その依頼、達成でいいですか?
よろしくお願いします!
到着!
僕は依頼を終えて、やっとタロックの街に着いた。
陽は既に地平線にかかり初め、空は夕焼けに色ずいている。
そして、僕がタロットの門に差し掛かった時だった。
「止まれーーー!!」
門の衛兵が青ざめた顔で叫ぶ。
周りに人もいないので恐らく僕へ向けてだろう。
「どうしたんですか?」
はて?僕は特に身に覚えがないが、
「どうしたもこうしたもあるかー!その後ろに引き連れた魔獣はなんだ!?」
「ああ、シャドウウルフですよ。」
僕が答えた通り、僕の後ろにはシャドウウルフの群れがいる。
僕が使った『幻影:魅了』という魔法、これは名前の通り、対象を魅了するという魔法で、魅了した相手は、基本的に術者の言いなりになる。
勿論、こんな都合の良い魔法が無条件で使えるはずがなく。条件として、対象が術者より弱いこと。相手が十分に弱っていることがある、但しこれには例外がある。
「そんなことを聞いているのではない!何故、魔獣を引き連れているのか聞いているんだ!」
「まあ、いろいろあったんですよ。まあ攻撃しなければ、安全ですよ。多分。」
「危害があるかなど、どうでもよい!魔獣など街に入れられん!」
「はあー『展開:幻影:魅了』」
僕は溜め息をつきながら、衛兵のおっさんに先程の魔法を放つ。
「じゃあ、入りますねー」
そう言って躊躇なく、門を抜けると。
「ああ、勿論です。ささ、そのペット達も……」
これが例外。術者が対象者と圧倒的な力の差を持っていた場合、特にダメージを与えなくても術に掛かる。
「さて、それじゃあ失礼します」
そして、さっさとギルドへ行こうと思ったのだが……
「キャー!!魔獣よ。魔獣よ」
「魔獣だ、衛兵はなにやってんだよ!」
「ギルドだ。冒険者ギルドへ行くんだ!」
「何でだよ、何でシャドウウルフがっ!」
あれ?
何か物凄い騒ぎになってるんですけど……
「ちっ、『展開:幻影:迷彩化』」
異常な騒ぎになり初めたので、僕は魔法により、シャドウウルフの姿を認識出来ないようにした。
「え?き、消えた。」
「どこだ?どこに消えた!?」
「油断するな、シャドウウルフは影に隠れる」
「そうだ、相手は魔獣だ。魔法を使ったに決まっている!」
何かもっと面倒くさくなった気がするが、特に気にする必要はないと思う。
そのまま、見えなくなったシャドウウルフを引き連れてギルドに到着し、そのままギルドへ入る。勿論、シャドウウルフも入る。
入ると、そこは一番最初に来たときとはまるで違っていた。
忘れもしない、ここで冒険者達は安い酒で酔い潰れていた。更には僕を子供扱いをするわ、うざ絡みをしてくるわで兎に角、人間性を疑うものだったが、今日は違う。
ギルドにいる全員が真剣な面持ちをしていて、冒険者は剣を研いだり、鎧磨いたりして、ギルド職員はいそいそと書類の整理をしている。
それもあって、ぼくには誰一人目をくれない。
「ロキさーん!!」
前言撤回。一人だけ、目をくれた人がいた。
自分の持ち場を、一瞬で離れ全速力で僕へ向かって来る。
「ロキさん!心配したんですよ。今、街にシャドウウルフが侵入したっていう報告があって。ロキさんが負けたのかと……」
受付嬢は顔をぐーと近づけて聞いてくる。
ああ、さっきの騒ぎがギルドまで伝わったのか、それでギルドが殺気だっていたのか。
「勝ちましたよ。特に怪我もありません。」
「それじゃあ、何でシャドウウルフの群れが現れたんでしょう?」
「ああ、それはですね……。見れば分かりますよ。」
僕はパンっと手を叩き、
「『解除:幻影:迷彩化』」
シャドウウルフに掛けた『幻影:迷彩化』を解除する。そして、十数匹の狼一斉に姿を見せる。
「え?嘘、ロキさん後ろのは?」
「はいっ、シャドウウルフです。」
他の皆様も、刹那で現れた魔獣に唖然、思考を停止している。
「全員、剣を抜けーーーー!!!」
そして、ようやく状況の整理が出来たらしく、戦闘体勢に入る。
「まあまあ、落ち着いて下さい。この子達は僕が手懐けましたから。」
「なっ、何言ってるんですか?ま、魔獣を手懐けるなんて無理ですよ。」
受付嬢は必死な顔で僕を説得するかのように言葉を発す。
「はぁー。お前達、お座り」
『幻影:魅了』に掛かっている狼は、僕の言うとおりに綺麗なお座りを見せる。
「これで、証明完了でいいですか?」
「ほ、本当に?」
受付嬢と同様、辺りは騒然としていて、この事実を鵜呑みに出来ないようだ。
「まあ、コイツらのことはどうでもいいんですよ。これで、依頼達成でいいですね?」
「依頼何かより、この状況を説明してくださいよ!」
その後、押し問答が3時間程続いき。辺りは真っ暗になってい
た。依頼は達成されたことになり特に問題もなかった。それと、シャドウウルフは一時的にギルドの馬小屋で預けることなった。
だがしかし、結果として、今日の僕の面倒事はこれだけではなかったのだった。
ありがとうございました!