討伐完了
色々と注意!
油断してたら気持ち悪いかも知れないので気を付けて!
「視界が悪いわ。」
私が、自分を中心に足元から、草が燃え広がり一面荒野が広がる想像をすると、ブワッと炎が足元から上がり、すぐに周りの草を炭にして徐々に広がっていく。
ぎー・ぎぎー
先程の低い音とは打って変わって、甲高い警報音が鳴り響く。
村を背にして、炎を追いかける。
ミィタもついてくる。
背後で、村の中に入ろうと、柵を乗り越えんとする影が動き、ツララを、物に貫通させるイメージで陰に向かって投げつける!
ギャー
悲鳴を残して、影は炎の中に落ちていった。
一瞬、影が落ちた部分で、炎の柱が上がる。
「お酒か、油でも持っていたのかしら?」
『なぁ?本当にゴブリンか?』
「え?」
『ワシの知っているゴブリンは、こんなに慎重な奴らではないぞ?
もっと直線的で、火など仕掛けたらすぐに飛び出してきよるぞ?』
ザワザワ・・・ザワザワ・・・
炎の向こうで1メートル位の影が蠢く。
「多い…」
『来るぞ!!』
バッと5匹ほどが炎を飛び越えて一直線にこちらに向かってきた。
私の顔面に向かって…
「ひゃ~!!!」
『なんじゃ!!』
咄嗟に、炎の壁を目の前に立てて、5匹とも焼き潰す。
ものが焦げる、嫌な匂いが辺りに漂った。
風が止んだ・・・
そう思う間も無かった。
後ろから、焦げた河原を伝ってゾロゾロと、地面を埋め尽くすように黒く光る物がこちらへ向かってくる。
「ひぃっ!」
『こ!こいつらは!!ゴブリンではない!!』
「『ゴキブリン!!!』」
そこにいたのは、地上30センチ位の位置を埋め尽くす黒い楕円。
一匹1メートル位の大きさのあるそれが、触覚を立てて、ザワザワと足音を立てて近寄ってくる音だけで鳥肌が立つ。
カサカサと羽か、足か、が擦れる音が耳について気持ち悪い。
視線を上げると、ここにいるものより小さめの子どもと思われる群れが、村に入ろうと、ジリジリと柵に近寄っているのが見える。
「囮!子どもを村に入れるための!」
ミィタが、両手両足に一匹ずつ踏みつけ、一匹に噛みついている姿を横目に、土魔法を使って、柵の下を盛り上げ、金属で覆って登れないようにし、村へ入るのを阻止する。
ツルツルと滑って落ちていく姿に安堵して、一気に外側を切り崩すために、見える範囲全てを炎で囲い込み、燃やしつくすべく、内側へと灼熱を進める。
上に逃げられてもたまらないので、食事をガードしておくハエ除けネットをイメージして、河原を覆い尽くす!
これで一匹たりとも逃すまい。
何匹かが炎を突き破り飛び出てくる。
「させませんわ!!」
燃えたサッカーボールをイメージしたファイアボールを、出てきたやつらに叩きつける。
やつらの体は、サイズの割に、細々とした動きが得意なところは前世と変わらない!
もしくは、サイズ感が重量級の為、下手をするとこっちの方が被害がデカい!
主に精神面での!
ちょろちょろとこちらの攻撃をかわし、足の一本や二本どころか、胴体の半分が吹き飛んでいようともお構いなしに走り回っている。
今世では初めて見たが、前世ではちゃんと雑誌を丸めた物で、見つけ次第叩き潰してきた記憶がある!
こいつを見る度に前世の私は思った。
今なら私、ソルジャーにもなれる…と。
ドキドキと鳴りやまない動悸と、まだいるかもという警戒心。
こいつら、一匹見たら五十匹いると思え!と前世祖母が、素手で握りつぶしながら教えてくれた事を思い出す。
うん。あれは無理。
まぁともかく、神経が高ぶって、逆毛が立つ程の緊張感。
横から、カサカサカサ…と、耳を擽る怖気の走る音を立てながら飛びかかってくるヤツを、ツララで串刺す!
たとえ、聖女と呼ばれようと、こいつらにやる慈悲は、私は持ち合わせていない!!
徐々に動いている影の数が減って来た。
しかし、神経の昂ぶりがそんなにすぐに落ち着いてくるはずもなく…
ドキドキと高鳴る動悸は、今の戦闘のせいか、はたまたこの張り詰めた空気のせいか…
背後の動く気配に、思わずツララとファイアボールを握りしめて振り返る!
『待て!撃つな!ワシじゃ!』
「ミィタ…」
ホゥッと息を吐いて、燃え尽きるまで辺りを見回した。
炎のお陰で、辺りは昼間の様に明るい。
対比する夜空は、普段なら落ちてきそうなほどに大量の星を抱いているが、今夜は漆黒に沈んで見えそうもない。
草は燃え尽き、卵と思しき、30センチくらいの楕円の真っ黒の球も何個も見つけたが、見つけ次第ツララで貫き、炎で燃やした。
巣穴と思われる地面の穴に、火炎放射気を想像して、思いっきりの火力で放射した。
入り口付近に、腹が食い破られた魚が落ちていて、この綺麗な川に魚が居ないのは、奴らが食べ尽くしたからだ、とやっと分かった。
ミィタが疲れたのか、項垂れている姿が視界の端に見える。
いつの間にか、すぐ背後に川があって、キラキラと炎の明かりを反射している。
黒い燃えカスが点々と流れていく川に、フッと違和感を感じた。
目を凝らしても見えない向こうの崖の近く。
「ミィタ!あそこまで行きたいわ!」
ミィタは黙って背を向けてくれる。
やはり疲れたのだろう。
そう言う私も、今は戦いの後の興奮で眠れそうもないが、心の芯から疲れきっていた。
しかし、気になった物を見るために、ミィタに跨り川で対岸の崖に近い所まで飛んでもらう。
流石にここまでは炎の明かりも届かない。
電球をイメージして、サッカーボール状の大きさにして宙に浮かべると、周りが良く見えた。すぐ下の岩に、覆い被さるように女性が一人抱きついている。
「え?」
見ると、明るいピンクの髪に白い肌。瞳の色はピッタリ閉じた瞼に遮られ、全く見えない。
常夏のようなレッドハーツ領だが、川は冷たいのか唇は冷えていて紫に近い。
影になってはいるが、見える範囲だけで判断しても整った顔立ちの綺麗な女の子だった。
多分年の頃は私と同じ位。
寝巻のようなリネンのワンピースに身を包んでいる。
「大変ですわ!」
すぐに彼女を掬いあげて、魔法で水気を飛ばし浄化して綺麗にした後、温かい球体に包みこんで、風船のように宙に浮かべて紐で括って捕まえておく。
「私今、汚いですものね。彼女を汚しては大変。」
彼女をゆっくり眠らせておけるような快適な空間にしておく。
そうして、私は再び、残党がいないかを確認するために、河原に戻った。
空が白んできて、大量に黒い消炭のある、この気持ち悪い河原を渡って、向こう側に渡るのは嫌だ。
横で、静かにミィタがお座りしたので、その背中に静かに跨る。
お互いに疲れきっていて、煤や灰で薄汚れているが、さっと浄化の魔法をかけて、心持だけ綺麗にする。
そのまま自分たち以外、動く物の無い河原に、いつまでも立ちつくして居たくもない。
ミィタは、フワッと浮き上がると、河原を飛び越えて、堤防の様になってしまった、柵の側まで行く。
「ミィタ少し止まって?」
ピタッとその位置で、空中に止まる。
金属を操って、階段と手すりを堤防に付け、村人が川で釣りなどをする時に行き来できるように細工しておいた。
私達が村に入るのと、村人たちが、青白く光る荷車を引いて村に戻ってくるのとがほぼ同時だった。
村長に奴らを確認してもらうために、堤防に皆で上る。
皆といっても、女子供達は見たくないのか、先に家に戻り、男衆だけが付いてきた。
村の端に着くと皆、見上げる程の堤防の上に、ちょこんっと柵が鎮座しているのを見て、一瞬呆けていた。
その後皆で堤防を登りきると、そこには、一切動く物の無い、黒い河原が広がっていた。
「雨でも降れば、これらはそのうち流れますわ…」
魔法で流してしまってもいいのだが、もう何もしたくない。面倒くさい。
そんな事を考えているなどおくびにも出さず、ニコニコと村人や村長の反応を待つ。
「あぁ!!ワシらの長年の苦悩の元を取り除いていただいて!!!
聖女様には感謝してもしきれません!!」
プルプルと震えながら叫ぶ村長の言葉に、村の男達が歓声を上げて大喜びしている。
しかし、誰一人、堤防を河原側に降りようとする者はいなかった。
その後、ギルドカードを出し、それに村長が触れると、ギルドカードが銀色の光を放つ。
裏面を見ると、色々と書いてあった下に、1050Gと記録されていた。
「あら?250金ではありませんの?」
「いやいや!それだけではこちらの気が治まりません!
なので、昨夜村人総出で採ってきた光茸を受け取っていただこうと思っておったのですよ!!」
「まぁ、こんなにたくさん。ありがとうございます。」
おぉ。
光茸とは、大きいものになると1つ20金する物もある程の、超高級品だ。
その味は然る事ながら、食感、香り、見た目まで、上流階級の者たちを魅了して止まない。
どうやら、頂いた光茸も金換算してくれるらしい、律儀なギルドカードに笑みが零れる。
光茸を大袋に詰めて、まるで聖なる夜に一人で世界中にプレゼントを配る爺さんの様になった村長さんが、それを私に押し付けるように渡して、ニッコニコと手を振る。
村中の人々が家から出てきて、村の入り口に立ち、ニコニコと手を振って見送ってくれた。
追い出されるようにして村を出た私とミィタと彼女は、一路ギルドまで戻る事にした。
予想はできたかと思いますが、大丈夫でしたでしょうか・・・?
まぁ環クオリティーです。




