即興短編SS 『殺し屋とペット』
―――殺すか。
何気ない平坦な口調で男は言った。右手に力なく下げた拳銃を気怠く私に向ける。蒸かしたタバコの煙が隠し部屋の天井まで立ち上る姿が、やけに目について、私は口を布でふさがれ、十字架に縛られていることを、私は忘れて、もがいた。なんと滑稽なことだろう。
―――バーン。
男の声が笑った
「冗談だよ」
私は見開いた目を瞬いた
数秒後、理解する。男に暇つぶしの玩具として弄ばれたことを。
正直、ほっとした。
(なーんだ、いつもの嫌がらせか)
文句を言おうと口を開こうとする。
そして私は固まった。
「今から殺すんだ」
彼の眼は悲しく真剣そのもので
銃声が、響いた
壁にどろりと付着する真っ赤な絵の具の海。
そこに、女がひとり、焦点の合わない目を上に向けて、けだるく座り込んでいた。背後には十字架。そう、この十字架は彼女の墓標だったのだ。
男は手にした拳銃を下して、帽子を被った。
「ごめんね。もう君を飼えなくなったんだ。だから、―――さようなら」
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追伸。「続編はねえからなッ!!」以上。ありがとうございました。(ぺこり)