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只今、監禁中です。  作者: やと
第三章 スーパースター

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15


「何よ二人して。まだ何をするかなんて言ってないじゃない」


 同時に拒絶するような表情を見せる俺と花村に、巫女は体を離してしかめっ面になる

 もはや俺にとって巫女の遊ぶとは『ろくでもないこと』という認識だ。きっと花村も同じ考えだろう。


「じゃあ一応訊いておくけど、ゲームって一体何をするんだ?」

 不安げな表情で花村が訊いた。


「ロシアンルーレット」

「ふざけんなよお前」


 同感である。


「冗談に決まってるじゃない。馬鹿ね。本当はロールプレイングゲームよ」

「RPG? いい大人が三人でテレビゲームでもするってのか」


 あまり乗り気でなさそうな花村だが、巫女にしてはマシな遊びを思い付いたと俺は内心評価していた。

 しかし三人でRPGをするというのには些か疑問を覚える。どうせやるなら三人で対決出来るものがいいよな。


「そうよ。実は前からとあるゲーム機の開発を手伝っててね、最近その試作品が出来たの」

「……あ、そういえば前に言ってたな。仮想空間内を現実のように行動可能にするゲームとか言ってたアレか?」


 何それ超面白そうじゃん。


「その通りよカス」

 巫女は立ち上がり、玄関へ向かい歩き出す。


「ちょっと待ってなさい。今から持ってくるわ」

 そう言って、部屋を出て行った。


「おい、何だよその、仮想空間内を現実みたいに行動するゲームって?」


 興味があったので早速花村に訊いた。


「俺も詳しくは知らないよ。ただ、よく映画とか、アニメとか漫画であるだろ? コンピューターが作り出した世界の中を現実のように体感するってやつ、あんな感じだと思うぞ」


「マジかよ。あいつそんな物まで作れるのか」

「どんな物かはまだ分からないけど、鰻子を造ったような奴だから、十分にあり得るだろ」


 それもそうだな。巫女ならタイムマシンも造れそうだ。

 で、一分程度で部屋に戻った巫女は「テケテテッテテー!」と、どこかで聞いたことのある効果音と共に、ゲーム機を俺達の前に置いて見せた。

 少し分厚い灰色のノートパソコンに似た機械と、顔全体を覆える機械マスクが二つある。


「いかにもって感じだな」


 想像通りの物だが、思っていたよりも小さい。


「これだけでゲームが出来るのか? 俺はてっきり体のあちらこちらに導線みたいなものを取り付けられるのかと思ったよ」


 機械マスクの一つを手に取り、それを眺めながら花村が言う。


「人間なんてね、脳さえ支配すりゃ何でも出来るのよ」


 さらっと恐ろしい事を言うな。


「というか、もしかして二人しかプレイ出来ないのか?」


 機械マスクが二つしかないのを見て、俺はそんな疑問を抱いた。


「ええ。このゲームは仮想空間へ意識を移すことになるから、どうしても現実で管理する人間が必要になるの。もちろんコンピューターで管理はするんだけど、一応ね」

「じゃあゲームをするのって俺と花村だけか?」


「自ずとそうなるわね」


 おっと、急に危険な香りがしてきたぞ。

 俺が想像している通りの段取りで事が進むのであれば、ゲームが始まると俺は完全無防備の状態になるはずだ。

 大体この手のゲームってのは意識を仮想空間に飛ばしている間、現実にある肉体は睡眠状態のようになっている──という設定の漫画が多い。


つまり、ゲームをしている最中に何をされようが、俺はそれを受け入れるしかないということ……だな。

 まあ、起きている状態でもされるがままではあるのだけど。


「早い話、俺達で実験しようってわけか。機械が壊れて脳死しましたってのは勘弁してくれよ」


 花村の抱く不安は俺と異なっていたようだ。おかげで俺の不安は爆発的に増えてしまう。


「心配ないわ。私は兵器を作ったわけじゃなく、子供も遊べるゲームを作っただけなのよ。そもそも死に直結するような設計をするわけないじゃないのボケ」


 心外だと言わんばかりに眉間をねじる。


「そう言われると妙な説得力があるな」

「とにかく、詳しい説明は中(仮想空間)に入ってからしてあげる。だから私に気絶させられたくなければ、大人しく言うことを聞きなさいよね。分かるかしら?」


 つまりさっさとマスクを被れと言うことだろう。


「はぁ……結局こうなるわけだな。金也、諦めろ。女王様の機嫌を損ねると事態は悪化していくだけだぞ」


 巫女との付き合いが長いだろう花村は、これ以上の躊躇ためらいは悪化の一途を辿るということを熟知しているようだ。

 その教訓を俺に伝え、花村は機械マスクを被ってその場に仰向けになる。

 たとえ安全だと言われても、底の見えない穴の中にダイブするのはなかなか出来ることではない。

 さすが花村結城、勇気があるな。


 ……。


 さて、こうなってしまっては俺も巫女に従うしかない。安全性を知る為に機械の仕組みを聞いたとしても俺には絶対に理解出来ないだろうし、プレイを拒否すれば俺の人生がゲームオーバー。

 せめてそばに鰻子がいたならば、巫女が危険な行為をしようとも俺だけは守ってくれそうなのに──こんな時に限って、どこに行ってるんだあの馬鹿天使は?


「ビビってないでさっさとしなさいよ。またこめかみに銃のグリップをフルスイングされたいわけ?」

「分かってるって。たった今心の準備が出来たところなんだ」


 もう駄目だ。覚悟を決めよう。

 俺は花村の教訓に学び、機械マスクを被って横になるという一連動作を二秒で終えた。

 機械マスクの中はスポンジのような柔らかい素材が貼ってあり装着した心地は悪くなく、バイクのヘルメットを被った感触に近い。違いがあるとすれば、真っ暗ということくらい。


「んじゃ、始める前に一つだけヒントをあげる」


 ぼんやりと、巫女の声が聞こえた。


「ゲームの中で『クリスタルばあさん』に出会ったら気を付けなさいよ」

「え?」


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