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只今、監禁中です。  作者: やと
第五章 殺し屋

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「分かったわ。ご苦労さん」

「ちょいちょい! 『うでごろし』って何だよ。お前が何か作ってたのはそれか?」


どう文字変換を脳内で試みようとしても、腕殺し以外の文字が思い浮かばない。その結果、俺の不安は急激に増大する。


「いちいちうるさいわね。だから何だってのよ。本当にアンタは質問が好きね。質問君と名付けるわよ」

「質問させてんのはお前だろうが! というか質問君ってお前の父親も同じこと言ってたな! やっぱり親子って似るもんだな!」


「はあ!? 私とハゲが似てる!? ふざけんじゃないわよ! 二度と目が開かないようにまぶたを接着剤でくっ付けるわよ!」

「やめろ!」


「あれ? 巫女はここにいるのに完成って、まさか君が作ってるのかい?」


 俺と巫女が言い争う横で、傍観者らしい疑問を抱いた花村がミコリーヌに訊ねていた。


「まあ、そうですかね。材料と設計データさえあれば、自動的に物を生成できる機械があるんです。私はそれを管理してるってだけですよ」

「へー。でも凄いな。誰にでも出来ることではないんだろう?」

「ま、まあ、巫女のイメージ通りに物を作るためにはちょっとした工夫がいるので、私じゃないと出来ないかもしれません」


 視線を逸らし、小さな声でボソボソと答えた。


「やっぱりそうなんだ。巫女のことをよく分かってるってことなんだな」


「そ、そうでもないですよ」

 ミコリーヌは柄にもなくデレた。


 女性を魅了するスター花村の本領をどうでもいいところで発揮したな。


 ……って、


「おい花村、俺にとっては恐らくろくでもない物が完成したんだぜ。凄いのどうこうの問題じゃねえっての」

「敏感に反応するなぁ。心配するなって、どうせ金也には関係ない物だよ。なあ巫女?」


 そう言う花村の言葉に、「ノーコメントよ」巫女は答えとも取れる返事をする。


「おい」

 俺は目を据わらせて花村に視線を突き刺す。


「大丈夫大丈夫。何かあったら俺が助けてやるからさ」

「何かある前に助けてくれよ」


「本当にしつこい男ですね。どうせ巫女は話す気がないと分かりきっているんですから、男らしく堂々と明日を待てばいいではないですか」


 キリがない俺の言動に呆れ果てたように、ミコリーヌは画面上のアイコンを指で弾きながら文句を言ってきた。


 かと思えば、

「あっ。巫女、携帯に花村結城のマネージャーからメールが来たよ」


「マネージャーから?」

 真っ先に反応を示したのは花村だった。


「いいわよ。転送して見せて」

「わかった」


 巫女の指示に従い、ミコリーヌは花村のマネージャーから送られてきたというメールの内容を画面に表示した。


 そこに書かれていたのは、『巫女ちゃん、うちの花村はそちらへお邪魔していませんか? いるならすぐに連絡をするよう伝えてください。鬼蝮おにまむしメメメ』


 文章を読んだ感じでは、花村のマネージャーと巫女は仲が良いようだ。しかし変わった名前だな。鬼蝮メメメて。


「急にどうしたんだろ……って、あっ。ケータイ持ってくるの忘れてたんだった」

「アホね。じゃあこっちで返信するわ」


「そうか。じゃあ用件は何かと返信してもらえるかい?」


 巫女の提案を聞き入れ、ミコリーヌに頼む。


「分かりました。… … … … … … 送信完了です」


 ──その三分後。


「メールが返ってきました。開きます」


『明日の生放送番組のことだけど、先日亡くなられた山田丈治朗さんの緊急特番を急遽放送することになったみたいで、残念ながら無くなりました。望むなら仕事を入れるけど、休みたかったら休んでいいよ。貴方が決めて下さい』


 マネージャーから返信されたのは、明日の仕事が無くなったという知らせだった。きっとこの知らせを一人で聞いたのならば仕事を入れていたのだろうけど、この状況ではそうは言えまい。


「良かったじゃないか花村。これで明日は巫女たちの足代わりになれるな」


 嫌味を込めて肩を叩いてやった。


「そうだな。まあ良い気晴らしになるだろ。ハハハ!」


 少しは嫌がれよ。


「というわけだ。明日は俺がドライブに連れて行くよ」

「ええ。じゃあそのお礼を前もってしてあげるわ」


「え?」


 巫女は立ち上がると、後ろ髪をゴムで束ねながらキッチンへと入る。


「今日はアンタにも私のスペシャル料理を振る舞ってあげる。というか、その為に今日は呼んだんだけどね」

「何だよ急に。良いことでもあったのか?」


 突然の巫女らしからぬ言葉に、花村がそんな質問をする気持ちは俺にも分かる。

 今朝も変だったけど、まだ何か企んでるのか?


「別に良いことなんて無いわよ。むしろ悪いことだらけ」

「だったらどうして?」


「深読みすんじゃないわよバカ。理由もなく私が料理を作ることがおかしいっての?」


 花村と一緒に俺も頷いた。


「……ぶっ飛ばすわよアンタたち。おかげで私の乙女心は傷ついたわ」


 唾でも塗ってろよ。

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