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ギルドの伝統

おぉ!初っ端から、3つの飛び級スタート!

ラッキーと感激していると、ファーブの焦った声が聞こえる。


「お嬢様には経験がありません。やはり、Gランクから地道にとはできませんか?」

「申し訳ありませんが、D以下は、魔力の無い方向けの採取や狩猟訓練を目的としております。

Dランクは、初級の魔力を使用した討伐などですので、Eランクよりむしろ難易度は下がりますので、ちょうどよろしいかと思います。」


まぁそうね。

険しい道なき道を進んで薬草の生える湿地まで行く事も、魔法を使えば朝飯前ですものね…

そうして、発行された私のギルドカードは、シルバーの綺麗な物で、ファーブの黒い物とは少し異なる。

表面には私のデータが色々入っていた。


エミリア・バイオレット

14歳・女

ラング学園学生

Dランク


へぇと感心して裏面を見る。


魔力:56000


火適性:Max

水適性:Max

土適性:Max

風適性:Max

金適性:Max

光適性:Max

闇適性:Max


体力:250

知力:500


スキル:記憶 知識 呪付加

特化:聖獣の寵愛


こんな事を堂々と記入して良いものなのか?

これって、私のウィークポイントとか見たらすぐに分かるって事なんじゃないの?

ファーブに聞くと、ファーブは頭の上に?マークを沢山飛ばして聞きなおす。


「私には、表面に、名前と年齢とランクと所属。裏面には、今までの謝礼金額しか書いていないように見えますが・・・」

「あら?」

『そうじゃな。エミリアには、光魔法の上級も使えるから見えるんじゃろうて。

それは、ここの職員でも見れん情報だの。

カードに記録は、光の上級魔法が練り込んである特別な機械でも使っているんじゃろう。』

「なら、安心ね。」

「なるほど…」


カードを大事に仕舞って、次に掲示板の前へ移動する。

貼ってある依頼書をじっくり見ていると、ダンッと高い位置に毛むくじゃらのふっとい腕が叩きつけられた。


「おいおい!お嬢ちゃんよ?ここにはここのルールってもんがあってな!?」

「ルール?ですか?」

「そうだよ!」

「おい!デーブやめろ!聖女様だぞ!?」

「んなもん関係あっか!俺らのシマに無断で入ったんだ!

キチンとけじめつけてくんねぇとな!例え、聖女さんでもソレはかわんねぇよ!」

「無断??」

「ここのギルドってのはな!?

師匠の紹介がある弟子以外が登録する時は、俺ら先輩からの洗礼を受けなきゃいけねんだよ!」

「何故ですの?」

「私がAランクですので、師匠の紹介という条件は満たされているでしょう?」

「うるせぇ!ここの登録者が師匠な場合だけだ!!それが、ここの、伝統なんだよ!!」

「へぇ~」

「でだ!その伝統ってのは!だ!」

「あぁ、続けるんですのね?」

「初めての依頼は、先輩が選ぶんだよ!!」

「あら?そうですの?」

「意外と簡単だと思っただろう?」

「どうかしら?」

「まぁ、お嬢ちゃんは美人だしな?俺も、鬼じゃねぇ!コレにしてやるよ!」


そう言って、でっかい芋虫のようなデーブの指が、上の方に貼ってある一枚の依頼書をちぎり取った。

まるで、その伝統・・用にとってあったかのように、一つだけポツンと隔離されるように貼ってあったそれを見てみる。


急募!Eランク以上!

ゴ ブリンの群れ退治!

謝礼金 250金!

レッドハーツ領 辺境ジン村


と、書いてあった。


「余程の大群ですのね?250金だなんて。」

「おかしいですね。ただのゴブリン退治に250金も払うものでしょうか?」

「がはは!嫌なら、ここで依頼を受けるのは諦めるんだな!」

「このジン村は、国境の川辺にある村で、綺麗な川の水で豊富な食料が取れるため、レッドハーツ領の食糧庫とも呼ばれる豊かな村です。」


受付のお姉さんが、説明を引き継いでくれる。


「分かりましたわ。それを受けましょう?」

「お嬢様!」

「そうか!グッヒヒヒヒ!」

「だって、どちらにしろ、これを受けない事には、ここでの依頼は受けられないのでしょう?

それに、250金あれば宿代を払ってもおつりがくるわ?」

「ですが…」

『ファーブ。万一があれば、ワシもおるしな。』

「そうですね…」


そう言って、私達はそのゴブリン退治を引き受けたのだった。


「あぁ!そうそう!そいつら、夜行性だからな!夜行けよ!」

「夜・・・ですの?」

「そうだ!夜でないと、一匹でもとり逃がしたらまた増えっからな!」

「では、こちらから連絡しておきますので、今夜退治していただけますか?」

「え、あ、はい?」

「でしたら、地図はこちらになります。こちらの成功の可否は、村人の確認となりますので、退治終了しましたら、村人に確認してもらい、その方にギルドカードに触れていただいて下さい。

その方の魔力が確認できた段階で終了とします。」

「わかりましたわ。」

「おい!後は、この、Aランクの兄ちゃんはここに残ってもらおうか!」

「はぁ!?貴様!!」

「「やめとけ!デーブ!!」」

「なんだ?お嬢ちゃんがAランクのお前さんに頼らないようにだろうがよ!

不満か?あぁ?なら、さっさとここから帰るんだな!

だが、ここから出た瞬間に、俺の伝手で、全領のギルドに腰抜け聖女様の噂を流すから、もう二度と依頼を受ける事は出来なくなるがな!グッヒヒヒヒヒヒ!!」

「「おい!」」

「ぐっ!」


デーブの声音には、本気の色が乗っている。


きっと彼はやるだろうね。

そうしたら、私は薬草採取の依頼すら出来なくなるだろう。

ファーブもそれが分かるから、言葉を飲み込む。


「分かりましたわ。」

「お嬢様!」

「ファーブ。私はミィタと一緒に行ってきますわ。日が昇ったら帰りますので、その頃に、お風呂に入れるように、ルビーのハート亭で準備してくださいまして?」

「……はい。お気をつけて。」


苦虫をかみしめた様な顔で、綺麗なお辞儀をしたファーブをその場に残して、私とミィタはギルドを出た。

ファーブには、私の「こんな人が居るギルドに泊るなんてナイわ~」という、本音は伝わったはずだ。

デーブも腹立たしいが、絶妙なアシストをする受付のお姉さんにも腹が立っていた。


まぁいい。

さっさと退治しに行こう。

地図に従って、ミィタに跨ってジン村を目指した。


「ようこそおいで下さいました!」

「奴らを退治して下さるのが、聖女様だなんて!!」

「私達は邪魔をしないように、村総出で、今夜はあちらの山に光茸捜索に向かいますので!

聖女様は安心して大騒ぎしていただいて構いません!!」

「まぁ、ありがとうございます?」


思いの外近かった村に着くと、スンっと詰まった鼻が通るような清涼感のある香りに村中が包まれていた。

その入り口で村人総出で、引き車なども準備してのお出迎えを受けた。

聞くと、今夜は村人が誰もいなくなるから、遠慮なく魔法をぶっ放しても良いよって事らしい。


「ようこそお越しくださいました。聖女様。何のお持て成しもできませんで恐縮でございますが、せめて、手土産に我が村の超高級特産品である光茸をお持帰り頂きますので、何卒、250金しかご用意できませんが、よろしくお願いいたします!

地形なども多少変わりましても問題ありませんので!!

あちらの!川の方に群れで生息しています!」


眉毛と髭が、フッサフッサと立派すぎて、顔がほとんど鼻しか見えない、村長と思しき老人が引き車の上で子どもらと座りながら挨拶してくる。

最高級の笑顔で村人を見送って、私とミィタは、村長が指さした川の方を目指した。


川辺には、ゴツゴツした岩と、背の高い草が生い茂っており、村との境には竹のような木を組んだだけの柵がしてある。

まだ少し日があり、夕日に照らされた川は結構な水量と勢いで、底の石まで見える透明な水が流れているが、何故か魚は一匹も泳いでいない。

対岸は崖の様になっており、20メートルは高い所に、やっと草が見える。


「この草地に住んでいるんでしょうね?」

『多分な?』

「行きますわ。」

『うむ。』


柵の切れ目から、ガサッと足を踏み入れる。

視界の端に、何か動く黒い影が見えた。


ぎ・ぎぎ・ぎぎぎぎぎ


気持ち悪い音が聞こえる。

警戒しているのだろうか、空気がピリピリしてくる。




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