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挨拶

Aクラスの椅子軍を見つけたが、自由席なのか特に指定が無かった。

目立たないように(というか、寝てても気付かれないように…)後ろに座りたかったのに、殿下は構わずズンズンと進んで、真ん中一番前の一番目立つところにエスコートされてしまった。


「え・・・?」

「すまない。私は今日、新入生代表の挨拶を任されていて、私の席だけ指定なのだ。

エスコートして連れてきてしまったが、私の横で我慢してもらえないだろうか?」

「我慢なんて!御気を遣わせてしまいまして、申し訳ありませんわ。

では、横に失礼いたします。」


その後、教師に怒られたのか、ブスくれた蛍光信号トリオと、同じく不貞腐れたリリーをぶら提げた無表情のファルが、Aクラスの席に着き、同じクラスだったのか…と、げんなりしたりしている内に、式典が始まった。


最初に登壇したのは、コロッコロの雪だるまに、魚介一家のお父さんの髪を付けたような、ニコニコと人の良さそうな、おじさんだった。


「皆さま、初めまして。

私、このラング学園の教頭をしております。ホワーット・シテルヨーと申します。

本日は・・・・」


しまった、ほわぁーっとした、シテルヨー先生のありがたいお言葉を、名前のインパクトに負けてほとんど聞いてなかった。


ハッと気がつくと、壇上には、先ほどクラスを聞いた受付に座っていた綺麗な男性?三人組が立っていた。

舞台中央から、レッド!ブルー!ライトブルー!と何とか戦隊の色合いにしては、色々とオシイ組み合わせの3人組。


レッドは、さっきは座っていたから気付かなかったが、一番背が高かった。

そして、ライトブルーは、ブルーの肩ほどまでの身長しかなく、やっぱり性別がわからんかと思ったが、ズボンをはいていたので、男性だということが分かった。


レッドがマイク前に立つ。

すると、黄色い声援?悲鳴?が到る所で上がり、それに驚いて、男子生徒と一緒にビクゥっと飛び跳ねてしまった。

視線を、壇上に戻すと、レッドのニヤリと笑った目と目が合った。


「さっきも言ったが、改めて!!おめでとう!!

生徒会長を任されている、騎士科4年 フォード・レッドハーツだ。

諸君は、これからこの誇り高いラング学園の一員として、仲間と手を取り合って色々な事を学んで、吸収していって欲しい。

我々も精いっぱい手を貸すので、何か困った事があったら遠慮なく先輩方の胸を借りてくれ!

そうして、3年の進路選択時には、騎士科の事を少しでも念頭に入れてくれれば嬉しい!」


おぉお~!!


赤い人はやっぱり熱い人だったらしい。

最初はおとなしく座っていた男子陣が、感化されてか、地響きのようなどよめき?歓声?が響いて来て、鳥肌が立った。

ってか、レッドハーツって公爵家じゃないか…


お、次は殿下の新入生代表の言葉だ。


「………

 新入生代表 ディートリヒ・ハインツ・ヴィケルカール。」


普通だった…

いやー、爽やかな、新入生代表の鑑のようなキチンとした挨拶だった。

殿下が壇上から降りる時、きゃぁー殿下ーとか、アイドルの出待ちみたいな叫び?声援?を受けていたが、ここのイケメンたちは、色々と大変だな。


きっともう既に沢山の女生徒が、彼らを討ち取らんとロックオンしてるに違いない。

そんな餓えた肉食獣のような女生徒と張り合おうとする方が間違っていると思う。


ん?あら?妙な事に気が付いた・・・

って事は・・・なんて事を思ってたら、水色の青年がマイク前に立つ。


「生徒会書記の文官科3年のウィリアム・ライトブルーです。


えー…今、全力で校長を捜索中ですので、校長からの挨拶の前に私からは、今後の予定をお話しさせていただきます。

この後、教室内にて、諸々の説明を受けていただきます。

明日から今週中は、種々のテストを受けていただき、来週は本格的な授業に入る前の団結会として、親睦旅行があります。参加は自由ですが、この機会にクラスメイトや先輩方と親睦を深められるよう、奮って参加していただければ、と思います。

さて、校長が見つかったようなので、ご挨拶いただきます。」


やっぱりそうだった公爵子息の、ライトブルー先輩の視線の先を辿ると、そこには、ニッコニコしたシテルヨー先生に、ガッチリと二の腕を掴まれた無精ひげを生やした厳つい男前が、不承不承といった様子でダラダラと壇上に引っ張り上げられている。


ちょい悪親父とでもいおうか、呪いをかけられた某海賊さんのような、ドロッとしたちょっと長い濡れたような暗い髪。

第三ボタン位まで肌蹴た黒いシャツの胸元からは、逞しく盛り上がった浅黒い肌の胸筋が覗き、鋭い目つきは色っぽく細められてはいるが、威嚇するように睨んでいるだけだと思う。


「あーんー…校長のジャック・ストロウだ。

入学おめでとう!頑張れよ!じゃぁな、解散!」


それだけ言うと、逃げていってしまった。

女生徒達の、感嘆の吐息があちこちで上がっていた。


これは・・・アウトに限りなく近いものを感じる・・・


『セーフじゃ。』

「……本当に?」

『あぁ、ワシらは元ネタを知らん。』

「ん~…ならセーフですわね!。」

「エミリア嬢?もう教室に移動するよ?」

「あ、はい。行きますわ。」


肩の上で大人しく、存在感を消していたミィタとコソコソと話していたが、殿下に呼ばれて振り返る。

もうそこそこの人が移動しようと立ち上がり、先生方が誘導していた。

殿下と私も続こうと順を待っていた時、後ろから声をかけられた。


「王子!エミリア様!」

「殿下。」

「お、エミリア嬢ちゃんもいる…」


そこには、赤と青と緑が居た。

あら?水色は?


「あぁ、ウィリアムは逃げちまった校長を再び探しに行ったよ。

ついでにサイン貰わなきゃならない書類があったのに、あんのじじぃ。

逃げ足速いんだよ。」


良い笑顔で、人の思考を読んで、饒舌に答えをくれるブルーラング先輩。


「何故…?」

「ん?そりゃ、モルちゃんの気持ちくらい分からないと実験しても、分かる事のが少ないからだよ…」


一番聞きたくない答えが返ってきた。

しかも、モルちゃんって…モルモットじゃねーよ!

視線を逃がした先に、緑の髪と瞳を持った優しげな男の子が立っていた。

彼も新入生だろうか?


「あぁ、彼は、ショーン・グリーンだ。

エミリア嬢は、公爵家のパーティ等には出てこなかったから初めてだな。」


殿下が、私の視線に気が付いて、紹介してくれる。


「は、初めまして!グリーン公爵家二男のショーンです。

お、同じ、Aクラスです、ので、これから、よ、宜しく、お願いします。」

「まぁ、初めまして。エミリア・バイオレットと申します。

公爵家のパーティーなんてございましたのね。

私、存じ上げませんでした。」

「ま、まぁ、バイオレット宰相が、大切に、し、仕舞い込んだ掌中の珠だって、皆、う、噂してました。」

「まぁ、ウフフ。

でも、確かに私、ライトブルー公爵にしか、お目通りした事がございませんわ。」


どもりながら、真っ赤になって、それでも話しかけてくれる姿勢についつい優しい笑みが零れる。


思い出していた所で、それを遮るように、覚えのあるサバ折りにいきなり襲われる。


「エミリアァ!立派になってぇ~お父様は、今日お前に会える事を心待ちにしていたというのに…

早速、王や公爵共の息子どもに囲まれてしまって…

さぞや、怖かっただろぉぉぉぉ~う!!」

「ぐ、ふ…」

「お…おぃ、宰相よ…エミリア嬢が…」

「おぉ!これは王太子殿!うちのエミリアが何か粗相でも?」

「いや。あの…」

「ならば、親子の触れ合いに口を挟まんで頂こうか?」


初めて父親の威厳のある姿を見た気がするが、如何せん死にそうな状況なので、感動も何もあったもんじゃない。


「おい!こら!人の妹をサバ折りで殺そうとするんじゃねぇ!」


ベリッと父親が剥がれて、温かい腕に包まれ、意識がはっきりしてくると、目の前にいたのは父によく似ているが、もっとワイルドな兄だった。


「はぁ…ありがとうございます。お兄様。今のはブランクがあった分、危うかったですわ…」

「何を言うか!私の娘だ!エルリック!」

「うるせぇ!俺の妹だ!」


娘だ!妹だ!と、煩い二人に挟まれるが、呼吸を正す方が先決だったため放っておいた。



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