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「おいミコリーヌ、もしもーし」
パソコンのモニターに声をかける。するとすぐさまミコリーヌが姿を見せた。
「何ですか? 下らない用事ならウィルスに感染させますよ」
出てくるや否や目を据わらせて俺を脅迫してくる。
「いやな、最近はどんな音楽が流行っているのかなと思ってさ。お前なら何でも知ってるだろ?」
「はぁ? そんなこと自分で検索すればいいじゃないですか。どんだけ情弱なんですか貴方は。マジで死んでください。デスデスデスデス」
画面に『DEATH』の文字とドクロマークが無数に浮かぶ。
「ひっで! そこまで言わなくてもいいだろ。お前に訊いた方が早いかなと思っただけだよ」
こんな奴に訊いた俺が馬鹿だった。
腹は立つが言ってることは間違ってはいないので、仕方なく自分で検索することにした。
とは言っても、なんて検索すればいいのだろう?
そうだな……。
『今週のブルボードランキング』で調べてみるか。
カタカタカタカタカタカタ。キー入力をする。
「んー、やっぱり似たようなアイドルが多いな。他は海外アーティストばっかり──おっ?」
表示されていたランキングを眺めていると、今週一位の座に輝いたアーティストはまさかの木村瀧男だった。花村のライバルであるキムタキ。とうとう音楽界にも進出しやがったのかよ。
花村並みにルックスも抜群。頭も賢い。帰国子女。それで歌でも一位とか……キムタキ最強すぎだろ。
カタカタカタカタカタカタ。
一位になったキムタキの歌が気になったので、俺はヘイユーチューブで見てみることにした。
『作詞作曲 木村瀧男』
『タイトル KIMUTAKI』
コメント欄にそう書かれてある。キムタキは何でも出来るんだな。
ポチっと、動画を再生してみる。
コミカルな音楽が鳴り始め──と思ったら、曲調が変わって激しくなる。
ヘビメタな感じなのかな──と思ったら曲調がまた変わり、アコースティックギターを持ったキムタキが暗闇の中でライトに照らされ、撫でるようにギターを弾き始める。
そして、ここでようやくキムタキは歌い始めた。
※以下歌詞
こんにちは こんばんは
チューチューチュー
oh 世界は君の為に生まれた
僕の心にピンクのイナズマが走ったよ
oh 君とサンドイッチを食べたい
トライアングルな関係はまっぴらさ
こんばんは こんばんは
チューチューチュー
oh 地平線の向こうに何が見える
僕らを照らした太陽はもう沈んだ
oh 君と過ごした日々が消える
ガラスのハートは崩壊寸前さ
ありがとう さようなら
チューチューチュー
oh 君との思い出は
oh 僕の宝物さ
(※ギターを投げ捨てる。突然ラップぽくなった)
キムタキ最強 yo
くだらない毎日 退屈だ
キムタキ才能 yo
史上最高のエンターティナーだ
キムタキ天才 yo
豚足短足俺反則
キムタキ存在 yo
待ちに待ったこの状況
俺が国を変えてみるぜ
かかってきな 老若男女
婆ちゃんの好物 こんにゃく大根
KIMUTAKI 無敵
KIMUTAKI 無敵
K I M U T A K I
KIMUTAKI 無敵だぜ
(※上半身裸になってシュークリームをワイルドに食らう。最後はキムタキの顔アップで終了)
……。
曲を聴き終え、俺は心の中で叫んだ。
邦 楽 終 わ っ た な !
何だこの曲は、こんな糞みたいな曲が今この国で一番売れているのかよ。
酷すぎるにもほどがある。音楽は自由だが、これは危惧しなければならないレベルだ。
だが、裏を返せばこんな糞みたいな曲でも売れるキムタキのスター性が半端ないのかもしれない。
「キムタキは凄いな……」と、思ったことを吐露する。
「でも悪い噂が多いですよ。その人」
表示されていた動画サイトのページを無理やり閉じて、ミコリーヌが再び現れた。
「悪い噂?」
「はい。昔レモンクリームというギャングチームでリーダーをやっていたり、前科も五犯ありますね。暴力団とも関係があるようで、今の人気も権力で奪い取ったとも言われています。まあ、あくまでもネット上に転がっている噂ですけど」
「レモンクリームというダサいチーム名への疑問はあえて無視をするけど、前科があるのって隠せるものなのか?」
「木村瀧男の祖父が有名な政治家だと言われてます。詳しいことは分かりませんが、テレビで見るような単純なカラクリがあるのでは?」
「うわぁ……それが本当だったら恐ろしいな」
芸能界には黒い噂が絶えないとは聞くが、まさか今一番勢いのある俳優木村瀧男にその噂があったとは驚きだ。




