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只今、監禁中です。  作者: やと
第二章 監禁生活のはじまり

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17


「キンヤ! キンヤ!」


 目の前で尻尾を振るバルコフが俺の名前を叫んでいる。


「直してもらって良かったな」

「巫女はより頑丈に強化してくれたんだよ。また金也が投げても大丈夫なんだよ」


 そう教えてくれた鰻子だが、二度とバルコフを床や壁などに投げることはないだろう。今度からは振り回すだけにしておいてやる。


 ピンポーン!


「ん?」


 部屋中にインターホンのベルが鳴り響いた。


「あ、きたきた」

 ベッドにいた巫女は立ち上がり、玄関へと足早に向かう。


 俺は一瞬、郵便配達員とか、セールスマンとか、宗教勧誘とかの第三者が来たのかと思い期待をした。

 だが、壁に取り付けられたテレビモニターを通り過ぎる巫女の姿を見て、巫女の知り合いが来たのだと確信する。

 他人ならばこのマンションのハイテクセキュリティーを突破できるはずがないからだ。


「お待ちかねの高級羽毛布団よ」

「布団?」


 部屋に戻ってきた巫女の後ろから、白い布団を運ぶ黒いスーツを着た男二人が付いて来た。

 一目見て、俺はこの男たちに助けを求めるという選択肢を破棄する。どう見ても彼らは見知らぬ他人ではなく、巫女の手足のような存在としか思えなかったのだ。

 そもそも鎖に繋がれた俺を見て何も言わないし、驚いたような反応もないし、そもそも顔が厳つ過ぎて話しかけづらい。


「他に何かありますか?」


 男達は布団を俺のそばに敷くと、敬語を使って巫女に尋ねた。


「ありがと。もう帰っていいわよ、『京香』によろしく」

「分かりました。では失礼します」


 布団を運ぶ為だけに来たようで、男たちは足早に部屋を後にした。

 さっき巫女が部屋を出たのは、今の人達に連絡をしてたってことか──それにしても、上下関係がハッキリとしていたな。

 あんな厳つい男達をあごで使う巫女はやはり只者じゃない。


「おい、何をボケっとしてんのよモヤシ。せっかく買ってあげたのに嬉しくないわけ?」


 片手を腰に当ててイラついた様子の巫女。このまま怒らせてしまえば、永遠にこの布団で眠らされてしまいそうだ。


 てなわけで、「嬉しいに決まってるじゃないか!」


 痛む体を気合いで制して、床に敷かれた布団の上へダイブした。


 もふ。

「!」


 今まで感じたことがない優しい感触。イメージだけで言えば、本当に雲の上にいるようだ。


「ふわふわ。気持ち良いー」


 ここが自宅で、足に鎖が繋がっていなければ人生最高の睡眠が出来そうな布団である。


「最高だなこの布団。高かったんじゃないのか?」

「別に。百万くらいじゃない」と、涼しい顔で巫女様。


「ひゃっ!? ひゃくまん!?」


 あまりの高さに驚いた俺はすぐさま布団から離れた。


「百万って、そんな大金あとから返せとか言われても無理だぞ!」

「たかが百万で誰もそんなこと言わないわよ。アンタの貧乏脳で私の価値観を計らないでよね」

「たかが百万だと……」


 おそろしい金銭感覚だ。今の感じだと、俺の百円と同じ感覚だな。


「さてと、まだ六時半か……」


 巫女はパーカーのポケットから携帯電話を取り出して時間を確認する。


「なに?」


 じっと巫女の持っている携帯電話を見ていた俺に気が付き、眉をひそめて睨み付けてきた。


「いや、なんか見た事のない携帯電話だなと思って」


 俺自身、知り合いから貰った古い機種の携帯電話を使っているので最新機種についてはよく知らないのだが、巫女の持っている携帯電話は背面に熊のマークのような描かれたデザインで、心無しか他の物より薄くも見える。

 かじったリンゴなのロゴはよく見るが、熊のマークは初見で珍しいと思った。


「そりゃあないでしょうね。私が自分で作ったから」

「え!? 自分で作ったのかよ」

「作るわよ。私を誰だと思ってんのよカス。お願いすればアンタのも作ってやるわよ」


 確かに鰻子を造るような奴だから、携帯電話の一台や二台作っていたとしても不思議ではないか。


「器用だな。ていうか自分で作れる物なんだな」

「まあ何から何まで自分で作ったと言えば嘘になるけどね。私には優秀な友達が沢山いるから。アンタと違って」

「うるさいな、俺の何を知ってるってんだ」

「ほら、図星だから怒ってる」

「ッ!」


 思わず反論しかけたが、冷静になって言葉を呑み込んだ。

 駄目だ。巫女のペースに乗らないようにしないと、また電流を食らう結末に至ってしまいそうだ。


「……でも、素直に羨ましいな。俺なんかパソコンすらまともに操作できないってのにさ」


 小中学校とパソコンの授業はあったが、俺は全くもって興味が湧かなかった。基本的に座って何かをするという作業が苦手というのもある。


「うわ……今時パソコンが使えないとか、マジで寒いわよ。使えないのはアンタそのものじゃないのカス」

「ぬっ!?」


 巫女は蔑むように俺を見る。コイツと会話をする時はいつ何時も油断するなということだな。事あるごとに容赦なく俺の心を傷付けてくる。

 真に受けてれば今日中にでも心臓が無くなるペースだ。


「べ、別にパソコンが使えない奴なんて沢山いるだろ!」

「アホね。パソコンを使えない沢山の人間と同じレベルということを恥じるべきなのよ。AIの時代が来てるというのに……」


「大袈裟だな。たかがパソコン使えないくらいで」

「そのたかがで今の世界は成り立ってんのよボケ。アンタは自分の視野だけで物事を見る癖を止めた方がいいわよ」


 人の価値観に説教が出来る立場になってから言ってくれ──とは内心思うが、こいつの発言に時々イラついてしまうのは、やはりどこか俺の触れられたくない場所を突かれているからだろう。

 正論を言うんだ。犯罪者のくせに。


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