温泉同好会とピクニック~お嬢様は見た!~
そして、いよいよ待ちに待った温泉タイム!!
キャロル様も誘って温泉を堪能する。
「んはぁぁぁ~…最っ高ですわぁ…」
「はいぃぃ~」
へにゃぁっと蕩けそうな表情になっている私と、私に負けず劣らず蕩けてしまっているキャロル様。
「やっぱり、温泉は最高だと思うのです!」
「えぇ!最高です!イルッターナで温泉と言うと、地獄…のように臭くて高温というのが常識なので、ここに来るのを楽しみにしておりました!」
「まぁ!ここの事はどちらで?」
「ここの食堂に野菜を仕入れているオランジ商会の方が、イルッターナにも色々卸して下さっていて…
私が、花が好きと言った時に城に来て下さった方に教えていただいたのですわ!」
「まぁ!オランジ商会は本当に手広くなさっているのねぇ…」
「エミリア様も何か…?」
「えぇ。ファーブとミィタと三人でお揃いの金の小物を持っておりますわ。」
「あ!ミィタ様の首輪ですね!」
「えぇ!分かりますか?」
「えぇ。大きくなっても小さくなっても伸縮して切れない、素晴らしい技術ですもの!」
「まぁ、ありがとうございます!」
その時、からからと誰かが温泉に入ってきた気配がした。
キャロル様が思わずといった様子で、声を潜めて首を竦める。
「エミリア様?居られますか?」
「まぁ!ウィリシュ様!居りますわ。今日はキャロル様も一緒ですのよ?」
湯気の向こうから心地良い声音と共に、しなやかな肢体のウィリシュ様が顔を出す。
「あ!あの!温泉同好会員のキャロルと申します!」
「まぁ!名誉会員のウィリシュです。どうぞ仲良くしてください。」
「こちらこそ、お願いいたします!」
肩まで髪が伸びて、もう誰も男性と間違えたりはしないだろうウィリシュ様に、少し頬を染めるキャロル様。
カッコいいお姉様ですものね!
分かりますわ~その気持ち。
「もう、どなたも今のウィリシュ様を見て、男性とは言えませんわね。」
「えぇ、リョーマも今では、何故今まで男だと思えていたのか、って言ってくれてますわ。」
「まぁ!ラブラブですわねぇ!」
「ウィリシュ様とリョーマ様…って事は、ライトブルーとブルーラング…?」
何だか茫然としているキャロル様は、そっとしておいて、私達の話は盛り上がる。
「それにしても、ウィリシュ様の御髪はツヤッツヤのサラッサラですわねぇ…」
「そうですか?やはり、領地の温泉が良いのかもしれないですね。」
「まぁ!」
「それよりも、私はエミリア様の体型が羨ましいですわ…」
「あ!それ!私も思います!」
「ですよねぇ!」
突然ノリノリで、キャロル様が話題に乱入してきて、ウィリシュ様と意気投合している。
「えぇ!どうしたら、あんなに綺麗に胸にだけお肉が付くのかしら…」
「分かります。私は肉付きが悪くて。」
「私は…お肉が付くと、全部お腹で…」
キャッキャ言いながら、二人でドンドン自分のウィークポイント暴露大会が止まらない。
時に、女性の方が男性よりもおっぱい星人になるものだ・・・と思う。
なにせ、自分に付いているものだから、そのスペックは良い方が何かと良い。
夜会用のドレスなどは、谷間があった方が映えるし、ペンダントなどもそのトップが谷間にあるのと、デコルテに置かれているのでは印象がだいぶ変わってしまうものだ。
二人の視線を一点に感じる。
視線を落とすと、タオルに包まれた谷間。
これ…?
ぃゃー?これはあげられないかなぁ…?
「コレは、何が詰まっているんでしょう…?どう思われます?ウィリシュ様?」ガッ
「乙女の夢と希望が詰まってますわね。見事ですわよねぇ…キャロル様。」ガッ
右乳をキャロル様に、ウィリシュ様との会話にかこつけてガッシリ掴まれる。
ぅえ?と、そちらに気を取られている隙に、ブツブツと呟くようにガシィッと左乳をウィリシュ様に握られた。
ウニウニと柔らかく握られる感触が居心地悪く、くすぐったくて堪らない。
「アッヒャッヒャ!ダメですわ!コレは私のですわぁ!」
「羨ましいですわ!せめて大きくなる秘訣を教えてくださいませ!
ねぇ?ウィリシュ様も知りたいですわよね?ね?」
「感触と言い、重量感と言い、何でしょう…圧巻ですね…」
「ヒャッヒャッヒャ!ウィリシュ様研究しても分かりませんわよ!
コレは母譲りでございますわぁ!くすぐったいですわっ!」
私の一言を聞いて、温泉に二体の若干白目気味な小島が浮かび上がったのは、見なかった事にした。
確かに、ウィリシュ様のお母様は少女と見紛う容姿ですものねぇ…
キャロル様のお母様は存じ上げませんが、彼女も可愛らしい体型をなさっておいでですから…
そう言えば、隣国王妃はいつまでも年を取らない妖精のような容姿だと伝え聞いた事がある。
リシュカ様系統なのかしら…?
私はぼんやりと星空を眺めながら、心の中で思うに留めておいた。
次の日、私は朝からせっせと、ファーブに用意してもらった材料でサンドイッチを作っている。
私の作ったマヨネーズを一口味見したファーブが、一瞬にして消え去り、お兄様と共にマスタードを持って風のように現れた時には、何事かと思った。
しかし、マスタードに関しては、ファーブにgood jobと言わざるを得ない!
マスタードマヨの魅力に取りつかれたお兄様の魔の手から、なんとかサンドイッチを死守しつつ、私たちは湖に集った。
そこにはもうすでに、殿下、キャロル様、ショーン様、ヒルデ様、人型になった湖の主様と、何故かお兄様とファルがいた。
そして、私とミィタとファーブを入れると、湖の畔に大きな敷布で10人の大所帯のピクニックになった。
「「「うまいっ!」」」
お兄様はさっき散々、ミィタとつまみ食いしていたのに、初めて食べたようなリアクション。
殿下とファルは素直に、目ん玉飛ばしそうだ。
「お…美味しいです…エミリア様はお料理もできるのですね!」
「そうなのですよ!ショーン様!私、昨日のポテトサラダの大変身に、目からどころか体中から鱗が剥がれ落ちる思いでしたわ!」
そりゃ大変だ。
「まぁ!ありがとうございます。よろしければこちらもお試しになって?」
『エミリアちゃん、これは何の肉?』
「鳥肉ですわ!それを、アキツキの調味料である醤油と、蜂蜜で照り焼きにしてみましたの。」
『!!!僕、コレ、初めて食べたけど、もう後50キロ位なら食べられると思うよ?』
多いな…
『やめろ!水の!ワシの分が無くなる!』
『どうせミィタは、朝からつまみ食いで大量に食べてきたんでしょ?』
『じゃが、まだ入るぞ?』
「まぁ、フフッ。皆様ありがとうございます。
たくさんありますので遠慮なくどうぞ。
唐揚げやサラダなども作って参りましたので、ご一緒にお召し上がりくださいな。
デザートに、季節のフルーツなどもありますし。」
「その小さなバスケットのどこから出しているのだ?ファーブ。」
私の紹介と共に、空間拡張をかけたバスケットから、次々と品を取り出すファーブに、殿下が目を剥いている。
「バスケットの中ですが…?」
シレッと答えるファーブは、しかし、殿下が聞いた問いに本気で答える気はなさそうだ。
半眼になっているファルとお兄様は、案外良いコンビなのかもしれない。
って、両方突っ込み属性か…そりゃ気も合うわな。
そんなこんなで、誰がこんなに食べれるの?って程作った料理達は、跡形もなく消え去ってしまった。
殿下とキャロル様は食後、早々にイチャイチャと花畑へ向かってしまい、ショーン様とヒルデ様はお礼を言いつつ牧場へと行ってしまった。
ファルは兄ともっと人気のないところで魔法の特訓をするのだとか…
兄はあれで、結構面倒見の良い教師をやっているらしい。
ちょっとホッとした。
湖の主様も湖に帰り、私達は敷き布を縮めて、やっと三人でまったりする。
私はのんびりと大きなクッションのようになったミィタに凭れかかり、抜けるような青空を眺めていた。
少し遠くから、ギャイギャイと女性同士が喚く声が聞こえる。
チラッと視線をやると、関わりたくない二大巨頭のリリーとアリアネス侯爵令嬢が湖の縁で言い争っていた。
彼女たちの背後は切り立った崖になっており、彼女たちの頭上大分高い所に花畑の周りを囲む防風林が立っている。
私達のいるこちら側は、湖と背の低い茂みになっているが、私たちがのんびりと寝そべっているため向こうからは死角になっているらしい。
しかし、声はよく響く。
向こうの緩くカーブしている崖面に反射した声は、ちょうど私たちのいる所に集約するらしく、思いの外よく聞こえる。
今更動くと逆に目立つため、大人しくやり過ごそうと静かに瞑目する。
あいかわらず、胸に黒い薔薇を挿したリリーと、真っ黒なドレスに身を包んだアリアネス侯爵令嬢は仲が良いのか悪いのか、息ピッタリだ。
「じゃぁ!私が、逆ハーにならなかったのは、アンタのせいって事!?」
「そうよ!私は、入学式でアンタを見て、初めて記憶がよみがえったの!
ってか、私がいなきゃ、アンタ何にも出来なかったじゃない!」
「うるっさいわねぇ!大体、何で、隠しルート一択なのよ!?
女なら、大勢のイケメンにチヤホヤされたいって思うでしょ!?ってか思いなさいよ!」
「逆ハーって、鏡見てから言いなさいよっ!あんたみたいなビッチが選ばれるわけないでしょ!
私は、最初からヘイアン様一筋なの!
何のために一生懸命、エミリアを攻略対象から引き離すようにしてたと思ってんのよ!
ゲームでも今世でも、ずーっとヘイアン様だけを愛してきたんだから!」
「ふんっ!わかってんの?
どうせ、ヘイアンルートに入ったって、あんたは正妃にはなれないんだから!
あんたがエミリアの代役なら、良くて側妃がせいぜいじゃない!
しかも、愛されない数多くの内の一人!」
「それでも良いのよ!私は、彼の心の闇を少しでも癒してあげたい!
あんたみたいにイケメンなら誰でも良い訳じゃないの!
あんたはリリアーナなんだから、正妃を目指せば良いじゃない!
だから、私の邪魔をするのは辞めてよね!」
「あんた、相当病んでんのねぇ…ん?でもそれなら・・・!!
良いわよ。哀れだから、私、あんたがヘイアン様の後宮に送られるまでは見とくわ。」
「っ!!約束だからね!」
「分かってるわよ。私が正妃になるまでに、せいぜい側妃の数を減らして後宮のトップにでも立っといて。」
「ッチ!なんであんたみたいなのに、ヘイアン様を譲らなきゃならないのよっ!」
「だって、私は、ヒロインだもの。」
「ふんっ!」
最後に鼻息を荒く吐いて、アリアネス侯爵令嬢は踵を返すと去っていった。
何やら分からんが、私の代役をアリアネス侯爵令嬢が引き受けて、盛大に何かを企んでいたらしい。
ヘイアン様の名前が出てきていたが、一体なんだったのか・・・
ヘイアン様の名前が出る度に、動悸が…
なんなの?一体。
そうして、二度目の親睦旅行も過ぎ去っていった。




