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夢を見ている。

作者: 舎々

ブックマークが2つ付いたことが嬉しい作者です。

女子高生の気分ってよくわからないな、とか、メイクってどうやるんだろうと思い、YouTubeやニコ動で配信を見ていると時間が過ぎて笹食ってくる場合じゃねえとなりましたが、完成いたしましたので投稿します。

ご一読いただけると幸いです。

夢を見ている1


十七歳の朝は早い。


SNSやメールのやりとりをすませながら朝食を摂る。


顔を洗い、髪を整え、制服に着替える。


母のメイクボックスを開いて顔面装備を整えた私はカレの待つ公園に向かう。


朝の挨拶を済ませ、昨日のテレビ番組とかの話をする。


相手から振られる話題や部活の話とかをそれとなく答える。


仲良く登校を済ませた私は靴箱でカレと別れる。


教室の扉を開くと、仲の良い子が話しかけてきたのでそれに相槌を返す。


「そうだねー。」


「それもいいねー。」


「大変だねー。」


流行の服や、アルバイトの愚痴を聞かされる。


部活動をしている私は服を買いに行く時間もなければ買うお金もないが、


流行に取り残されることは大きな罪のように感じられ、


その話に付き合い続ける。


彼女たちがいうトレンドを私は見たこともなければ、ましては着たこともないが、


少しは詳しくなっていた。


アルバイトの愚痴よりも退屈な授業が始業のチャイムとともにやってくる。


私は教師がたらたらと吐き続ける一文一句を右から左で受け流し、一時間、二時間と時間割が消化させていく。


休み時間のたびにまだ話したりないと、会話を継続する私の取り巻きたち。


聞き疲れた場合はトイレにいくか、携帯をいじる。


無駄に長い数学の公式の説明が終わって、昼休みがはじまる。


めちゃくちゃに書かれた黒板のミミズ文字を解読不可能と早めに見切りをつけて、取り巻きたちのもとへむかう。


私の取り巻きといったが、正確には私も取り巻きの一部だ。


このクラスでとりわけ派手に自分を着飾った女がいる。


その取り巻きなのだ。


「今日、あたし食堂いきたいんだよね。」


集団行動を決定するのが彼女の勤めであるような発言に私たちは従う。


私は心の中で彼女のことを女王様と呼んでいる。


「朝起きれなくて、弁当つくる時間がなくってさー、みんなごめんね。」


弁当を自分で用意しなければならない彼女を大変だなとは思いつつ、


食堂で自分の分を買ってくるという発想がないあたり、


彼女の女王様気質は本物であるのだろう。


彼女が女王様ならば、私たちはさしずめ従者、彼女にかしずく者たちなり。


「大変だねー。」


「まじ、めんどくさいんだよねー。ほんと、ごめんねー。」


道中、黒板に書かれたミミズ文字の話題になり、


これは大いに頷いておいた。


そのあとに、おのおの話したいことを話す時間がやってきて、


私は相槌を重ねた。


私たちの会話は近所のおばさん家で出されたカルピスぐらいに希釈された濃度で形成されている。


全然甘酸っぱくもなければ、青春もしていない。


私にいたっては「あー、そうだよねー」しか言っていないし。


私はあなたの話をなんとなく肯定していますよという意思表示はそれでも大切だ。


下手に意見を求められても困るし、


そもそも彼女たちは自分の話に意見を求めてはいないのだから、


私の返答は模範解答といって問題ないだろう。


一つ、問題があるとすれば、あまりに気のない返事が続くと女王様の機嫌が悪くなるということぐらいか。


彼女は私たちには確固とした意思でもって彼女に付き従うことを望んでいるのだ。


「私といるのは嫌じゃないよね」という気持ちを不器用にしか表現できないのだろう。


そんな彼女が私は嫌いではない。


*********************************


夢を見ている2


昼食を終えた私たちは教室にむかう。


廊下で、カレとすれ違い、互いに手を振り合う。


取り巻きに冷やかされる。


話題の中心が移ったからだろうか、女王様の顔色が優れない。


教室の戸を開く。


窓際でお昼寝に勤しむ少女がいる。


わざわざ、机を窓際に寄せて、ここがベストプレイスなのだと言いたげだ。


ケモ耳つきのパーカーをブレザーの中に着込んだ彼女のファッションセンスにはいつも度肝を抜かれるが、


その姿には賛否がわかれる。


ファンシーな恰好というのは現実世界では受け入れがたいものなのだ。


かくいう私も受け入れられない一人ではあるのだが、


うちの女王様はこの娘をいたく気に入っている。


ケモ耳娘の頭を軽く撫で(はたき)あげ、満足そうに「おはよう」と挨拶をする。


「ん、おはよう」ケモ耳娘も律儀に挨拶を返し、机を定位置へとイソイソ戻し始める。


理解の及ばぬ世界の住人たちは互いに共鳴しあうかのように、言外での意思疎通がはかられているようだった。


ジャラジャラジャラジャラとカバンに張り付けられた缶バッチに少し大きめのストラップ群があたる。


あれは何かの武装なのかと見まがう彼女のカバンではあるが、


あれが彼女のブームらしい。


好きなアニメキャラやらがところ狭しとカバンの外装を彩る。


「毎日大好きな子といれて幸せ」らしい。


そのお花畑思考は、さぞオシアワセでしょうねと思った。


放課後、私の所属するバレー部は本日グランド練習。


体育館がとれない場合は休みにすればいいと思う。


外部コーチが声を上げ、それに連なるように私たちも声を張り上げる。


サングラス越しに見えるこの男の視線はどこに向いているのだろう。


身体から吹き出る汗を制汗シートで抑えながら、着替えを済ませる。


もう一度シートで胸元を拭ってみるが、まとわりついた嫌な視線は拭えない。


携帯を手に取り、カレに部活が終わったことを連絡する。


校門で待ち合わせること数分、カレがグランドからかけてくる。


昼もサッカー、部活もサッカー、彼はボールと友達になれたのだろうか。


気が合うようなら恋人になればいいのに。


グランドのほうから彼を冷やかす恨めしいような雄たけびがきこえた。


彼が横にきたので、私は歩を進めた。


夕方の帰り道。


赤く染まった空を見上げていると声をかけられる。


「キレイだね(君が)。」


謎の副音声が聞こえてきそうなほどいい笑顔でカレがいうので、


「あー、そうだねー」


と、私は返した。


私は彼と手をつながない。


部活動の休みがかぶることもないのでデートにもいかない。


朝と夕方、一緒に登下校を繰り返し、時々メールのやりとりをする。


もう間もなく、彼のとの関係は半年を過ぎる。


私の知る限りではそこそこ長続きしているこの関係は互いに踏み込まないことで成立している。


私は彼の何を知っていて、


彼は私の何を知っているのだろうか。


ただ、この手のつなげない距離感を彼がもどかしく感じていることはわかった。


宙に浮いた私の手のひらを彼が掴むことはない。


踏み込む意思をもたない女と、踏み込む勇気のない男がそこにはいて、


彼がいうように確かに空はキレイだった。


地面に伸びた私たちの影は互いに寄り添い、それを彼が恨めしそうに見ている。


私は一歩踏み出して、別れの挨拶を告げた。


*********************************


夢を見ている3


やはり、十七歳の朝は早い。


朝食作りと、お弁当をつめる母の姿に女王様が重なった。


やはり、私には想像できない苦労を重ねているのだろうと思う。


顔面の装甲をもう少し薄くすれば、あるいは装着せずに、学校にむかえば、


昨日のようにお弁当をつくり忘れることもないのではないだろうかと思った。


化粧台の三面鏡を開けると、知らない顔があった。


垢ぬけない私の顔。


薄い眉毛。


一重のまぶた、そのふちに小さく彩られたまつ毛たち。


小さな瞳を備えた丸みを帯びた輪郭。


その一つ一つに必要な工程を踏んでいく。


ファンデーション、アイライナー、マスカラ、ビューラー、チーク、アイシャドウ。


厚くなりすぎないように丁寧に仕上げていく。


放課後には部活動で嫌というほど、落ちていくけれど、それでも、いやというほど重ねていく。


ナチュラルメイクという名の厚化粧。


鏡に映る女性は私の知っている私の姿に化けていた。


この化けの皮がはずれるのは今日の放課後まで、


私の魔法は12時ではなく夕方6時までしか続かない。


彼との待ち合わせ場所に向かいながら、


「お化粧の時間はお弁当よりも大切な時間なのかもしれない」と思った。


何かが、顔面に張り付いていなければ、不安になってきてしまう。


カレは子犬のような笑顔を向けながら「おはよう」と言ってくる。


私は彼に「おはよう」と返すのだが、今日もキレイに笑えているだろうか。


幸せそうな彼の姿を私は大事に思っている。


彼の幻想がつぶれないように私は精一杯の笑顔をつくろう。


視線が下に行き、彼の手元に傘を見つける。


天気予報は雨だったろうか、いや、今朝はテレビを見ていない。


雲行きが怪しい。


通り雨がきそうだ。


私はしまったと思った。


天気予報を見ていなかったことが悔やまれる。


パラパラと小雨が降り始めると、彼は無言で傘を開き、私と彼との中間に傘を持ってきた。


昨日よりも近い距離、巻いた髪は湿気をすって逆立ちしそうだ。


うつむいた私の頬にはチークで染められていた。


彼は意識的に遠くをみやり、右半身を遠ざけつつ左手は私のほうに突き出してきている。


彼の左腕が私の右肩にあたる。


彼の頬と耳が真っ赤に染まっていた。


この血色のいい赤色はきっとどんなコスメにも再現できないだろう。


下駄箱で彼と別れる。


彼の後ろ姿を見やる。


彼の右肩は濡れていて、私の左肩は濡れていない。


私の心がチクリと痛くなった。


教室の戸を開く。


取り巻き立ちはまだいない。


私は服の裾についた水滴を払いながら席に着く。


直立不動で黒板を眺める。


雨に振られた生徒たちがバサバサと騒ぎ出す。


服を乾かそうとしているらしい。無駄だろう。


なるほど、天気予報を見逃しているのは私だけではないらしい。


それは女王様も変わらないらしく。


今日も元気に不平不満を垂れ流していらっしゃる。


お天道様にケンカを売れるあなたはやはりすごい人です。


それでも、ちゃっかり、折り畳み傘を常備していたらしく、彼女の優雅な巻き髪は雨には濡れていない。


今度は折り畳み傘にケンカを売り始め(不器用なため上手く閉じることができない)、見かねた取り巻きがフォローに入る。


フォローという名の雑用かもしれない。


代わりに折り畳み傘を折っているのだから。


その地味な取り巻きその1は、こうした雑事をすすんで引き受ける。


彼女は女王様に心酔しており、女王様の世話をすることに喜びを感じている。


高位な存在(女王様)の役に立っていることが嬉しいのだろう。


この主従の関係こそがうちの女王様を女王様たらしめているのかもしれない。


「ちょ、まじあれやばいって。」


「なにあれ、さすがにひどいわ。小学生かよ。」


気になって窓下の様子を見ると、窓際の眠り姫がやけに楽しそうに登校してきている。


緑の長靴に、カエルを模した傘を振り回し、カエルの雨ガッパを着て「あめあめふれふれ」を熱唱している。


楽しそうだった。


水たまりに特攻している。


楽しそうだった。


「アイネ、笑っている。」


女王様の言葉だった。


私に話しかけていることも、私が笑っていることも、私は少しの間、気づいていなかった。


私は眠り姫の楽しそうな笑顔を頭に残しながら、始業ベルが鳴るまで取り巻きたちとの時間を過ごした。


国語では、Kと先生の関係性に苦悩し、


化学では、溶液の濃度に苦悩し、


世界史では、カタカナの人名に苦悩する。


苦しくて悩ましい授業が続き、私に安らぎを与えてくれるのは数学のミミズ文字。


それは予定調和のように私を安らかな眠りへといざなう。


昼休みのチャイムが鳴る寸前に目が覚める。


クラスの半数の人間が机に突っ伏していた。


視聴率は50%、地上波放送なら記録的な数字だろう。


私はお茶を持ってくるのを忘れていたことを思い出し、女王様たちに一声かけて購買へとむかった。


購買からグランドと下駄箱が見える。


今朝の眠り姫が盛大に踏んづけた水たまりが見えた。


帰り道、私はスリッパが汚れないようにそっと足先をつけてみた。


小さな水たまりは波紋を広げ、そこに映る空が波立つ、足を離すとそれは少し淀んでいった。


見上げると透き通った空があった。


空気中の塵を雨が吸うらしい。


だから、雨や雪は汚いと言われたことを思い出す。


そういえば、長靴は下駄箱に入るのだろうか。


*********************************


夢を見ている4


私は自分を偽ることや、装うことは苦手じゃない。


よく知らない誰かを好きになることもできれば、嫌いになることもできる。


誰かの悪口をいうのは嫌いだけれど、


誰かの言う悪口をきくのは嫌いじゃない。


好きでもないけれど。


装うことになれてしまった少年は平気で嘘をつき、周囲に構ってもらう。


やがて、周囲が彼の嘘になれてしまった頃に、嘘がホントになってしまう。


昔話では嘘がホントになって誰も救われないけれど、


私の嘘がホントになって私は救われる。


それとも、誰も救われないんだろうか。


いつしか私は呪いが解かれたように


あるいは、魔法にかけらたように嘘がつけなくなって本音を話し出す。


「服の流行の話をしたって私に関係ないじゃない」


「バイトの話だって、私は興味あるわけじゃない」


「あなたの恋愛事情を私に巻き込まないで。あなたを心配するわけないじゃない」


「私は従者じゃない。あなたと一緒にしないで。共感できるわけないじゃない」


「あなたのおもちゃじゃないでしょ、友人をそんなふうに扱えるひとは友人じゃない」


「顔はいいのに、目つきはいやらしい。あたなのためにバレーをしているわけじゃない」


「コーチに媚びを売る道具にしないで。わたしはアイツに気のあるわけじゃない」


「いっしょにいたいわけじゃない」


「私はあなたのことが好きじゃない」


あふれでてくる本音にみんな最初は真っ白な顔して私に向き合う。


けれど、私の本音に向き合って、


いくつかは去っていって、


それで本物だけが残る。


それは楽しそうに笑い合える友達や、


本当に支え合える仲間、


互いに思い合える恋人、


そんな本物だけに包まれて私の人生が再スタートする。


そんな夢をみている。


けれど、夢は夢のままで、私は他人に気遣いながら生きていく。


彼女たちに都合のいいように、


彼にとって愛すべき人であるかのように、


私はツギハギだらけで本物を装い続ける。


教室に戻ると、いつもの席でたむろする取り巻きたち。


焼き増しのような会話。


内容が頭に入ってこない。


それでも、相の手はかかさない。


それしか持ち合わせる言葉がないのだろうか。


「あー、そうだよねー。」


雨上がりの澄み切った空気に、私の声はいつもより響いてみせた。


comicoで「嘘」をテーマに小説の応募があったので、それに投稿しようかと思い書き始めてみたのですが、上手く字数が合わない且つcomicoっぽくないのではと思って応募はやめました。


なにかお題を探す旅にまた出ようかと思います。

とりあえず、異世界転生ものは書いてみたいです!(予定は未定)

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