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ドロップアウトにうってつけの日  作者: クサカゲロウ
7/8

予備校

 予備校はコンビニの上にあるんだ。だからアイスコーヒー買ってから、階段を登って予備校に入った。本当は行きたくなんかないんだけど、家にいるよりは数倍マシだよ。

 入ってからまず目に入るのは「センター7割!」「〇〇大絶対合格!」そんな文字だ。

 こういうのを見ると、いつもウンザリするんだ。なんだか形だけ意気込んで、それで自己満足に終わっている感じで、こういった情熱をわざわざ表に出して人にアピールしているようで、それでみんな一緒に頑張るぞ!だなんて言っているんだ。

 学校でオバサンの教師が、受験は団体戦!だなんて言っていたけど、そんなわけない。そんな綺麗事なわけがない。一緒に行こうねだなんて言っている奴らでも、内心は自分だけ受かればいいと思っているんだ。そもそも競争させている時点でみんな幸せになんてなれないんだからその偽善を認めるべきだよ。

 まあいいや。ロビーのコンピュータで登校入力をすます。そうした後に、沢山パソコンが置いてあるブース内に入って映像授業を受けるんだ。

 だからブースに入ろうとしたんだけど、ロビーで秀才君と会ったんだ。

 彼は、たぶんこの校舎で一番頭がいいんだけど、さっき言った情熱に燃えている人たちとは違うんだ。他の人が志望校合格と目標を書く色紙に、自信を持つ、だなんて書いているんだ。僕と彼じゃ学力は天地の差だけど、なんだかとても親近感が持てて、それで仲良くしている。ついつい30分ほど話してしまったけど、彼は嫌な顔せずに付き合ってくれて、本当にありがたいね。

 彼は彼で予定があるだろうから、そこで切り上げてブースへ入った。ブース内は相変わらず湿度が高くムッとしていたけど、文句も言ってられないし適当に席を選んで座った。

 パソコンを開いてパスワードを入れて受講ページを開く。イヤホンをさして再生ボタンを押すと、画面の中で教師が一生懸命説明を始める。僕はしばらくそれを聞いていたんだけど、だんだんと眠くなってきたんだ。それで、20分ぐらい寝てしまって、見回りのバイトの人に叩かれて起きた。授業の内容がだいぶ飛んでしまっていたから巻き戻してまた聞き直した。

 学校の授業はクソだけど、予備校の授業は面白いよね。正直、学校の教師には学問を教える資格がないんじゃないかと思うんだよ。指導力というのかな?圧倒的に予備校講師の方がレベルが高い。

 一時間半の授業の4分の3ぐらいまで見終わったところで、さっき買ったアイスコーヒーが切れた。また下に行って、コンビニで買ったんだ。今度はホットコーヒーにした。

 ブース内をコーヒーくさくするのもマズいから、階段の下で飲んでいた。最初は一人だったんだけど、僕が居座っているからか周りに部活帰りの他の高校生が増えてきた。やっぱり学校終わりはみんなコンビニに行きたがるんだね。気持ちは分からなくもない。

 だけど今は一人にして欲しかったんだ。周りで騒がれると本当にストレスが溜まる。仕方ないから一気に飲んで予備校に戻った。

 そして授業の続きを再生するんだけど、途端に気持ち悪くなっちゃったんだ。なんでか分からないけど、それで、帰ることにした。

 ブースを出て、下校申請をしている途中、校舎長が話しかけてきた。

 お前最近おかしいぞ、だなんて言ってくるんだ。何がおかしいのか分からないね。そう言うと、本音を言えだなんて言ってくるから、言ってやったんだ。生きるのが辛いと、死のみが開放に思えると、だけど全く無名なままで死ぬ勇気がないから、2人以上助けて死ぬんだと。2人救えば、社会全体で見ればプラス1だ。だから誰かもわからないその2人が凍え死にそうになっていたら服を与え、凶弾の前に倒れそうになっていたら盾になると、それが僕の夢だ。そう言ったんだ。

 だけどすぐに否定されてしまったよ。その2人のその後の一生が、僕の死という呪いにかかってしまうと。校舎長は難病にかかった子供の支援のボランティアをしているんだけど、余命が近い子供に言われたんだって。僕が死んでもすぐに忘れてって。自分の死で他人を苦しめないように、最後にそう願っていたそうだよ。だから僕もそんな死に方をしてはいけないと、そう言われたんだ。

 じゃあ、じゃあどうすればいいんだ!?大義にも生きれず、インチキな世界で腐っていけばいいのか!?そんなの絶対に嫌だ。

 もう本当に、どうすればいいんだよ。

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