『呪剣』の使用者
コルマ・アルファード
特別鍛えられた体を持つわけでなく、素人目にもなんの武術も学んでいないと思わせるほどに痩せた男。長身に、肩まで伸びた髪を後ろでまとめているのが印象的。
一見近寄りがたい雰囲気をまとっているが、その実馴れ馴れしいくらいに距離を詰めてくる。だが剣士としての腕は一流で、我流を思わせる剣筋である。その剣は杏曰く『へんな剣』
初対面の杏にいろいろ世話を焼くほどにお人好しであるが、実は裏で奴隷を売買する奴隷商人と繋がっており、それなりの付き合いがある。杏に良くしていたのも、彼女を自分の仲間にしようとしていたから。杏が会ったリーブスと呼ばれた長身の男、ロッシーニと呼ばれた太めの男意外とも交流がある。
奴隷商人と付き合いが長いゆえにこれまでにも何人かの奴隷を買っている。そのほとんどが女性だが、それは人間、獣人、魔族の生き残りと幅を問わない。
ある者は、凶暴化したモンスターを倒すために突っ込ませ、しかし逃げようとしたので自らの手で始末。ある者は、ストレスを処理するための慰み者として傍に置いていたが、壊してしまうなど。奴隷のことは人ではなく、物として見ている。
杏のことを気に入り商人に紹介したが、彼女のことを見ているうちについに本性を現し、杏のことを自らの奴隷にしてしまおうと彼女を襲う。その際には『呪剣』を抜き、杏を(精神的な意味で)追い詰める。さらに、いくらダメージを負っても決して倒れないしぶとさを見せた。
『呪剣』
本来銀色に輝く刀身は紫色に染まっており、常人以上の感覚を持っていればこれが普通の件でないことは見抜ける。
その正体は、その名の通り呪われた剣である。切り付けられた者の自我を奪い、見境なく暴走させる。一太刀でもかすれば効果は発揮されるが、あくまで自我を奪う剣であるため、死者には効果がない。
使用者はコルマ・アルファードであり、それ以前どこに存在していたかは不明。なぜ呪いの件となったかは不明。一説には、元はただの剣だったが、人斬りにより無差別に殺された者達の怨念が宿ったのではと言われる。自我を奪う力は、狂ったように人を殺す人斬りの名残りではないかとも。
また、使用者の精神を蝕んでいく剣でもあり、これには肉体(体の内側)も影響する。そのため、杏と出会った時点でコルマ・アルファードの内臓はボロボロであった。
コルマ・アルファードの手を離れた後は、杏が所有することになる。ちなみに杏はその強い精神力で呪いの力をはねのけ、『呪剣』に斬られても自我を失わなかった。なので、『呪剣』を所有していても蝕まれることはなかった。
呪いの力がある以外は一般の剣と大差なく、時にその力に気づかれず呑まれてしまう者も少なくはない。そして『呪剣』を手にした者は、皆命を落としている。偶然か、それとも死の呪いをか……
呪いの力の影響か、ひとりでに動く。そのため、使用者が人目のないところで死んだとしてもいつの間にか、剣は次なる使用者となる人の前に姿を現す。
杏は最終的にその手から手放すまで、『呪剣』を振るい続けた。その後、ユーデリアの雪により吹雪く世界に取り残され、誰にの目にも届かぬ場所へと埋もれてしまう。
『呪剣』はその姿を消したが、呪いの力までは消えない。その呪いの力により、最後に使った杏に破滅の呪いを残したのか、それとも杏の精神力が死の呪いをも上回ったのかは誰にもわからない。