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只今、監禁中です  作者: やと
第五章 殺し屋
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「じゃあ私はちょっと寝るわ」

「また寝るのかよ。お前本当によく寝るよな」


 速攻でつっこんだ俺に、「まだ成長期なの」なんてジョークを返して、巫女はベッドに倒れこんだ。

 寝る子は育つとでも言いたかったのだろう。だけどそんな頻繁に睡眠を取るのは、体にとって逆効果だと思うけどな。

 胸に関しては、もう少し成長しても……いやいや。


「ちょっと、なに巫女を見ながら鼻溝を伸ばしているんですか? マジでキモいコフ」


 表情が無いだけに、真顔で言ってる感じが鼻につくな。


「伸ばしてねえし。元々こういう顔なんだよ」


 口をへの字に結び、鎖を引きながらパソコンの前まで歩み寄る。さて、感情的にはもちろん否定的ではあるが、本当に否定しまうわけにもいかない。

 結果的には巫女の言葉に従い、暇つぶしも兼ねてこの精密機械と遊んでやろう。


「おい黄色いの。何からすればいいんだ?」


 パソコンの前に座り、適当にミコリーヌを呼ぶ。


「私は『黄色いの』ではありません。ミコリーヌでコフ」


 ミコリーヌは鼻先をよそに向けて反抗的な態度を取った。やはり面倒くさくなりそうだけど、バルコフよりかは会話が成り立つという意味ではマシかもな。


「悪かった。一体何からすればいいんだミルコフ」

「ミルコフ!? 勝手に私とバルコフの名前を合体させないで下さい! いい加減な人でコフね!」


 高速で口がパカパカと開閉した。怒っているかどうかは、口の開閉速度で判断出来そうだ。


「大体、どうして私よりもバルコフ寄りの名前なんでコフか!」

「だってお前の名前って長いじゃん。呼びやすい言い方をしただけだよ。あだ名みたいなもんだからさ、深く考えるなって」


「まったく、貴方とは絶対に分かり合うことは出来なそうでコフね」


 また鼻先をよそに向けた。それってつまり……逆を言えば、分かり合おうとは思っていたってことだろ。案外可愛いところもあるじゃないか。


「そう毛嫌うなよ。バルコフの体を借りてるとは言え、せっかく現実世界に来たんだから、怒っているばかりじゃ勿体ないんじゃね?」

「私は貴方を毛嫌っているわけではありません。明確な理由を持った上で嫌っているんでコフ!」


「明確な理由ってただの嫉妬だろ? そんな子供みたいなことをいつまで言っているつもりなんだよお前は……いや、子供なのか」


 だったら俺が大人にならなければならない、という思考が一瞬頭をよぎるが、こんな言葉を言った時点で自分も子供のような気がしてならなかった。


「グギギ。なぐさめる様に見せて、実はわざと私を怒らせようとしていませんコフ?」

「なぐさめるつもりなんてねえよ。考えを改めろと言ってんだ」


 ヂリヂリと散る火花。

 機械を相手に何をしているんだという思いが無きにしも非ず。


 だけど俺は大人になりきれず――というよりは、もしかすると俺はわがままな妹を叱る兄のような、そんなスタンスでこいつに接しているだけなのかもしれない。

 ……確かにこいつの性格はどことなく『あいつ』に似てるような気がする。そういう意味では鰻子よりも可愛げがあるってもんだ。


「はあ……貴方と話していると疲れてきまコフ」と息を吐く様に頭を下げて、「仕方がありませんね。分かりました。さ、パソコンの操作方法を教えてあげますよ」


「……」


 なんだろう。この敗北感。


「で、貴方は一体何を知りたいんでコフ?」

「え。そう言われてもな。何をすべきなのやら……」


 何が分からないのか、それすらも分からない。


「巫女は貴方にやりたいことを見つけろと言っていたじゃないでコフ。だったらインターネットで適当なワードを打ち込むとか、そんな単純なことから始めればいいのでは?」


 もっともだ。もっとも過ぎて何も言えない。


「まずはそこのアイコンをクリックしてですね」


 なんだかんだ、丁寧に操作方法を教えてくれようとするミコリーヌだったが、さすがにそこまで無知ではない。


「大丈夫。それくらいなら俺でも出来るよ」


 淡々とネットに開き、検索画面で指を止める。キーボードで文字を打つことに慣れていないので、まずはどこに何のキーがあるのかを見て確かめていた。


「ひらがなではなく、ローマ字で打つんでコフ。ところでローマ字って、分かりまコフ?」


 横からミコリーヌが呟くように言った。


「それはあまりにも俺を馬鹿にし過ぎだろ。お前まで俺がガラパゴスから来たとでも思ってんのか?」


なんて文句を言いながら、カタカタ……『監禁生活 体験談』と文字を打って検索開始。すると、ズラリと検索結果として表示されたサイトは、全てがアダルトサイトを臭わす怪しいものだった。


「ちょっと、初っ端から何を検索しているんでコフ!?」

「いや、何となく。これといって調べたいことが無かったもんで、とりあえずこの不可解な生活を参考出来る話がないのかなと」


「あ、そういうコフならヤへー知恵袋で質問してみればいいんじゃないですか?」

「なるほど、何だそれは?」


「知らないんでコフか? 疑問に思ったことを質問するサイトですよ。登録会員数が国内一なので、それなりに多くの答えが返ってくると思うコフ」

「へー。よし、ならさっそく質問してみるか」


 ミコリーヌの提案を採用し、教えられるがままに操作をした後、ヤヘー知恵袋に質問をしてみることにした。


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