アメーバを巡る思惑
「ですが、これはある意味ではチャンスなのでは?」
そういうキーパーの顔は凛々しく、はったりや負け惜しみの類ではなかった。
「チャンス?どういうことです?」
沈み切った顔を辛うじて上げながら生花はその意味を問う。
「あのアメーバでこの世界の奇病が治せる事を証明出来れば病気の治療法を確立し、且つ私達の濡れ衣も晴らす事も出来るのではないかという事です。当然簡単な話ではありませんが・・・」
そういうとキーパーは歩き出し、部屋の中央に立つ。
「成る程・・・現状ではそれが濡れ衣の返上に最も確実な手であると言えるでしょうね。元々状況は瀬戸際なんです。可能性を問わず賭けてみる価値はあると言えるのではないでしょうか?」
チュアリもキーパーの提案に賛同する。
「となると、なんとしてもあのアメーバを鹵獲し、その効果を証明して実績を出す必要がありますね。次にアメーバが出てくるまでにその方法が確立できればいいのですが」
聖はこう告げると腕を組み、手を顎に添える。
だがそのケースは既に一日達も推測していた。
「つまり、彼等にあのアメーバの鹵獲をさせる訳にはいかない。そういう事ですね」
苦虫を噛み潰した様な表情で話された一日の説明を聞いた暗はそう返答する。
「ええ、もしそれをされると私達の状況は一転してひっくり返されかねない。だから本来アメーバの存在が公表されるのは望ましくなかったんだけど・・・」
「今となっては言っても仕方ない、其れよりも早くアメーバに対する対抗処置をとるほうが現実的、でしょう?」
「流石に分かるようになってきたわね」
一日の発言を先読みし、返答するシオン。それには一日も関心を隠さなかった。
「あの・・・一日ちゃん、あのアメーバは人間を破壊するって言ってたけど、具体的にはどういう状況なの?」
命が不意に質問する。
「・・・あのアメーバに取り込まれた時、私の心の一部がアメーバの中に溶けだしていく様な感覚になったの。でもあれは・・・」
「そういう事・・・何だね。僕たちの考える人間とは真逆の方向だって」
一日の口ぶりからその意味を悟った命はそこで結論を出す。
「ええ、だからこそあのアメーバは殲滅しなければならない」
「その為に僕たちがいるんでしょう」
「ええ、皆、近々来るべき戦いが始まる。そう考えていて」
一日の問いかけは言葉以上に覚悟を問う印象を与え、それに応える他の面々も又顔に強い決意が現れるのであった。
「既に彼等はこの事に気付いているわ。アメーバの出現については此方は既に探知する技術がある。あとはどこに出てくるか、その点が運試しね・・・」
一日のその発言に込められた意味を、その場にいた全員がぼんやりとではあるものの理解していた。




