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癒しと祝福

「まぁ!美味しそう!」

「えぇ、水が綺麗なので、魚も臭みが無くて美味しいですよ。」


川魚を何だか彩りよく、ドヤコヤと調理した一品に舌鼓を打つ。

美味しい!

前世の鮎の様だけど、魚の油が濃厚で、さっぱりした料理なのに、しっかりと味が乗っている。


「ん~!!美味しいですわぁ!」

「それは良かった!他の物も沢山あるのでいっぱい味わってください!」

「ありがとうございます!」


爺は、ブルーラング先輩のワインで酔いつぶれたのか早々に舟を漕ぎだし、自室に下がってしまったため、以降は穏やかな食事を堪能する。


「そう言えば、モルちゃんは、いつの間に家に招待される程、ウィルと仲良くなったの?」

「モ…んんっ。もともとは、私の父と公爵様が仲良しなのですわ。

その縁でウィリー…様とお話しする切欠が出来たのですわ。」


しまった。普通にウィリシュ様と言いそうになって途中で止めたため、変な愛称になってしまったが、見るとウィリシュ様も高速で頷いているためセーフだろう。

ってか、まだモルちゃん呼びかよ!

モルモットになる予定は無い!断じて無い!意地でもナイ!!


「そうなんだよ、リョーマ君。僕が気弱だから、宰相が見かねて指導してくれて、いつの間にか知らない内に配置転換されててね?今じゃ宰相が僕の直属の上司なんだよ!」


脳内突っ込みに勤しんでいた間に、話しの続きを公爵が引き継いでいてくれた。

へぇー!知らなかった!!

横を見ると、ウィリシュ様も知らなかった御様子。

愕然と目を見開いて驚いている。

そんな中で一番落ち着いていたのは、やっぱりブルーラング先輩で、そして、今日の彼はなんだかとってもしつこかった。


「へぇ!では、その縁で婚約者になったのですか?」

「コン…ニャク…?」

「ブフゥ!ち、ちち違うよ!!婚約者とかは祖父が勝手に言っているだけで、僕とエミリアはお友達だよ!!」


あまりにも突拍子もない単語に、脳が追い付いてこなかったため誤変換を起こしてフリーズしてしまった私を横に、美味しい魚料理を吹いて驚いたウィリシュ様が、本気で否定している。

がんばれ!ウィリシュ様!


「そうですわ!私にも4歳になった弟が居りますので、赤ん坊が懐かしいと言いましたら、お披露目に招待していただける事になったのですわ!!」


我ながら、ナカナカのフォローである。

鼻高々にドヤ顔をしていると、公爵ご夫妻の拍手を浴びる。

その様子を普段のふざけた雰囲気ではなく、真剣に真意を見定めるようにして見つめているブルーラング先輩に徐々に居心地が悪くなってきた頃、メイド長だろう恰幅の良い優しげな女性が、タイミング良く真ん丸とした赤ん坊を抱いて入ってきた。


「あ!さぁ!今宵のもう一人の主役!ウィーカだよ!」

「んぷぅー!」


公爵の紹介で見ると、丸々とした赤ちゃんは、ちょうど首が据わった頃だろうか?

しっかりと周りを見渡しながら、手に持ったコロコロと優しい音色で鳴るおもちゃを振りまわしている。

丁度腕に座らせるように前向きに抱かれたウィーカちゃんは、余程お気に入りなのか、そのおもちゃをギュッと握って手放さず、おもちゃごと指にしゃぶりついたり、おもちゃ自体を涎で汚したりと忙しそうだ。


「まぁ!とぉっても可愛らしいですわぁ!」


赤ちゃんは良い!何と言っても癒される!

途端にヘニャンと顔が蕩けた自覚のある私を見て、ブルーラング先輩がギョッとしているのが目の端に見えた。


表情がうるさい!

言いたい事は分かるが、私だって可愛いものを愛でる心はあるさ!!


開き直って公爵夫人に抱かれるウィーカちゃんをデレデレと眺める。


「もしよろしければ抱いていただけますか?」

「まぁ良ろしいんですの?」

「えぇ。まだ、人見知りも出ていませんし、もしかすると次回お会いした時には人見知りで泣いてしまうかもしれませんもの。」


ウフフと笑う公爵夫人はとても人の親には見えない可愛らしい容姿ながら、しっかりと母親の顔をしていた。

柔らかく、ずっしりと命の重みがあるのに、とても軽い赤ちゃんの体を抱いて、汗とミルクの可愛い匂いをいっぱい吸い込んで癒される。


「ん~甘酸っぱい!可愛いですわぁ~。」

「モルちゃんは爺さんにも気に入られてるもんね。」

「ん??んー?そうでしょうか?」

「どうしたの?リョーマ…何か怒ってる…?」

「いや、ウィルのせいじゃない。」


あらあら…怒っている事は否定いたしませんのね?


チラチラと、ウィリシュ様とブルーラング先輩を見ながら、ウィーカちゃんの可愛さを堪能する。

ベッタベタなウィーカちゃんの手をハンドタオルで拭いて、その手をとり、見つめあう。


「御無事の誕生おめでとうございます。

ウィーカ様のこれからの健やかな成長と、幸せをお祈りいたしますわ!」


フワッと温かな風が、一瞬ウィーカちゃんを包み、その柔らかな髪を揺らす。

風が消えると、ウィーカちゃんの周りにキラキラとした光の粒が、無数に舞い降りたのが見えた。


「まぁ!祝福を頂けたのですか?

ありがとうございます。これでこの子は健やかに幸せに過ごせますわ。」


ニコニコと笑うウィーカちゃんを公爵夫人にお返しして、そろそろおねむのウィーカちゃんに合わせて宴はお開きになった。

私たちは部屋へ戻り、ブルーラング先輩は家に帰って行った。

泊まればいいと引きとめた公爵やウィリシュ様に、何やら調べものがあるとか言っていた。

ゾクッと鳥肌が立ったのは気のせいではないだろう。


一体何を調べるのやら…


『エミリアの事じゃろ?』

「…え?なぜ??」

「まぁ、お嬢様程裏表のない方は、探られても痛くも痒くもございませんがね。」


何故かドヤ顔のファーブ。

いやいや。

だから、なんで私が探られる前提なのよ…?


面倒くさいけれど、特に隠し立てする必要もなさそうだし、放っておきますか…






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