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さぁ、弟を見に行きましょう!

時は少し遡る。


「エミリア様!」


弾んだ心地よい低さの女性の声に呼びとめられて、放課後のお散歩の足を止める。

大型犬サイズのミィタも、横にいたファーブも、一歩下がって彼女?まだ、彼か…?が追い付くのを待つ。


「ウィリシュ様!」


と声に出してしまってから、慌てて周りを見渡した。

ここはいつものお散歩コースだが、私が通る時間帯を皆知っている為に、人払いがされたかのように誰もいない。

やってて空しくなってしまった。


だよね~何か知らないけど、私基本的にボッチだもんね~


気を取り直して…


「どうされました?」

「あの…もうすぐある長期休暇なのですが…なにかご予定はございますか…?」


それを聞いて、ちらりとファーブを見る。

フルフルと首を左右に振る彼を見て、私はニッコリと彼女に向き直った。


「特に予定はございませんわ!」

「では、あの…久しぶりに、領地に帰るのですが、御一緒にいかがかと思いまして…」

「まぁ!よろしいのですか?」

「えぇ、親睦旅行の直後あたりに、父から弟が無事に生まれたので話し合おう、という連絡が来ました。

きっと、アノ話だと思うのですが、今までの事があるので、御爺様に会うのがまだ少し…

なので、エミリア様に側にいていただければ、心強いのですが…」

「嬉しいですわ!私は構いませんが、御迷惑ではありませんでしょうか?」

「大丈夫です。

父にエミリア様にアノ事がばれて、お友達になっていただいたと話したら、すごく喜んでくれて、ぜひお連れしなさい、と言付かりまして。

それに、エミリア様は美食家だと窺いました。」

「まぁ、そんな。お恥ずかしいですわ。」

「我が領ではとても綺麗な水が流れ、果物や甘味が豊富で、特に、スィーツ職人の登竜門と呼ばれている程、スィーツに関してはレベルが高いのですが…」

「行きますわ!!」

「お嬢様…」

『クックック。エミリアらしいの!』

「是非是非!伺わせていただきますわぁ!!」


ガッツポーズで、拳を高らかに掲げて宣言した私は、周囲の温度が少し下がった事に気が付いていなかった。


お父様が少しでも休みがあれば、ミィタに乗って帰っておいでと言っていたのをその後思い出したため、「今回の御休みは、お友達のお家に遊びに行ってまいります。次回の御休みに帰りますわ~。」としたためた手紙を連絡鳥で送っておいた。

返事は、何だか滲んでいるけれどまぁ、多分、楽しんできなさいよ~的な?

よく読めないけれど、そんなもんでしょう。


便利。連絡鳥、すっごい便利。


さて、そんな事がありまして、やってまいりましたライトブルー公爵領。

王都の寮から、馬車で4時間。

適度な距離感。そこそこな疲れ!


外から見るライトブルー公爵邸は、何と言うか、公爵に似合わず、すっごく厳つい!

確か、昔、魔物の群れに襲撃された折に、半壊したため、前公爵が二度と被害に遭わないようにと、厳戒な城を建設したとか…

けれど、これは…えーっと・・・要塞?監獄…?

高い壁、刺々しい端々…所々に立っている真っ黒な鎧兜の中には人が居るのかしら…?

今まで通ってきた街の様子がのどかだったから、この異質さが余計に際立っているような…

私が唖然として城を見上げている事に気がついたのか、ウィリシュ様が苦笑いで語りかけてくる。


「御爺様は、男らしい、勇ましいものを崇拝しているような雰囲気があります。

きっとこの城も、男性的で勇壮で荘厳な趣を主としているのだと思います。」

「へぇ…」

『ふむ。確かに、並みの魔物であればこの結界は触れる事すら叶わんだろうな。』


確かにこの城は息が詰まるかもねぇ…


今日のウィリシュ様は、若干ラフな格好で、シャツにズボンと、シンプルが故に余計に中性的な雰囲気が際立ち、その姿はさながら、ズカのお姉様!といった風貌だ。

対して私は、女役…娘役?装飾は押さえてシンプルだが、上品な腰元が広がらないタイプのシルエットの、細身のドレス。


入学前に作ったばかりのドレスなのに、若干胸元がきつくなっているのは何かしら…?

太った…?まさか…


そんな現実にぶち当たっている間に、私達を乗せた馬車は跳ね橋を渡って、槍のシャッターのようなガラガラ音の煩い玄関を潜る。

今回は、女性同士の旅だが、対外的にウィリシュ様は、ウィリアムという男性で通しているので、狭い馬車にミィタもいるとはいえ、男女の二人はちと不味いため、私の付き添いとしてファーブも一緒にご招待を受けている。


「楽しみですわぁ!4年前に私に弟が生まれた時も、とても可愛かったんですの!」

「お嬢様は、子守が意外と上手でした。」

「へぇ!私は一人っ子が長くて、あまり人と接する事も出来なかったので、赤ん坊の扱いなど初めてなのです。色々と教えてくださいまし。」

「勿論ですわ!楽しみですわぁ~!」


そうして、私達を乗せた馬車は、玄関前の石造りのエントランスに辿りついた。

そう言えば、庭にも花とか一本も生えて無かったな。

…完全に要塞だな。


ギギギギギギギギー


お化け屋敷の音を立てて、開かれたドアの内側は意外と明るくて、真っ赤な絨毯が敷かれ、温かみのあるオレンジの明かりが煌々と辺りを照らしている。


「御帰りなさぁ~い、ウィリシュちゃーん!そして、いらっしゃいませぇ~!

お待ちしておりましたわ!エミリア様!」



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