『英雄』
熊谷 杏
ごく普通の花の女子高生である17歳の少女。明るい性格で、クラスには友達も多かった。
ある日、学校帰りに異世界に召喚されてしまう。そこで『勇者』として世界を支配しようとしている魔王を倒し、世界を救ってくれと頼まれる。
本人は断るつもりだったが、魔王を倒さねば元の世界に戻れないことを知らされ、『勇者』として魔王を倒すための旅に出ることになる。
どうして自分が『勇者』に選ばれたのかがわからず、なんの取り柄もないと自負する通りに剣や魔法など特別な才能があるわけでもない普通の人間であった。
ちなみにこの世界ではアンズ・クマガイと表記される。
旅立つまでの三ヶ月の期間で、戦うための力やこの世界の知識を身に付ける。彼女が得意とする武術は、この期間中に彼女自身が師匠と呼ぶ人物に習ったもの。
余談だが、武術から来る破壊力は本人の潜在的な能力によるものである。
魔王を倒すための旅に出て一年……ついに魔王を倒すことに成功するが、世界を救った代償は仲間の命という、決して軽いものではなかった。
その後、『勇者』から『英雄』として讃えられた彼女は、無事元の世界に戻ることができた。しかしそこで待っていたのは、彼女にとって過酷すぎる運命……彼女を復讐に駆り立てるには充分な理由が、そこにはあった。
父と妹が事故に遭い、母は娘を認識できないほどに精神が病んでしまう。恋人も、責任を感じて自殺……杏の大切な人は、すべていなくなっていた。
戻った先に自分の世界はなく、悲しみに暮れた杏は一つの決意をする。それは復讐……杏が異世界に召喚されている間に起こってしまった不幸に対する、復讐。
復讐を決意した杏は異世界に舞い戻り、自分を召喚した召喚主、そして自分を選んだ異世界に、憎しみをぶつけ復讐することを決めたのだ。
自らの行いが八つ当たりに近いものであることは理解している……が、それでも胸の中の憎しみの炎を消すには復讐以外思い付かず、実行に移す。
復讐に生き、命を捧げるのも厭わない彼女が本当に復讐を終えることができたとき、その先彼女がなにを考えてなにをするのかは、彼女自身にもわからない。