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只今、監禁中です。  作者: やと
第二章 監禁生活のはじまり

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「お、お前な、マジでふざけんなよ。どうやって育ったら人に電気を流すという非人道的な行為が出来るんだ」


 柱に寄りかかり、全身に残る違和感に表情を歪める。


「大袈裟ね。別に死なないし、問題ないわよ。それにアンタが変なことをしなきゃ電気は流さないんだから」

「今何もしてないのに流したじゃねえかよ!?」


 ふざけた言動に対し、俺は電撃のような速さでツッコミを入れた。


「そりゃあ一度くらいは実験をしておかないといけないじゃない。いくら私が人類史上最高の天才と言えど、何かの弾みで失敗をすることだってあるかもしれないんだから」


 電気スイッチを投げ遊びながら答える。


「ん? てことはこの機械を作ったのはお前なのか?」

「そうよ。こんなもん店に売ってるわけないじゃない。いつか活用できる日が来るだろうと思って作ってたのよ」


 この電流装置がどの程度の技術力で作れる物なのかは分からないけど、きっと誰でも作れるような物ではないだろう。

 ハルフォード大学を卒業しただとか言ってたけど、あれは嘘じゃなかったのかもしれないな。

 だったらもっと社会の為にその頭脳を活用すればいいのに。


「じゃあもしかして、さっきのロボットもお前が作ったのか?」


 俺が訊いているのは鰻子が持っていたバルコフというロボットのことである。自分で直すとも言っていたので、もしかするとと思ったのだ。


「ええ。鰻子がペットを欲しがってね。察してるとは思うけど、あの子はまだ色々と『人間』としての経験が足りないから、とりあえずは壊れても直せるロボットを与えてるの」


 とても意味深長な発言だ。

 鰻子の精神年齢が見た目相応ではないというなら理解できるが、人間としての経験が足りないという言い回しは違和感を覚える。


「人間としての経験て……まるで鰻子が人間じゃないような言い草だな」


 浮かんだ疑問に自然と発した言葉だった。


「人間じゃないわよ。鰻子は私が造った『アンドロイド』だし」


 ……。


 ……。


 ……。


「へ?」


 微塵も予想していなかった返答に思考回路が一時停止する。すぐに再稼働させるも、その意味を真に理解するのは俺には難しかった。


「アンドロイドって……ロボットってことだろ? は、はは。んなわけあるかよ。アニメじゃないんだからさ」


 信じる気はなく、冗談だと思っている。しかしどこか拭い切れない可能性を感じており、その自信の無さが声の小ささに表れていた。


「低俗教育を受けた割には頭が固いのね。たまには柔軟性を持って物事を考えないと理系脳は疲れるわよ」


 そう巫女は自分の頭にトントンと指先を当てる。

 その時、ガチャンと玄関から扉の閉まる音が聞こえた。


「バルコフを置いてきたんだよ」


 見計らったかのように、研究室にペットロボットを置いてきた鰻子が部屋に戻ってきた。

 俺は有り得ないと思いながらも、佇む鰻子を凝視してしまう。その視線を感じた鰻子は俺を見て首を傾げた。


「どうしたんだよ。鰻子の顔に何か付いてるの?」

「え!? いや、そういうわけじゃ……」


 改めて見ても、鰻子がアンドロイドであるような部分は見当たらない。

 顔を整形した人や、特殊メイクなんてのは一瞬で不自然さを感じてしまう俺だが、鰻子には一切の違和感が無いのだ。

 だから巫女が嘘を言っているのだと確信を得て笑みがこぼれる。


「鰻子。このアホがね、アンタがアンドロイドだということを信じてくれないの。どうすればいい?」


 巫女は腕を組み、ちょこんと佇む鰻子に尋ねる。


「そうなの? 鰻子はアンドロイドだよ」


 真顔で鰻子は衝撃的な告白をするが、その言葉を俺が素直に受け入れるわけがない。正直者とはいえ、鰻子が言った発言を鵜呑みにするのは正しい判断とも思えず、冗談はよしてくれと鼻で哂う。


 だが、間もなく俺の顔から笑みが消える。


「まあ、ガチガチの石頭に何を言っても分からないわね。結局は論より証拠、現実を突きつけた方が早いって話」


 何をするのかと思えば、巫女は踵を返してベッドに向かう。そしてベッドの上から拳銃を手に取り、鰻子の傍らに立った。


 そして間髪要れずに――バンッ!


 鰻子の左側頭部に拳銃を構えたかと思った瞬間、巫女はためらいなく銃弾一発を発砲した。

 至近距離からの発砲で外れるわけもなく、無情にも銃弾は鰻子の頭部に命中する。

 着弾の反動で勢いよく首が傾くが、きっとスロー再生をしても、鰻子の表情は笑顔のままだったろう。


 それはつまり、側頭部を撃たれた後も、撃たれる前と変わらぬ笑顔で俺を見つめる鰻子が立っていたということだ。


「   」


 目前の非現実に頭の中は真っ白になる。

 マジかよ……。


「……ん、どうして鰻子の頭に銃弾を撃ったんだよ?」


 有り得ない遅さで銃弾を撃ち込まれたことに気が付いた様子の鰻子は、こめかみをぽりぽりと人差し指で掻きながら巫女を可愛く睨む。


「ごめんね。こいつが鰻子のことをアンドロイドだって信じないものだから、つい撃っちゃった」

「あのね巫女、鰻子も怒る時は怒るんだよ。もう怒ったんだよ」


 怒ると言っても頬を膨らませる程度で、むしろただ可愛いだけの表情になっている。しかし撃った巫女も反省しているのか、申し訳なさそうな顔で両手を合わせた。


「ごめんごめん、怒らないで。お詫びに今度動物園に連れて行ってあげるから」

「ならいいんだよ」


 雑魚よりも簡単に餌に釣られる鰻子だった。

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