために。


 でも、今日はトラブルに見舞われる日らしい。

思えば予兆はすでにあった。

 綺麗なものの裏側には常にどろどろとしたものが渦巻いていて。

 それはいつ湧き出るか、誰にも予測できなくて。


 晴天を霹靂が切り裂くように、大学の外から全身を震わせるような轟音が続けざまに聞こえた。

 クリームヒルトが恐怖におののいたが、物音が苦手なはずのエッバは視線を鋭くして軽く腰を落とした。


同時に複数人の怒声と罵声、そして悲鳴が聞こえた。

 



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