魔法医師大学へ
中央駅からケーニヒ通りを通り、シュトゥットガルト郊外。昨日も見たかつて大公家の宮殿であり、今は魔法医師大学の敷地となっている場所。
魔法医師大学は学費の高さと入学試験の難しさのためか貴族の子女・平民の資産家が多く在籍している。だが最も多いのは親や祖父母が魔法医師という生徒たちだ。
そのためコネが入試以上にものを言うという噂もあるが、建前は平等に門戸を開いているということもあり真偽は定かではない。
それに入試枠はごくわずかだが、学費免除の特待生もあるなど貴族・資産家・魔法医師の家計以外でも入学が可能なシステムがある。
「クリームヒルトは魔法医師大学のどこに勤めているの?」
僕は馬車を降り、授業の資料を入れた革製の鞄を手に持ちながら聞いた。
「わたくしは診療部門ですわ。研究部門へのお誘いもあったのですけれど、やはり患者と直接顔を合わせるほうが好きですから」
噂では、普通は成績優秀者から研究部門に回されるらしい。飛び級を繰り返した彼女なら研究部門かと思ったけど、誘いをよく断れたな。
彼女自身の強い希望か、アーデレ家の力か。
校舎は淡いオレンジ色の壁に木組みのガラス窓がはめ込まれ、屋上には白い石造りの欄干の上に小さめの彫像がいくつも建てられていた。
正門前には庭園があり、校舎まで続く石畳の道沿いに、色とりどりの花が咲き誇っている。
それだけを見れば心温まる光景だけど。
「こんなところにも……」
魔法医師大学の敷地前に建てられた屋敷や塀に、親指大の穿ったような痕がいくつもある。
警備の兵らしき人たちがあたりを巡回しており、駅前で見かけた過激な主張を繰り返す人たちも見られず、こんな事件は起きそうにないのだけど。
「数年前から帝都で起きている過激派による事件の一部ですわね。人を治し、癒し、日常に返すための場でなぜこんなことを起こすのかしら」
クリームヒルトは憤懣やるかたない、といった感じでつぶやく。自分の職に誇りを持っているのだろう。
だが、エリートたる魔法医師が過激派から狙われる理由なんていくらでもある。
嫉妬。
エリートや金持ちが悪だという過激な思想。
そして、治療をする人間がいなくなればテロの効果が増すという戦略的思想。
「でもご心配なさらずとも、大丈夫と思いますわ。魔法医師大学の警備は一流ですし」
確かに、第二の貴族と言われる人たちを要請するところだからそれは当然だろう。
でも、昨日も駅で貴族死ねー、など過激な演説があったから心配になってきた。
僕はハイデルベルクでも確認したが、再びポケットの中身を確認する。ガラス特有の澄んだ音が鳴るのを確かめることで少し安心した。
ちなみに服装はシュトゥットガルトを出発したときと同じ、ワイシャツとズボンの上からジャケットを羽織っている。
クリームヒルトは白のブラウスと浅くスリットが入ったタイトスカートの上から白衣を羽織っている。タイトスカートはそのままでは体の線が出てしまうけど、白衣を上から羽織ることで目立たなくなりフォーマルな感じになっていた。




