その狼、支配してもいいですか?
僕は店を出て直ぐに、タロックの街を出た。
そして、続くのは先日に嫌という程見たなんの変哲もないただ長いだけの街道。
前もそうだったが、殺風景過ぎて退屈なのだ。
それでも、僕は憂鬱に耐えながら街道を歩き続けた。
そして、太陽が真上に昇った時、灰色の毛並みが立派な狼達が悠々自適に眠りこけているのが見えた。。
僕が眠らせたシャドウウルフの数と一致しているので、僕が襲ったシャドウウルフで間違い無さそうだ。
どのようにしてこの依頼を完遂するかは、嫌という程時間があったので、街道に歩いている時に考えてある。只、これをするにはシャドウウルフを弱らせないといけない。
別に、火魔法でワンパンすることも可能だ。
只、それは嫌だ。別に食料にするわけでもないのに、殺傷をするのを僕は好まない。
それじゃあ始めますか!
都合よく、ターゲットが寝ているのでまず、一匹。
そう、思って僕が彼等に一歩近づいたとき、シャドウウルフの頭が一斉に上がった。そして、赤い目が僕の姿を映した瞬間、彼等は一瞬で立ち上がり、全員で歯を僕に立てて、威嚇する。
「随分、嫌われてるなー。ま、仕方ないか。」
群れを一回全滅させた奴が、もう一度現れたのだからこうなるか。
自然界だったら、死を意味するのだから、二の舞には絶対にならないように、全力で向かってくる筈だ。そういう訳で今回の依頼は前のものよりも厳しいものになる。
さて、一手目はどうしようか?
相手の方が数を多い、一手でもミスをすれば、数の利で押し潰されてしまう。数が多い時には、丁寧に戦闘を組み立てていかなければならないのが定石になる。
その為に、一手目は非常に重要になってくる。
「まあ、やってみなきゃ分からないか」
僕は、意を決して。シャドウウルフに突っ込む。
僕の戦い方は、武術複合型魔術師。
武術と魔法を組合わせた、僕が独自に作った型だ。この自己流の型は武器を使わず身一つで戦う。
僕は、一匹のシャドウウルフに狙いを定めて、蹴りを入れる。
だが、ここではあまり深くは入れない。深く入れば入るほど、それはかえって大きな隙となる。
「キャウ」
蹴りを入れたシャドウウルフは、そんな少し可愛い顔を上げて、一度は倒れる。しかし、やはりダメージは小さいようで直ぐに起き上がった。
僕は一度後ろに戻り、体制を整える。
すると、シャドウウルフは威嚇を更に強める。
さっきみたいに、各個攻撃するのが最善だけど、十数体もいると時間がかかってしまう。まあ数は減らさないと、どうしようもない。
もう一度、僕は突進。
さっきとは違う個体に蹴りを入れる。
だが、僕が蹴りを入れた瞬間に、他の個体が自身の胴体を使って突進してくる。
流石は野性動物、僕のただ一回の攻撃で僕が攻撃してくるタイミングを掴んで反撃に転じるとは。
僕は、なんとか身を翻してシャドウウルフの攻撃をよける。
その勢いを利用して僕はまたシャドウウルフから距離をとる。
しかし、僕の体勢が崩れたところを見て、シャドウウルフは特攻に出る。
五匹が牙を剥き出して一斉に僕へ駆け出す。
「『展開:水:水弾』」
僕は、殺傷能力のない、水魔法の『水:水弾』を展開する。僕の頭の高さに青色の魔方陣が出現して、水の弾を放つ。
この魔法は圧縮された、水が放たれる魔法。あまり殺傷能力は持たないが、当てれば向かってくる相手を吹き飛ばすことぐらいはできる。
「「「「「キュウ!」」」」」
水の弾を受けたシャドウウルフは、またも可愛い声を上げて後ろへ飛んでいく。
その時、飛んでいったシャドウウルフが後ろにいた他の個体と衝突した。
「ラッキー!」
僕は唇を少し舐めてから、シャドウウルフへ向かう。
案の定、何匹かは僕が飛ばしたシャドウウルフの下敷きになってしまっていて、集団戦で重要な役割を果たす、陣形は脆くも壊滅している。
そして、僕はその隙を突いて、無傷のシャドウウルフにダメージを与える。
すると、群れには満身創痍なものや怯えきっている個体だけになった。勿論死んでいる狼はいない。
よし、これなら大丈夫そうだ。
「『展開:幻影:魅了』」
シャドウウルフは全て、僕の魔法にかかっていた。
「よっし、依頼達成!さて、みんな帰ろー」