式も終わり
すると、低く穏やかだが、威厳のある声音の男性が二人を宥めるために割って入ってきた。
「まぁまぁ、二人とも。」
「父上!」
「やぁ、ディーン。寮暮らしはどうだい?」
「はい。万事筒が無く。
ところで、父上がいらしたのなら、来賓のあいさつは父上になるのでは?」
「あぁ、今日はお忍びだから…ね?
貴女がエミリア嬢か。初めまして。国王です。君の噂はクリスからよっく聞いているよ。」
お忍びって事は、国王って大々的に言わない方がいいんじゃないのかな?
分からないけど、国王って名乗られたので、家臣の礼をとる。
スマンが、まだ呼吸が整って無いので、挨拶はもうちょっと待って…
「あぁ!ジョークだったのに!」
「お前のジョークは洒落になって無いな。可哀想にエミリア。
こんな奴に家臣の礼何て勿体ないぞ!」
父は若干、不敬だと思うが・・・
「そうだよ?ジョーイおじさんって呼んで欲しいな?」
別に良かったらしい。
何かやっぱ、色々と緩い気がする~
頭を上げると、、おほぉ~と威厳のかけらもないため息をついた国王のジョーイおじさんと目があった。
「いや~ホント、クリスが、自慢するのに見せてくんないからさぁ~
気になっちゃって、気になっちゃって。
でも、ホント、美人さんだね~。僕の従妹のローズも美人だし、性格はアレだけど、クリスもカッコいいしねぇ~
ホント、うちのディーンのお嫁さんに来てくんない?」
「んな!ち、父上!?わ、私には、キャロル姫が!!」
「え~だって、隣国とは今は穏便だしぃ~
キャロル姫も可愛いけど、彼女ちょっと何か・・・こう…暗い?っぽくない?」
何気に失礼だなジョーイおじさん。
「まぁ、そんな!
私隣国のキャロル姫のお噂は耳にいたしますが、聡明で美しく、慈愛に満ちた方だとか…?」
「そうなんだ!キャロルは優しいし、物知りだ!私の自慢の婚約者だ!」
「まだ、候補だよ~?」
見た事は無いが、キャロル姫の噂を話すと、途端に饒舌になるディーン殿下。
良いじゃないか。
結婚するのは本人なんだから、好きな人と一緒になれば…
慌てて、突っ込むジョーイおじさんを尻目に、私の家族や、公爵家子息たちはニヨニヨと、真っ赤になって恋人の自慢をしている殿下を温かく見守る。
「まぁ!私もぜひお会いしてみたいですわ。
隣国では、珍しい香辛料の効いたお料理があると窺っておりますの!
王女様ともなれば、美味しいお店なども良く御存じでしょうし!」
「おぉ!それはもう!
キャロルは、美味しい店から、最近では香辛料の調合にも見識を広めているらしいからな!」
「まぁ!素晴らしいですわ!!」
『ふむ。キャロル姫のお薦めの店で一度、ワシも異国料理を味わってみたいの。』
「あぁぁあ…」
何やらジョーイおじさんが喚いているが、私とミィタの美味しいもの探訪と、殿下のキャロル姫自慢は止まらない。
『のぉ。ジョーイおじさんよ。』
「はいっ!?何でしょう?聖獣様?」
『なぁに、好きな者と添い遂げる事が、息子の幸せだろうよ。
落ち着いたこの時代であれば、ワシらを無理に取り込むより、父親として息子の幸せを優先してやれ。』
「………はぃ。」
ミィタがジョーイおじさんの前に座り込み、しゃがみ込んだジョーイおじさんと話し込んでいる間、私と殿下はカリーの話で大いに盛り上がっていた。
そこにショーン様もおずおずと加わってくる。
「ぼ、僕も、一度隣国のカリーを食した事があります。」
「まぁ!どうでした!?」
「喉が焼けるかと思う程、辛い?熱いのですが、それだけではなく、何だか表現できない様な旨みがギュッと詰まっているのです!」
「素晴らしいですわ!!」
『あぁ!ワシも是非とも食べてみたいの!!』
「あの~」
にこやかに盛り上がる、国王含む、公爵家の面々に、のほほんとした声が掛る。
皆で振り返ると、ニコニコしたシテルヨー先生が立っていた。
「はい?」
父が代表して返事をする。
「もうホームルームの終わったクラスもあるのですが、ここに1年Aクラスの担任と生徒三人が居ると、Aクラスだけいつまでも終わらないのですがね…
続きは、ホームルーム終了後にカフェの方で話されては…?」
「おぉ!それはすまなかったね。」
「いえ。生徒会役員は、特権があるので授業不参加は見逃されるのですが、一年の今はそんな特権もありませんし。何と言ってもエルリック君は担任ですしね。」
「まぁ!お兄様が担任ですの?心強いですわ!」
「あぁ。俺が居るから、大丈夫だ。」
「では、さっさと教室へ行ってくださいね。」
「・・・はい。」
何だろう?一瞬、シテルヨー先生から流れ出る冷気のような幻覚が見えた様な…
お兄様が、怯えている…?
視線を合わさないで、返事をするお兄様を尻目に、シテルヨー先生は淡々と行動していく。
「で、では、エミリア。ローズと共にカフェで待っているよ!」
「わ、私も一緒に待っているとも!」
「ちっ!お前はもう城に帰れ!」
「やだ!もう少しサボる!」
「お静かにしてくださいね?」
「「…はーい。」」
どこまでも賑やかしい、父とジョーイおじさんは、シテルヨー先生に首根っこを捕まえられて、引き摺られるように退出していった。
意外と、シテルヨー先生、最強?
そういえば、あのストロウ先生もガッチリ掴まれて逃げられて無かったな。
「よし。んじゃ、王都の旨いもん屋は俺らが案内してやろう!次の休み、開けておけよ?」
「まぁ!楽しみですわ!ありがとうございます。レッドハーツ先輩。」
「では、またな!」
「僕も一緒に行くよ。またね。モルちゃん。聖獣様。」
「え、えぇ。また…」
「さ、さぁ。ぼ、僕達も行こうか?」
「そうだな。ところで、ショーン・グリーン?」
「はい。」
「貴様には婚約者はいないのか?」
「ぼ…僕、あんまり女の子と、話した事が無くて…」
「そうか。まぁ、グリーン公爵ならば大丈夫そうだがな。では行くか。」
そうして向かった教室では、リリーや、さっきの蛍光信号トリオに睨まれて、大変居心地が悪かった。
ファルは、相変わらず私を見ると何か言いたげな顔をするのが気になる。
その後、ほぼライトブルー先輩が話した事を、お兄様が再度説明し、終了した。
その後は、またお父様達と、先程のやり取りの繰り返しだった。
割愛するが、この日は夜まで時間がとても短かった、という事は言っておこう。




