表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
只今、監禁中です。  作者: やと
第三章 スーパースター

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/188


「──金也、金也」


 声が聞こえる。女の子の声だ。


「起きるんだよ。朝なんだよ」


 だよだようるせえ。もう少し眠らせろ。


「巫女、金也が全然起きないんだよ」


 巫女?

 巫女って誰だっけ……?


「そう、分かったわ。だったら私が直々に起こしてやろうじゃない」


 巫女……ああ、そっか。

 俺って監禁されてるんだった。

 はは……だったら尚更目を覚ましたくないな。


 そういえば、俺いつ寝たんだろ?

 なんか体が重いなー。


「……ん?」


 布団から顔を出し、ゆっくりと目を開ける。最初は光が眩しくて何も見えなかったが、徐々にはっきりとして見えたのは……、


「あら、目を覚ましたの。ちッ、残念」


 まさに危機一髪。今から俺の顔面にカボチャを落とそうとする巫女が立っていた。俺が目を覚ましたのを見るとカボチャを下げ、悔しそうに舌打ちをする。


「おはようございます」


 望んではいない監禁生活二日目。俺は崖っぷちで起床する。


「アンタ寝過ぎよ。一瞬死んでいるのかと思ったわ」


 たった今死にかけてたけどな。


「……あー、だりぃ」


 あくびをしながら体を起こし、背中に手を回してポリポリと掻く。

 窓から暖かい朝日が射して、外は今日も良い天気だ。一方で俺の気分は曇り空で、これほど希望のない朝は初めてである。

 時間を確認しようとズボンのポケットから携帯電話を取り出す。だが……寝ている間にバッテリーが切れていたようだ。


「今何時なんだ?」


 仕方ないので、脇腹にカボチャを抱えた巫女に訊く。


「七時過ぎよ」

「そうか……」


 徐々に思い出してきたぞ。

 昨日、洗面所で巫女に電気を流されたからの記憶がない。


 てことは、あれからずっと眠っていたわけか──なら俺が今布団の上にいるのは、巫女がわざわざ運んだのか?

 そんな優しさがあるなら、そもそも洗面所で失神なんてさせないでほしいよな。


「金也、おはよ。鰻子だよ」


 ボーっとしていた俺に鰻子が笑顔で挨拶をする。今日は後ろ髪が二つ結びになっており、可愛らしさが倍増だ。

 改めて見てもやっぱりこいつが機械だとは思えないな。


「ああ、おはよ」

「金也、今日は花村が朝ご飯を作ってくれているんだよ」

「はなむら?」


 布団の上に膝をついた鰻子が体を浮かすように揺らして言う。俺はすぐにその言葉の意味が理解できなかったが、冴えてきた耳がその答えに繋がる軽快な音を拾った。


 トントントントン……。


 近くのキッチンから聞こえてきたのは包丁でまな板を叩く懐かしい音だ。俺はおもむろに目を向ける。


「よ。おはよう金也! あ、それより初めましてか」

「えっ!?」


 キッチンの中に立っていたのはマネキンのような造形美の男である。

 ここから確認できる情報は、明るい茶髪のショートヘアで、上は黒色のVネックセーターを着ている。首には羽のようなエンブレムが付いたネックレス、両耳にはブラックオニキスのピアスをしている。

 顔が小さくてスタイルも良く、身長は間違いなく俺より高い。一八〇センチは軽く超えている。

 まず俺が男に抱いた印象はチャラいだったが、見れば見るほどにイケメンで、腹立たしいくらいにイケメンだ。

 はて、そのイケメンが爽やかな笑顔で俺に挨拶をしているが、俺は返事をせずに無言で見つめた。


 ……。


 しかしこの男……どこかで、見たことがあるような気がする。


「おーい……。巫女、なんか止まっちゃってるぞ。大丈夫なのか?」


 突然敵に出くわした猫のように硬直した俺を心配したイケメンが巫女に尋ねる。


「大丈夫よ、無視でオーケー。アンタはさっさとご飯を作りなさい」

「はいはい、我が敬愛なる女王様」

「何よそれ、ムカつくわね」


 口を尖らせる巫女に笑みを浮かべつつ、イケメンは再び包丁でまな板を叩き始めた。


「……」


 そういえばさっき、鰻子は『花村』がご飯を作る的なことを言っていたよな?


 花村。

 花村?

 花村……結城?

 あの、花村結城?

 マジか。マジっすか?


「も、ももも、もしかかしててっ!」


 俺は声と指を震わせ、キッチンにいるイケメンを指差した。


「もしかして貴方は、ドラマ『行けメン侍』に出ていた、俳優の花村結城さんですか!?」


「ああ、正解だ。俺は誰もが認めるスーパースター! 花村結城はなむらゆうきだ!」


 イケメンはキラリと天然の白い歯を輝かせて答えた。


 え。


 え。


「ええええええええええええええっ!?」


 俺はマンション全体を揺さぶる勢いで驚愕する。

 花村結城は今人気絶頂の俳優で、国宝級イケメンランキングで一位を取ったような男……そりゃカッコイイわけだ。

 さて、人気俳優がどうしてこんなところで朝ご飯を作っているんだ?


「……まさか、花村結城が巫女の彼ぶはっ!?」


 不意の延髄蹴りが俺を襲い、床に額を打ちつけた。当然蹴ったのは巫女である。


「うげっ!」


 さらに巫女は俯せになって倒れている俺の背中を強く踏みつける。


「うるさいのは嫌いだって言ったじゃないのカス。アンタ、そんなに早死にしたいわけ?」

「すいません、つい……」


 俺は俯せのままで答えた。今巫女の顔を見るのが怖いからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ