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ジェームス・オランジの真実

ジェームス・オランジ:物事を見たまんまで捉えるとても素直な人。

優しく、面倒見がよくて、包容力がある。



実家から、12も年下の子の心を射止めろ!との手紙が来た時には、何を言い出した!?と仰天した。

しかも相手が、あのエルリックの妹ならば、そんな気も起るはずもなく…

そんなこんなでノラリクラリと返答を先送りしていた頃に、突然、王と王太子から勅命で、その子の護衛命令が下った。

何故今まで、それ程実家が食い下がるのに、俺はエルリックの妹に会いに行かなかったかというと、実家の命に従って一度は行こうと思ったのだが、単に宰相に面会許可を悉く却下されていたからだ。

別に、見た事も無い令嬢に惚れているという事も無いので、それはそれで構わなかったのだが、今回の命令でそうもいかなくなった。

なぜ、王太子までもがこの勅命を出したかというと、王太子もまた面会許可を却下されていた同士だからだ。

因みに、求愛の行動をとった者たちは、その従者親戚まで、悉くバイオレット領内立ち入り禁止令が、鬼の宰相から出され、エルリックの妹は幻の聖女とまで言われていた。


そんな彼女を初めて見た時は、目の前で起こった突然の暴力沙汰に茫然としている、可憐な令嬢だ…と思った。

あの、何事も他人に押し付けて、自分一人我関せず、を貫いているエルリックの妹だから、この子も何か複雑なモノを抱えているのかも知れん…と、注意深く観察するが、礼儀正しいが、腹芸が苦手な素直なお嬢さんだという事しか分からなかった。

ストレートな口調で、俺の目の前で逃げる算段を立てている令嬢は、素直で可愛らしい。


その後、宿に着き、買い物に行きたいと言った彼女をエスコートしようと横に立った。

その可憐な容姿が、徐々にこわばった時には、気分が悪いのかと心配になった。

しかし、理由を聖獣様から聞いて驚いた。


今まで、この容姿で得した事も特には無いが、女性には人気があると思っていた。

エルリックと、俺と、ファータジオは、学生時代から女子の視線を奪い過ぎだと、同級の友達に涙目で怒られた程だ。


それが、本能的に恐怖を感じさせていたとは…

可哀想に、怯えている姿は小動物を彷彿とさせて、構って慰めてやりたいが俺が構うと余計に怖がらせてしまう…というジレンマに悶えてしまった。


だが、護衛の任は全うしなければと思い、ファータジオの弟の言った通り、エミリア嬢から見えない位置からしっかりと護衛しようとしたが、如何せん距離がありすぎて、助けに行くのにロスが多すぎる。

そうして、聖獣様達と共に逃げられた森の中で、何がしたいかを聞き、私なら力になれる!と、思った。

彼女を喜ばせてやりたいと思う一心で、その時は、話しかけると怖がらせるかもしれない、と言った事は頭から抜けていた。

実家の商会の支店なら、この町でも最高級も一般の品も全てが豊富に揃うし、エミリア嬢の好む物も揃えられると思ったし、実際にそうだった。

彼女が帰り際に、今回護衛に着いてきた騎士たち全員分の土産を買ってくださった事を知り、エミリア嬢の優しさに、更に惹きつけられた。

護衛に着いてきた他の騎士たちも皆が同意見だったようだ。


次の日に、街人たちが馬車に殺到した時も、必死でエミリア嬢を守ろうと頑張っていた。

結果は、その隙をついて、あっさりと彼女の兄であるエルリックに誘拐されるというお粗末なものだったが…



その後、スラムを綺麗にする計画を至急立てる必要が出てきたとかで、エルリックと一緒に無事馬車に帰ってきたエミリア嬢は、先に聖獣様に乗って従者と一緒に、王都のラング学園の寮に向かわれた。

俺達は、エルリックが魔法で化けた聖女様を馬車に乗せ、全速力の強行軍で宿をキャンセルして王宮に戻ってくる事になった。

もう少し、あの心やさしい小動物のようなエミリア嬢と一緒に居たかったという鬱憤は、エルリックの乗った馬車を我武者羅に走らせると言った八つ当たりで解消しておいた、という事実は俺の胸の中だけに密やかに仕舞っておいた。



その後、馬車内ではそれを見越して、空間に隙間を作って外の空間と馬車内を切り離していたエルリックは酔う事も無かったが、王宮で少し酔ったように馬車から下りてくる聖女の姿を見て、逆にダメージを受けた者が少なくなかったとか…

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