治癒魔法確立のために何が起こったか
冒頭訂正しました。
かつて、この大陸には長い戦いがあった。
王位継承権に他国が介入し起きた普王戦争。
宗派の違いが複数の国を巻き込んだ四十年戦争。
どの戦争でも、剣が火花を散らし、飛び交う矢は空を覆い、多くの人が傷付き、死んだ。
戦争を勝ち抜くために大陸の国家はこぞって技術を研究した。
より遠くまで、より素早く撃てる銃を。より遠く、より破壊力の大きい大砲を。
多くの技術は人を傷つけるために使われ、技術の発展とともに戦争での死傷者も増加した。
だが人はそこまで愚かではない。傷付ける方法だけを探求することは決してしなかった。
同時に治す方法もまた研究し進化させた。
神の奇跡を端緒とし、中世の錬金術に受け継がれた技術体系、「魔法」。
その果てに得られた奇跡の治癒魔法は四肢の欠損や壊死した組織の再生すら可能にし、戦争での死傷者が激減することとなった。
これを使う者は多くの尊敬を集め、かつては血塗られた職業と蔑まれた「魔法医師」の地位を飛躍的に向上させた。今や魔法医師は新時代の貴族とも言うべき地位を得、かつての騎士以上に若者の憧れの職業となった。
大陸のどの国々でも、魔法医師になるべく多くの若者が青春を犠牲にして勉学に励むこととなる。
愚かだ。
奇跡や魔法がどんな代償の下に成り立つのか、考えもせずに将来を決める。
なんて愚鈍な奴らなのだ。まあ、僕が言えた義理じゃないけどね。