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只今、監禁中です。  作者: やと
第二章 監禁生活のはじまり

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12


「……」


 俺はあと何度こいつらに驚かされればいいのだろう。繰り返されるサプライズの数々に動悸を余儀なくされ、段々と寿命が磨り減っていくような気がする。


「これで分かったでしょ? 鰻子が人間じゃないって」


 今の出来事を目の当たりにして、否定するをのはそれこそ馬鹿である。


「あ、ああ」

 俺は小さく頷いた。


 まさか現代科学がここまで進歩していたとは驚きだ。

 最近ニュースで見たのは海外で開発されたロボットが走ったり、バク中したりする映像だった。一般人が手にとって触れている技術力の大半がすでに最先端では無いことは薄々分かっていたけど、これは遥かに想像を超越した現実だ。

 映画や漫画でしか知らないアンドロイドが……目の前にいるのか。


「鰻子って、どうやって動いてんの?」


 馬鹿の抱く素朴な疑問だった。


「私の作った『ミコ電池』よ。ちょっとごめんね鰻子」と、巫女は鰻子の耳の穴に人差し指を差し込む。

 すると、鰻子の耳から単三電池が飛び出し、巫女はそれを手にとって俺に見せた。


「これが鰻子の原動力。この中に私が開発した新エネルギーである〈ミコルギー〉が入っているのよ」

「何だそれ、凄いのか?」


「そうね。使いようによっては、この電池一本で東京が吹き飛ぶほどのエネルギーはあるわ」

「なっ!? 超危ないじゃん!」


 想像を絶する威力を秘めた電池に怯えた俺は、両手を前にして体を守るような体勢を取った。


「アホ。別に爆発なんてしないわよ。仮にこれを火の中に投げ入れたとしてもね」


 呆れたような表情で巫女は息を吐いた。


「そう……なんだ。ならいいんだけど」


 だがそうは言われても、無知な俺は心底安心したとまではいかない。自分の理解が及ばないものっては無条件に恐ろしいものだ。

 ところで、原動力である電池を抜かれた鰻子だが、特に停止することもなく、悠長に指先で鼻をほじっていた。


「なあ、どうして電池を取ったのに鰻子は動いてるんだ。予備のバッテリーみたいな物を内蔵してんのか?」

「ええそうよ。予備というか、メインでもあるんだけどね。電池の消費を減らす為に、鰻子は太陽エネルギーを体内に蓄積出来るようになってんの。だから電池が無くても、三十分程度は動けるわ」


 なるほど。

 てことはさっき窓の前で日光浴していたのは太陽エネルギーを蓄積する為だったのか。


「だから、もし鰻子が太陽光を浴び始めたら邪魔をするんじゃないわよ。ミコルギー電池一本作るのに結構なお金がかかるんだから」


 巫女は電池を鰻子の耳の穴に突っ込んだ。そんな大事な物なら、もっと安全な場所に取り付けるようにすれば良かったのに──とは言えなかった。


「でも、やっぱりロボットには見えないな。どう見ても人間だ」


 鼻をほじる鰻子を凝視すると、可愛らしく微笑んだ。


「当然じゃない。限りなく人間に近いロボットを造ろうとしたんだから。それにアンドロイドね」

「だったらさ、腕が飛ぶとか、十万馬力があるとか、ロボット特有の機能ってのは何かあるのか?」

「いいえ、特に頑丈って以外は無いわ。別に私は兵器を作りたかったわけじゃないの。鰻子に会いたかっただけ」


 巫女は鰻子の頭を撫でながら言った。先ほど銃弾を撃ち込んだ奴とは思えないような優しい目をしてる。

 まるで母親のようだ。


 ……。


「はっ!?」


 危ない危ない。

 思わず巫女の醸し出した母性に将来絶対に良い奥さんになるわーって思う寸前だったぜ。


 冷静になってよく考えろ、俺。


 鰻子がロボットだという衝撃的な事実に油断したのは致し方ないが、こいつらと馴染んで会話をしているこの状況も本来はおかしいと思わなきゃいけない。


 監禁されているんだぞ、俺は!


 自分を監禁した犯人が良い奥さんになるわけねーだろ。それこそ非現実的すぎる。本当に馬鹿だな俺は。

 巫女の本性は人権を蹂躙する最低最悪の女なんだ。

 一瞬見せた優しさや、……あの謎の行動に騙されちゃいけない。


 とにかく俺はこの状況に慣れては駄目なんだ。巫女に惹かれるなんてもってのほか。可愛いからって騙されちゃいけない。

 可愛いは正義なんかじゃなかったんだ。


「ふぅ……」

 深呼吸をして、気を落ち着かせた。


「何よ、突然ため息なんて吐いて?」

「いや、何でもない」


 素っ気ない態度で答えた。


「……あっそ。ならさっさとパンを食べなさいよ。私は研究室に行ってくるわ」


 巫女は拳銃をパーカーのフードの中に入れ、周辺に転がる道具やゴミを拾う。


「じゃあ鰻子、また留守番よろしく。四時前には戻ってくるわ」

「分かったんだよ」


「それとこれ」と、巫女は電流装置のスイッチを鰻子に投げ渡した。


「そいつが逃げようとしたり、不必要に体に触れてきたら迷わずそれを押しなさい。いいわね?」

「了解だよ」


「ちッ」

 余計な物を渡しやがって。


「じゃ、やせ我慢せずにちゃんとご飯を食べるのよ」


 返事をしない俺を背に、またまた巫女は部屋から出て行った。


 さて、また鰻子と二人きりになったわけだが、ひとまず俺には為すべきことがあった。

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