午後
5時間目は物理なんだけど、今回は授業の最初にテストがあるんだ。そのせいで、みんな教師が来るまで必死こいて教科書とかプリントとかを見てるんだけど、本当にバカだと思うね。
確かにテストはいい点を取るほうがいいけど、直前に詰め込んでそのテストを乗り切ったって何の役にも立たない。高校生ならほとんどの奴は大学を目指してるわけだから、根本から理解していかなくてどうする気なんだろう。大事なのは定期テストやこういった小テストじゃなくて、模試やセンターと二次だろう。何よりも、こうやってチキンレースみたいに勉強をやらされるのが家畜のようで嫌だね。学校に隷属している証拠だよ。
なんて考えていると、メガネが話しかけてきた。メガネは優等生と言えるほど成績も良くなく、だけど愚直に学校に付き従っている凡人の鏡みたいな奴なんだ。
そんな彼は、テスト前とか肝心な時にいつもこうやって取り乱したりしてるんだ。「お前っていつも落ち着いてていいよな」なんて言ってきやがんだ。僕からすれば、取り乱すほうが理解できないね。別段テストが出来なくたって死ぬわけじゃないし、何よりもこういったもので将来が決定付けられるわけでもない。そして対処方法だって分かっているんだから何も取り乱す要因なんて無いと思うけど。
そうやって言ってやったら、彼は理解できないっていう顔をして席に戻って行ったよ。ああ本当に、バカバカしいな。
結局この時間の授業も午前中のように寝たりして不真面目に過ごした。特に物理に関しては、自分で物理現象を調べたり考えたりしているときは楽しいのに、授業になるとどうしてこうもつまらなくなるのか。意図的につまらなくしてるとしか思えないね。
個人的には、教師の仕事は授業そのものではないと思うんだよ。教科書がある限り授業の内容なんて誰がやったところで変わらないし、教え方の良し悪しなんてほとんどない。後は生徒が聞くか否かなんだよ。教師の仕事は、いかに生徒に授業内容に関心をもたせるかで、それが分かっていない時点で教師失格なんじゃないかな。今教師の連中は、学生の時にそういうことを考えなかったのかな?考えなかったんだろうなあ。
頭の悪い人は疑問を持たない。少し頭のいい人は批判をする。本当に頭のいい人は…どうするんだろうな…?とりあえず、そんなふうに考えながら、うつろうつろしながら午後の授業は過ぎていったよ。
終礼も相変わらず脳筋教師のつまらない昔話をするだけで終わった。昔話をよくするよね。大人は。だけどね、「昔は良かった」だなんて言っているやつほど、何もしてこなかったやつなんだ。自分がその時代を作ったわけでもないくせに勝手に誇りに思って、勝手に現在に失望してるんだ。
そしてそれを自分がまるで物知りであるように思わせる道具として使っているんだ。本当は昔のことさえほとんど知らないくせに、もっと知らない現代と比較してるんだから滑稽だな。
ほとんどの大人なんていうものは、与えられた都合の良い情報だけ摂取して、歳を食っただけなんだ。挙句、それで自身が成熟した人間だと思い込んでいる低能だ。
放課後になった。
僕には放課後に違反指導が待ち構えていたんだ。自転車マナー違反と特別指導だそうだけど、まったく下らないね。
どうやって違反したかっていうと、予備校が終わって、クソみたいな勉強でクソみたいな気分になって帰ってたんだ。それで、制服をちゃんと着るのもバカらしくて、ワイシャツを出して、少しでも気分を良くするためにイヤホンで好きな曲を流してたんだ。この曲はピアノとフランス語でできてて、もの悲しい雰囲気なんだけど凄く気力が湧いてくるんだ。
まあ、曲の話はいいや。それで、そうしている場面を教師に見つかって違反指導となったわけだよ。指導の内容は、反省文と、翌日の交通マナー指導のボランティアだってさ。反省文に関しては苦労しなかったね。文を書くのは嫌いじゃない。たっぷりと皮肉をこめて書いてあげたよ。だけど、ついでに読まされた文が最悪だったんだ。"良い子であるために"みたいなタイトルだったかな、よく覚えてないや。だけど、その内容が、学校のクソやインチキを煮詰めて凝縮したようなやつだったんだ。気持ち悪くて最後まで読めなかったよ。
そして、こういったものに対して何の疑問も持たずに育ってきた教師に対しても嫌悪するね。異常だよ。こんなの。これを守ってて出来上がるのは、人じゃあない。生殺与奪を他人に握られて従順に従うなんて、家畜だよ。良く言って奴隷レベルのものさ。でも今だけはこれに従っているそぶりを見せないとね。どれだけ嫌がっても生きていくためにはそうしなきゃいけないんだ。