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ガルシア闘諍録  作者: 様出 久鮎
序録
2/41

2.日常

 私はミネルバ・ガルシア。


 迷いの森に1人で暮らしている。


 朝は日の出とともに目を覚ます。


 水を1杯飲み、30分瞑想を行う。


 決して眠っているわけではない。


 心を無にして精神を鍛えるのだ。


 瞑想の後は外に出てストレッチをする。


 体の柔軟性は特に重要であると私は考え、入念に行う。


 そして、腹筋100回、腕立て100回、背筋100回、スクワット100回。


 これらを休憩を挟みつつ、5セット行う。


 ここで、気分転換にランニングをする。


 幸い、この森はアップダウンが多く、全身の筋肉を使える。


 筋肉もただつければいいわけじゃない。


 質のよい筋肉をつけなければ、それはおもりにしかならないのだ。


 また、しばしば猛獣や魔獣が出てくるので、よい腕試しになる。


 まあ、だいたいは瞬殺してしまうが・・・


 ランニングから戻ると、次は素振りだ。


 まずはパンチ、次にキック、そしてそれらの組み合わせなど。


 同じ動きを繰り返しすることで、頭ではなく体に動きをしみこませる。


 それから、武器を使っての素振り。


 剣を使うことが多いので、剣の素振りは念入りに行う。


 最後に弓の腕を磨く。


 200メートル先であれば百発百中だが、それ以上になると精度が落ちる。


 意識を集中し、感覚を研ぎ澄ませ、300メートル先の的を狙う。


 今日は20本射て、16本。


 8割ほどだが、まだ精度がよいとは言えない。


 これらのトレーニングを2時間程度で終わらせる。


 これだけやって疲れないかって?


 昔からやってるからもう慣れてしまった。


 むしろここ最近は物足りないくらいだ。


 少しトレーニングの量を増やすとしよう。


 トレーニングを終えると、汗を流しに近くの小川へ足を向ける。


 人は・・・いるはずもないので、獣に注意を払うだけで済む。


 とても澄んだ水で冷たくて気持ちいい。


 小屋へ戻り、朝食の支度をする。


 トレーニング後はちゃんと栄養を取らなければならない。


 そうしなければ、身体が壊れてしまう。


 食べたものが身体の一部となるように考えて作る。


 ランニング中に食料を狩れるので一石二鳥と言えるだろう。


 そうして朝食を終えると、次は掃除だ。


 部屋の床から天井に至るまで、しっかりとホコリを払い、雑巾掛けをする。


 私は清潔感のある空間を好むので、この時間はとても有意義だ。


 汚れが気になりついつい熱中してしまう。


 部屋の後は、道具の手入れ。


 調理道具や武器などのメンテナンスを行う。


 そうすることで道具の能力は保たれ、長持ちするようになるのだ。


 そして、洗濯が終わる頃には、日が高く登る時刻となる。


 薬草や食料を収集するため、籠を背負い森の中へ足を向ける。







 この森は日中であっても薄暗い。


 なので、日が沈む頃になれば辺りは闇に包まれ始める。


 獣や蟲も活発に行動するようになり、かなり危険である。


 蟲なんかは特に厄介だ。


 いつの間にか足下を這っていることもある。


 あと、獣といっても魔獣と猛獣の2種類いる。


 魔獣は、生まれながらに魔力をその身に秘めたもの。


 猛獣は、普通の獣がこの森に充満する魔力を取り込んで変異したもの。


 ビッグワイルドボアはその典型例である。


 暗闇の中、見えなくとも獣の気配は感じられるが、やはり見えていることに超したことはない。


 基本、この森に住む獣は凶暴で残忍だ。


 少しでも対応を誤れば、死に直結することになる。


 一方で、この森には珍しい薬草がたくさんある。


 そういえばこの前の子も薬草を採集していたと言っていた気がする。


 確かに見たことないものにつられて森に入ってしまっても無理はないだろう。


 美しい赤色に染まったものもあれば、まがまがしい紫の模様を持つもの。


 蝶のような姿をしたものや綺麗な花をつけるものなど多種多様な薬草が生えている。


 薬草の宝庫だと言っても過言ではないだろう。






 日が高い内に薬草や山菜を必要な分だけ採って小屋に戻る。


 途中獣が襲ってくるが、もう今日の食料は十分なので気絶させるだけにする。


 小屋に戻ると、例の左側の扉に入る。


 棚にはさまざまな書物や薬瓶を置いている。


 また、机の上にはフラスコやビーカー、さまざまな実験器具がある。


 言ってしまえば、ここは研究室のようなものだ。


 最近では回復薬の研究を主にしている。


 今日採ってきた薬草もこの研究のために使うものだ。


 現段階では、骨折が治る程度の半透明な青色のものはできている。


 目標は完全回復薬だ。


 あらゆる怪我や病気を治し、体力を回復させ、失った四肢までも再生させる薬だ。


 文献によると生成に成功すれば、一切濁りのない無色透明の液体になるそうだ。


 研究に夢中になっていると時が過ぎるのを忘れてしまう。


 今の様子を見れば魔女と言われても仕方ないかもしれない。


 薬の生成に少し魔法も使っているし、室内もそれっぽいから。






 少しこの世界の魔法事情について説明しておく。


 基本的に魔法は魔力を使って発動するのだが、そもそも魔力を持った人間がかなり少ない。


 そして魔力を持っていたとしても、魔法を使いこなせるのは100人に1人か、1000人に1人かという割合で、ごくわずかしかいない。


 よって、魔法を使える人間は畏怖の念を抱かれる対象となっている。


 この間の子の態度を見ても明らかだ。


 日常において魔法を見ることがなければ、得体の知れないものに恐怖を抱くのは当然のことだろう。


 多くの魔法使いは人々から崇め奉られるのを良しとしている。


 ただ、私は魔女と呼ばれるのはあまり好きではない。


 なぜなら、魔法を使えるとしても、同じ人間であるのだから・・・






 日が傾く頃には今日の研究を終わらせる。


 部屋を整理し、夕食の準備に取り掛かる。


 料理の腕は人並みにあると思うが自分ではよく分からない。


 そういえば、他の誰かに料理を食べてもらったのはこの前が初めてだったかな。


 おいしそうに食べてくれたので味は悪くなかったのだろう。


 夕食を食べ終え、後片付けをする。


 それから、干していた洗濯物を回収し片付ける。


 そして、私にとっての日々の生活の楽しみが『風呂』だ。


 湯船に湯を張り、そこに体を浸からせる。


 全身から一日の疲れが取れていくようにさえ感じる。


 これを考えついた者は天才に違いない。


 一応、湯は魔法を使って暖めている。


 『風呂』から上がった後のさっぱり感はなんとも言えない。


 体を洗うのに水をかぶっていた頃と比べると格段に違う。


 さっぱりした後にはまたストレッチを行う。


 今日一日使った身体をほぐしリラックスさせる。


 そして、眠りにつく前に30分瞑想。


 思考をリセットし、安眠を可能にする。


 ふと、あの子のことを思い出す。


 ここしばらく人に会っていなかったからか。


 明日は久々に街へ行ってみよう。


 そう決めて眠りについた。


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