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只今、監禁中です。  作者: やと
第八章 メメメ

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 朝。


「んー!」


 目を覚まして腕を伸ばし、何事もなく無事に起床することが出来た。とりあえず上体を起こす。


「……いてて」


 昨日の頑張りが全身筋肉痛として表れる。自ずと一つ一つの動作が重くなってしまう。


「おはよう金也。鰻子だよ」


 気配を感じたのでベランダの方に目を向けると、窓の前で日光浴をしている鰻子が笑顔で座っていた。


「ああ。おはよう」

「雪だるま作ったんだよ」


 そう言って鰻子は窓の外を指差した。

 ベランダには三十センチほどの不細工な雪だるまが置いてある。きっとベランダに積もった雪で作ったんだろう。


「上手に作ったもんだな。頭がちょっとだけおにぎりみたいだけど」

「名前はウナゴンだよ」


「名前あるんだ。良い名前だな──と、巫女はまだ寝てるのか」


 鰻子と話しながら巫女のベッドに目を向ける。ベッドには布団にくるまって眠っている巫女がいた。


「金也。鰻子と遊ぶんだよ」

 俺のそばに寄り、服を摘んでクイクイと引っ張る。


「え? ……ああうん、何する?」

「どっちが早く眠るか勝負するんだよ」


「何だその遊びは? 俺今目が覚めたばかりだから眠れないよ」

「そうなの? うーん。鰻子は悩むんだよ」


 腕を組んで首を傾げている。


「あ! じゃあ鰻子は一人で眠ってみるんだよ」


 何故そんな考えに行き着いたんだ。


「金也は鰻子が眠るのを見てて欲しいんだよ」

 人差し指を立てて元気にそう言う。


「え、ああうん。そんな事でいいなら」

「いいんだよ」


 そして鰻子は床に寝そべってゴロゴロと転がり始めた。俺は言う通りに鰻子を見守り続ける。


「うーん……」


 すると一分ほど転がった後、鰻子はピタリと動きを止めて起き上がり、悲しそうな表情を見せて俺に言う。


「眠れないんだよ」

「お前何がしたいんだよ」


「暇なんだよ。鰻子は勉強以外にやる事がないんだよ」

「そっか。……まあそうだよな」


 鰻子は学校に行っていないから友達なんかいないだろうし、部屋にこもっているだけでは出来るはずもない。バルコフじゃ遊ぶと言っても限られるし、ミコリーヌは仮想世界の住人だもんな。


 鰻子はきっと寂しいんだ。巫女が相手をしてくれなければ、暇で暇で仕方がないのだろう。

 だから気が付くといつも俺のそばにいたんだ。人間で言うと何歳になるのかはいまいち判断しづらいが、甘えたい年頃なんだろうさ。


「よし、じゃあ一緒に朝ご飯でも作ってみるか?」

「うん! 作るんだよ!」


 鰻子は瞳を煌めかせて大喜びだ。

 巫女は寝てるけど、朝ご飯くらい勝手に作っても問題は無いだろ。あったとしても、鰻子を盾にすれば何とか説得出来そうだしな。


「でも、金也はご飯作れるの?」

「一人暮らしをしてたから簡単なものくらいは作れるよ。ただ、材料があるかどうかが問題だな」


 頭を掻きながら立ち上がり、ジャラジャラと鎖を引きずりながらキッチンの中に入る。


「え……っと」


 冷蔵庫の中を開けてみると、思いのほか色々と食材が入っていた。俺が気づかぬ間に補充してたようだ。


「何作るんだよ?」


 冷蔵庫の扉を掴んでいた俺の腕の下から鰻子が顔を覗かせた。その顔はペットショップで見る子犬の如く愛らしい。


「んー。何にしようかな。鰻子が好きな物──って、食えねえか」


「食べれるんだよ」

 俺を見上げるようにして言った。


「え、食えんの? でもお前の内臓とか機械だから無理だろ」

「大丈夫だよ。体内で乾燥させて粉々にしてウンチにするから食べられるんだよ」


「マジか。じゃあどうして今まで食べなかったんだよ?」

「別に食べなくても大丈夫だからだよ」


 ごもっともで。


「なるほどね。なら何か鰻子は食べたい物でもあるのか?」

「じゃが肉? あれ……いも肉? ジャガー肉? ニックジャガー?」


 鰻子が首を左右に傾げて困っていたので、「肉じゃがだな。じゃあそうしよう」俺は冷蔵庫から必要な食材を取り出した。


「じゃがいも。ニンジン。玉ねぎ……こんなもんでいいかな」

「これ鍋に入れるんだよ」


 取り出したじゃがいもを握って鰻子が言う。やる気満々だ。だけど何も分かってはいないようである。


「あーダメダメ! 先に皮を剥いて切らなきゃ駄目なんだ」

「そうなの?」


「そうなの」


 鰻子が包丁で皮を剥けるとは思わないので、どこかにピーラー(皮むき器)がないかと探してみる。


「お、あったあった」


 シンク下の引き出しにピーラーを発見し、ボールと一緒に鰻子へ渡す。


「これでじゃがいも全部剥いてくれ」

「わかったんだよ」


 ピーラーの形状を見て使い方を理解したんだろう。鰻子は教えたわけでも無いのにちゃんとじゃがいもの皮をむき出した。


「……と、見てる場合じゃねえ」


 鰻子がじゃがいもの皮を剥いている間、俺は玉ねぎを切ることにした。


 ザクッ。ザクッ。トン、トン、トン、トン、トン……。


「あー目がいてえ」

「どうしたんだよ?」


 目に涙を浮かべる俺を心配そうに鰻子が見つめてくる。


「玉ねぎを切ると涙が出るんだ」

「どうしてなんだよ?」


「何だったっけな……玉ねぎを切ると催涙物質だかが目を刺激するとかどうとか」

「ふーん。鰻子は何ともないんだよ」


「鰻子は特別だからな。ほら、ニンジンの皮も剥かなきゃならないんだから手を休めちゃダメだぞ」

「鰻子一生の不覚だよ」


 急かすつもりは無かったが、鰻子は慌てるようにじゃがいもの皮剥きを再開した。

 俺はどうにか玉ねぎを切り終えたので、冷蔵庫から牛肉を取り出して鍋で炒める。

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