氷狼の少年
ユーデリア
氷狼族の獣人の子供で、十二歳。狼族との違いは、藍色に覆われた体毛……なにより、その身から冷気を出し操ることができる。そのため、雪道や寒い場所は、彼らにとってはこの上なく動きやすい。別名フェンリル。
氷狼族は珍しく、杏も異世界に召喚された当初はその存在を知らず、名前を聞いたのも異世界を訪れて二度目のときである。
獣人なだけあって人型と獣型二つに変化することができる。獣型は一言で言えば藍色の狼である。人型も一見人間と見違えるほどだが、藍色の短髪と同じ色の獣耳と、獣型を彷彿とさせる色合いをしている。
元々戦闘能力の高い氷狼族であるため、子供ではあるが実力は高い。氷狼族の特徴である冷気に加え、身軽な動きで敵を翻弄し爪や牙で切り裂く。また、冷気を一点に集中させることで、威力の高い冷気へと昇華する(例、額から氷の角を生やすことも可能)。
故郷の村で、希少な種族であるがゆえに細々と、それでも幸せに過ごしていた。だがある日、マルゴニア王国の人間が兵士を引き連れ現れ、村を蹂躙する。
戦闘能力の高い氷狼族であっても、数と戦闘経験の差を埋められず、ユーデリア以外の家族や友達、村人は彼を残して皆殺しにさせられてしまう。その後、バーチの手により奴隷にさせられる。理由は、希少な種族の生き残りは高く売れるから。
つまり生き残ったのがたまたま彼であったが、仲間の死や村に火をつけられるのを目にして、本来の生意気な性格は息を潜めてしまった。この時、自分も一度死んだとして、姓を捨てた。
しかし心が完全に死んでしまったわけではなく、心の底ではバーチや王国に復讐を誓い、当初は杏にも襲いかかるほどで、心は死んではいなかった。
杏に買われ、彼女と行動を共にすることに。ちなみに、杏はアン・クーマと名乗っていたため、杏のことはアンと呼ぶ。
マルゴニア王国では、仇であるバーチと対面。怒りに任せて彼と殺し合いの舞台を設ける。実力では敵うはずもなく押されていたが、村を教われたときとは違い数の暴力はなく、加えて自身の冷気により地の利を優位に進めていく。
最終的にはバーチを氷付けにし、粉々に砕くことでついに因縁に決着をつける。村への直接の仇、バーチを葬ったことや王国も自身の冷気による吹雪で潰したため、彼の復讐は終わりを迎える。
その後は、杏の行く末を見守るために同行することを決める。杏とはお互いの心の傷を見せあった仲ではあるが、獣型の際に背中に乗せることは許していない(背中に誰かを乗せるというのは、氷狼族にとって最大の信頼の証)。




