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試験

次の日、学園へ向かう私とミィタの前に、昨日の蛍光トリオ+リリーが、真新しい糊の効いた制服に袖を通した姿で、私の前に立ちはだかった。


「今日から、テストですわね。」

「えぇ。おはようございます。」

「えぇ。エミリア様。私、マリーン・アリアネスと申します。

今日からのテスト、私、貴女には負けませんわよ?

良いです事?賭けをいたしましょう。」

『なんじゃ?唐突に煩い奴じゃなぁ…』


私の肩の上で、二度寝を決め込んで丸まっていたミィタが、ヌゥっと起き上がって文句を言う。


「まぁまぁ。ミィタはゆっくり休んでいて。賭けですか…?」

「えぇ。私が勝ったら、生徒会のメンバーや、王太子殿下、そして、グリーン君達に極力近づかないようにして頂きたいのですわ!」

「あら…」

「貴女が彼らの婚約者の座を狙っている事は分かっていますわ!!

私が彼らを守るのですわ!」

「え~…」

「あたしも!!その賭けに乗ります!!」

「リリー…」


また、面倒くさいのが束になってやってきた…

ってか、私も関わらないでいいのであれば関わる気は無いけど、あっちから寄ってくるんだもん…


ってか、良いのか?リリー?

あんたは知ってるだろう…

前世の一般教養を持ち合わせている事は知らんとしても、あの最強の淑女であるマリア先生に育てられた私としては、この世のテストなんて、鼻くそほじってても出来るレベルなのだが・・・


だって、入試が掛け算使えば3分で終わってしまって、残り47分寝る事も出来ず、固まってたんだから…


「え~と、それで皆様の御気が御済みになられるのでしたら、分かりましたわ。」

「ふっ!その言葉!お忘れになりません事ね!!」

「お嬢様の悪巧みもこれでおしまいですわ!!」

「お~ま~え~はぁ~!!」

「ギャーー!皆様!行きましょう!!」

「「「キャーーーー!!」」」

「あら?ファーブ。」

『お前の妹が、同じような奴とつるんで面倒な事ばかり起こしとるぞ…』

「申し訳ありません。」


そんなこんなで始まった試験。

初日は、算術学と言語学、社会学、理科学、魔術学。

二日目は、体操服に着替えて、剣術、馬術、魔力測定など、体を動かす試験全般。

そうして、最終日は、男性陣は剣術、体術など。女性陣は、淑女学、刺繍や嗜みなど、きっと3年になった時の進路選択の参考にするためのものであろう試験。


全ての試験が終わり、一日採点日を挟んで、その次の日に結果が張り出される。


「エミリア様」


試験の結果を見に行こうと、廊下を歩いていると後ろから声をかけられる。


「あら、モンティーニ先生。お久しぶりでございます。」

「お久しぶりです。貴女のお陰で、今年の女生徒の制服着用率が高くて助かります。」

「私の…?」

「えぇ。例年、生徒の中でも貴族の女生徒は、制服を“他人と同じ服など着たくない!”等と言って、座学はドレスで、体術は不参加で過ごされているのです。」

「まぁ…」

「ところが、今年は、生徒の中で最も序列の高いエミリア様が、制服を着用し、しかも、二日目の体術試験にもキチンと臨まれて、殿下や他の公爵家の御令息に引けを取らない結果を残し、それに彼らが敬意を示したため、今までドレスを着用していた上級生の女生徒までも、制服を着用するようになりました。」

「そんな、私のお陰など恐れ多いですわ。」

「その謙虚さも、王太子殿下や各公爵家子息を惹きつけるのでしょうね。」

「まさか…ウフフ。」


モンティーニ先生の冗談のようなお話に笑いが漏れる。


「そこが貴女の美徳ですわ。」


嬉しそうに笑いながら、先生は去っていった。

モンティーニ先生のお陰で、ファーブが言っていた女生徒はほぼドレスだという情報と、実際との誤差を理解することが出来た。


つまり、皆、公爵家子息達や、殿下に見染められたいためにドレスを着ていたが、私が制服を着て、彼らとよく話していた為、制服の方が受けが良いと思われた、という事だろう。


気を取り直して、再び廊下を歩きだすと、また、いつぞやのデジャヴの様に立ち塞がる4人。


『来おったか…』

「今日が結果ですわよ!御覚悟はよろしくて!?」

「…えぇ。」

「あたしも楽しみっ!!」


彼女らに、周りを囲まれてゾロゾロと連行される。


「「「「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

「あら?」

「おぉ、おめでとう。エミリア嬢。」

「まぁ、ディーン様。ありがとうございます。」

「エミリア様。」

「あら、グリーン様。」

「あ、ぼ、僕も、ショーンと…」

「はい。ショーン様。」

「あ、ありがとうございます…あ、あの!お、おめでとうございます。」

「まぁ!ありがとうございます。

そうおっしゃるディーン様、ショーン様も、一位二位ではないですか。おめでとうございます。」

「ありがとう。」

「あ、ありがとうございます。」


結果はもちろん、女性陣は私が全てにおいて、満点で一位。

四位のリリーはまだ惜しかったとしても、アリアネス公爵令嬢は、十五位と非常に微妙な位置…

何とも言いようがない。

どうしてあれ程までに自信満々だったし…?

そこまで話して、横で四つ、組体操のピラミッドの土台の様になっている女生徒を、チラッと三人で眺める。


…どうする?

…放っておきます?

…え、え?いや、流石に…それは…

…でも…付き合いたくありませんわ…

…私もだ。

…僕もですよ…

…ここは、が来るのを待つしか…

…いや。呼ぼう。

…どうやって?どこにいるかも僕らは知らないよ?

…コレを使う。


そう言って、殿下の腕の上にいつから居たのか、真っ白な羽に細長い嘴と足を持ち、フサッと丸くなった胴体に、長い首を折りたたんで頬まで埋もれている、前世でのサギを二回りほど小さくしたような鳥が留まっているのを見た。


「コレは?」

「あぁ。エミリア嬢は初めてか。」

「僕も知ってる。コレ、連絡鳥だよね。僕も実物を見たのは初めてなんだ。

こんな形なんだね…」

「連絡…帳…?」

『鳥じゃ。』

「字の違いなど…しかも口頭なのに…ミィタ細かいですわ。」

『ふっ。嬉しいくせに。』

「当たり前ですわ!ありがとう。ミィタ。」


前世ネタが通じるというのは何だかとてもありがたい。

キョトンとしている二人の側で、ミィタを肩からおろし、ギュッと抱きしめてそのまま抱えておく。


「連絡鳥は、学園内特有の魔力の鳥で、相手の魔力を識別して目的の人物に手紙を届けてくれるんだ。

学園外でも、例えば自分の親など、魔力の波動が似ている相手ならば、手紙を届ける事が出来る。

だが、学園内の様に濃密な魔力でないから、迷子になる事もあるがね。」

「へぇ。知りませんでした。」

「まぁ、学園内限定に近いからね。」

「あ、そうか。連絡鳥なら、相手の魔力が分からなくても、学園に在籍している者の魔力を勝手に辿って、手紙を届けてくれるもんね。」

「では、早速呼びだしましょう?」

「あぁ。」


そう言って、殿下は、ポケットからメモの切れ端を取り出し、結果を貼りだした教室に来るように、と書いて、連絡鳥の脚に括りつける。

連絡鳥はフワッと音もなく飛び上がり、壁へ吸い込まれるように消えていった。


「さて。どうするべきか…」

「えぇ。」

「そうですね。いくら彼を呼んだからと言って、この状況のまま置いておくのも気がひけますし…」

「えぇ…」


バタバタバタと、廊下を走ってくる音が聞こえる。


『意外と速かったの。』


キョトンとしたミィタの声に、三人で頷く。


「何かあったか?」


ドアが開いて、焦った表情のファルが顔を覗かせ第一声がそれだった。

彼の肩には、まだ連絡鳥が留まっている。

煩そうにチラッと横目でファルを流し見た後、もっと深く潜るように、顔を羽毛に埋め込んでいく。


「こちらですわ。」

「僕達にはどうしようもなくて…」

「すまんが、何とかしてもらえんだろうか…」


私達三人の申し訳なさそうな顔をみて、一瞬顔をしかめたが、私の指す方を見て納得した顔になった。


連絡鳥は、役目は終わったとばかりに、ファルの肩からフワッと飛び上がり、殿下の腕に留まって、光の粒になって消えてしまった。

その様子はとても幻想的で、視界を外れた所で繰り広げられているテンヤワンヤを無視して、その光景をいつまでも眺めていた。





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