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只今、監禁中です。  作者: やと
第二章 監禁生活のはじまり

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 Why? 

 どこから……どう食えと?


 まずそれが真っ先に浮かんだ疑問だったが、冷静に考えるとそれ以前の問題だった。


「食えるか。何よりこんなの料理じゃないだろ。カボチャに蜂蜜かけただけじゃねえか」

「知ったかぶるんじゃないわよクズ。これは『パンプキンのハニー添え』というちゃんとした料理名だってあるんだから」


「添えるって量じゃねえじゃん! 俺が見る限りカボチャは蜂蜜でコーティングされてんぞ!」

「いいからさっさと食べなさいよ。男らしくかぶりつきなさい」


 巫女は苛立つように眉根を寄せる。


「アゴ外れるわ」


 俺は冷静だった。


 カボチャと蜂蜜という二つの食材は調理次第で美味しく食べられそうだけど、俺の頭にぶつかっても傷一つ無い頑丈なカボチャをかぶりつく勇気はない。

 よって当然、俺はカボチャをただ見つめるだけで、手を伸ばそうともしなかった。


「何よ、アンタもしかして蜂蜜が嫌いなの?」

「それで俺がためらっていると思ってんなら考えを改め直せ」

「考えを改め直すのはアンタの方よ。せっかく私が料理を作ってあげたというのに、一口も食べないなんてどういう神経してんのよ?」


 無神経な奴に言われたかない。

 大体カボチャを丸ごと与えられて喜ぶ奴なんてこの世にはカバくらいしかいないだろ。


「ホント、最低ね。カボチャと蜂蜜を無駄にしたアンタに私は幻滅よ」


 無駄にしたのはお前だよ。


「こうなったら仕方がないわ、これは後から私が食べるとして──」


 食べるんかい。


「鰻子、ちょっとこれ(カボチャ)片付けといて」

「分かったんだよ」


 巫女に命令され、鰻子はベトベトのカボチャを素手で掴んでキッチンに運んだ。

 何かちょっと可哀相。


「さて、アンタにはカボチャと蜂蜜を無駄にした罰として、私と『叩いて被ってジャンケンポン』をしなさい」


 巫女は胸を張り、何ら罪の無い俺に濡れ衣を着せる──って、まさかの叩いて被ってジャンケンポン。

 こいつと同じ思考レベルというのは悲しむべきか、喜ぶべきか。


「何で叩いて被ってジャンケンポンなんだよ?」

「昼前にアンタ達がやってたじゃない。久しぶりに私もやってみたくなったのよ」


 あーそっか。二度寝の邪魔をして側頭部に大ダメージを与えられた時の話だな。

 なんかもうだいぶ前の出来事だったような気がするよ。


「ちなみに、私のやる叩いて被ってジャンケンポンは普通のルールじゃないわよ」


 だろうな。


「アンタはいかなる場合でも、私の頭部に攻撃は出来ないという新ルールを追加するわ」

「何それ俺勝てねえじゃん」


「馬鹿ね。そんなのやってみなきゃ分からないじゃない」

「お前が言ってるのはバットを持たない選手を打席に立たせるようなもんだぞ」

「理不尽が世の常よ、諦めなさい」


 我ながら分かり易い喩えが出たと思ったが、伝えた相手が非常識であることを忘れていた。


「……でもそうね、アンタがそこまで言うのなら、バットを用意してあげようじゃないの」

「え?」


「鰻子、アンタの部屋にバットがあったわね。それを今すぐに持ってきてくれない? あと私の研究室にあるヘルメットもね」


 巫女は床に広がる蜂蜜を布巾で掃除している鰻子に追加命令をする。


「鰻子ばかりに頼らないで欲しいんだよ。鰻子の体は一つしかないんだよ」


 しかめっ面で立ち上がり、口を尖らせて怒る鰻子。

 だけどやはり、残念ながら全然まったくこれっぽちも怖さがない。可愛さが裏目に出ることもあるようだ。


「そんなに怒らないでよ。今度水族館に連れて行ってあげるから」

「そういうことなら早く言うんだよ」


 餌に釣られた鰻子は軽い足取りで部屋を出て行った。

 その後、しばらくも経たない内に鰻子が木製のバットと、工事現場の作業員が被っている黄色い安全ヘルメットを持ってくる。


 何でそんな物があるんだという疑問は愚問か。


 巫女は早速バットを手に取り、えげつない素振りを始めた。

 俺はこの時点で、これから行われるゲームが俺の知っている叩いて被ってジャンケンポンではなく、ただの死のゲームであることを確信した。


 俺は巫女に攻撃を出来ない以前に、そもそも武器バットが無い。鰻子に渡されたのは安全ヘルメット一つだけだ。


 逆に巫女はヘルメットが無く、バットだけを持っている。

 それはつまり、今から俺が一方的に攻め立てられることを意味していた。


「よし、じゃあ始めましょ。これから五分間、私の攻撃に耐え切れたらアンタの勝ち。アンタが戦闘不能になったら私の勝ちよ」

「あのさ、それもう『叩いて被ってジャンケンポン』じゃ無くなってるだろ。ただの『暴行』だ」


「甘いわね。あらゆる物事はいつ何時も流動的に変化していくのよ。それは子供の遊びだって例外じゃないわ」


 お前に何を言っても無駄ってことだな。


「とにかくアンタは私の頭にさえ攻撃をしなければ何をしてもいいわよ。その代わり、全力でぶちのめしにいくから」


 こいつの考えることはサッパリ分からない。やはり俺みたいな凡人とは思考レベルやらが違うのだろう。


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