無情な希望と震える両腕
だが、その希望は無情にも彼らが最も忌む少女、霜月一日にも既に流れていた。
「奴等が僕の世界に回帰の世界の魔術を?」
一日からその事実を知らされたヒリズは驚きの表情を浮かべる。
「ええ、たった今入ってきた情報なのですが、間違いありません」
「奴等め・・・二つの技術を混ぜて反撃の糸口にしようってのか!!」
回帰は口を荒げるが、ヒリズは「でも、それは今すぐに脅威になるの?」と対照的に落ち着いた口調で返す。
「・・・結論から申し上げれば、今すぐの脅威となる可能性は限りなく低いですね。何しろ二つの技術の交配は私達も試みていますが実践に用いれる物は早々は生み出せませんから。
まして奴等に残されている技術は微々たる物。寧ろここで慌てて行動する方がかえって不都合になる可能性が高いと言えるでしょう」
ヒリズの返しに対し一日はヒリズのそれを上回る落ち着きで返す。
「それは分かったけど、一日はこれからどうするべきだと思ってるの?」
「どうするべき・・・といいますと?」
壁に凭れ掛り、話を聞くだけだった神消が初めて口を開くが一日はペースを乱す事なく返答する。
「魔術の提供が私達にとって現時点ではさほどの脅威にならないことは分かったけど、ならどう動くべきかって事。このまま僕の世界にも来るつもりなのか、それとも・・・」
そう言った神消は胸の前で組んだ腕を振るわせていた。それは恐れではなく、一刻も早く戦いたいという武者震いであった。それ故
「神消さんの世界って確か武術が主流の世界で強い者が弱い者を時に喰らい、時に守る世界ですよね」
そう確認するように言ったヒリズに
「ああ、だから私も・・・」
と、内心で戦う事を望んでいる事を隠しきれていない口調で返答するのであった。
「神消先輩の世界の現在の勢力図を見せて頂けますか?」
一日がそう申し出ると
「いいだろう、今見せてやる」
他の誰とも違う声と共に正面モニターに問題の勢力図が表示される。
「フリーチェ様、何時の間に・・・」
驚いた声でそう返答したのは回帰であった。
「ここは私の部屋なのだ。私がいるのは極自然な話だろう」
「まあ、それはそうですが・・・」
至極まともな正論に対し、回帰はただ頷くことした出来なかった。
「この世界は武術が盛ん・・・そして弱肉強食・・・この勢力図を見る限り、制圧してはいるものの度々抵抗にあっているようですね」
フリーチェと回帰のトークを尻目に一日は冷静に状況を判断していた。
「あ・・・ああ・・・」
フリーチェとヒリズの会話に気を取られていた神消だったが一日の発言で直ぐに彼女の方を向き、少し後ろめたい様子で返答する。




