赤い果実、紅い雫
ぐしゃり、と白魚のような指先が果実を潰す。酸味の混ざった甘味を口に含ませてうっとりと笑いながら、お一つ如何と赤に染まった指先を紅い唇に滑らせて、緩やかな動きでもう一つ口へと運ぶ。
恐る、と摘み上げた果実は艶やかに色付いていて、口へ放り込めば瑞々しい甘さと酸味が滴った。
ねえ、と強請るように、先程迄果実を潰し、飲み込んでいた指先が唇をなぞり、物言いたげに触れる。
謎めいた笑み、何かを言いかけるような瞳につい口を開こうとすれば、つるりと口内へと何かが放り込まれた。思わず咀嚼もせずに飲み込みかけてしまい、咳き込みながら吐き出した果実は、とろりとした唾液と粘液に塗れていた。恍惚と彼女は微笑みながら、その果実を摘み上げ、優雅に見せ付けるように口の中へと招き入れて飲み込んだ。
玻璃の器には、まだまだ赤く輝く果物が盛り付けられている。
笑うように薄らと開かれた紅い唇に誘われるように、私はもう一つ、とそれへと指先を伸ばした。