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第五十二話

守ってくれてるのはわかるけど、あぁキラキラしてると目立ってしょうがないよな」

後ろを俺たちの後ろを歩いてる、牧師姿のラゴ様が通行人の目を引いて、はっきり言って恥ずかしい。

カフェを出た俺たちは、ラゴ様と大治郎を連れて春から通う高等部を見に行った。

もちろん中には入れないけど、校門の前で校舎を眺めた。

「屋上はここからじゃ見えないか…」

期限を知らせる魂玉の砂時計はさすがに見えない。

「わぁ、4月から都雅たちはここに通うんだね。いいなー」

獅狩が目を輝かせた。

「そうか? 獅狩が通う共学の方がいいと思うぜ」

「え、だってこっちの校舎って去年改築されたばかりで新しいでしょ。設備とかも色々新しくなってるみたいだし、古い校舎よりはいいじゃない」

廊下とかもピカピカなんだろうな~と違う学校に通う獅狩の方が楽しそうだった。

「学校前のこの道を北の方へ進むと坂道があるだろう? あの先に流歌が引っ越してくる家がある」

ラゴ様が指した方に確かに坂道が見えた。かなり急な坂道だ。

自転車通学って言ってなかったっけ? 行きはよいよい帰りは怖い的な坂道だ…。

「登ってすぐのところにある町営住宅ですか?」

勇気が尋ねると、ラゴ様は首を横に振った。

「いやいや、そのもう少し奥だよ」

「奥って…え」

勇気と獅狩が顔を見合わせた。その後ろで都雅が少し驚いたような顔をしている。

「なんか問題あるのか?」

「えっと、坂道をずっと登っていくと一軒だけ大きな洋館があるんだ」

「へぇ、こんな田舎に?」

「う、うん」

「それがどうしたんだ?」

「あのね。要くん。あの洋館はゴーストマンションって呼ばれてるんだよ」

「ゴー…ん?」

俺が聞き返すと、都雅が答えてくれた。

「ゴーストマンション。つまりはお化け屋敷。某映画の洋館に似てるんだ」

「え !? お化け屋敷 !?」

「しばらく誰も住んでなかったと思うけど」

洋館でお化け屋敷…それはちょっと見てみたい。

「ここから、時間かかるのか?」

「あの坂道を登るから、結構かかるかも…」

そうだ坂道の問題があった。

あの坂道を歩いて登るのはきついな…。

「確か上に行くバスがあったよ!」

獅狩がキョロキョロとあたりを見回してバス停を探す。

「獅狩、行くつもり?」

都雅が眉間に皺を寄せて言うと、獅狩はニコニコと笑顔で返す。

「話に聞くだけで、私見たことないんだもん。行ってみたい。引越しはまだだろうし、外から見るだけだから。ね? 行ってみようよ~!」

「獅狩もみたことないのか」

「うん、私、中学の時に引っ越してきたから。ね~、行ってみようよ!」

都雅が困ったように袖を引っ張る獅狩を見ている。

「親戚のラゴさんもいるんだし、大丈夫だよね! 私、バスの時間見てくる」

「獅狩!」

獅狩を追いかけて都雅が走って行った。

「本当に、あそこに引っ越してくるんですか?」

勇気が怖々聞くと、ラゴ様は笑顔で頷いた。

「地元でゴーストマンションと呼ばれているとは知らなかった。もっともお化けはいないよ、今の所はね」

意味ありげにそう言って、ラゴ様が小さく笑った。

「古びていたので多少リフォームしたそうだ。外観は鈴のお気に入りで、そのままにしたらしい」

「鈴?」

「あぁ、流歌の妹だよ」

「へぇ」

お化け屋敷と呼ばれる家の外観がお気に入りとは、マニアックな妹だな。

「要くーん、あと15分くらいでバスがくるよー!」

結構バス停が離れていたらしく、走って知らせに来てくれた獅狩だった。

「さっきメルアド交換したんだから、メールすりゃ良かったのに」

「あ、そうだった」

えへへと笑って獅狩は立ち止まって息を整える。

「ほら、バス停にいこ!」

都雅はバス停に置き去りにされていたらしく、俺たち…というか獅狩の姿をみてホッとした顔をしていた。

「たのしみー!」

「一応リフォームされてるみたいだぜ」

「え~!」

「外観はそのままらしいけど」

「そっか、早くみたいな」

俺と獅狩がワクワクしてるのをよそに、勇気と都雅は困った

ような顔をして立っていた。

(ラゴ様はキラキラはしてるけど、普通に立っている)

15分ほど話をしながら待っていると、1分遅れでバスがやってきた。ちなみに、大治郎は獅狩が持っていた布製の鞄に入ってもらった。うん、真似しちゃだめだ。

車社会になったせいなのか、バスに乗っていた客は一人。

俺たちがワイワイ乗るのをみて、運転手も驚いていた。

坂道を登って少し行ったところで降りた俺たちは、そこから5分歩くことになった。大治郎はすぐに鞄から出て勇気に抱えられた。

「随分奥に行くんだな」

「あ、ほらあれだよ」

勇気が指した方向に大きな門とその後ろに、まさにお化け屋敷という感じの洋館が建っていた。

門も屋敷も蔦が絡みついていて、まだ明るいというのにおどろおどろしい感じがする。

「あ、リフォームしたのって本当なんだね。窓ガラス直ってる」

勇気が門の前でそう言った。

小学生の時に見に来たらしいんだが、その時には窓ガラスはあちこち割れていたそうだ。

「上の方に風見鶏があって、それがキコキコ音を出して回って怖かったんだよ。あれ? 煙突から煙出てる」

「あれ?」

「中に誰かいるのかな?」

ラゴ様がおや? という顔をして門についているボタンをおした。

結構な音でリンゴーーーーンと鳴って、俺と勇気と獅狩が飛び上がって驚く中、屋敷の玄関が気味悪い音を立てて意外に早く人が出てきた。

若い男で、都雅とは違った意味でイケメンだ。こちらに気づくと軽い足取りで近づいてきた。両耳に黒いピアスをしているのが見えた。

「やぁ、初めてのお客さんが可愛い女の子とは嬉しいね」

都雅がその言葉に反応して獅狩を自分の後ろに隠す。

「流歌。もう引越ししてきていたのだね」

「こんにちはラゴ様。あちこちから泣きつかんばかりに頼まれまして、1週間早く引っ越してきましたよ。ボクだけ先にね」

勇気の肩で、大治郎がぼそっと「計都さんたちだよ、きっと」と言ったので、俺は吹き出しそうになるのをこらえた。

「そうか、鈴たちはまだ来ていないのか」

「ええ、よそにいってるんで」

ラゴ様はうなづいて、俺たちを振り返った。

「こちらが、さっき話した余沢 流歌だ」

「どうも、余沢 流歌です。ま、どうぞ中へ。今、玄関の掃除してたもんで、足元気をつけてください」

ギギギと音を立てながら門を開いてくれて、俺たちは中へと入れることになった。

「そのままどうぞ、靴で大丈夫です」

掃除してたという言葉通り玄関が水で濡れていて、モップが立てかけられていた。

「玄関にいたから、やたらと早く出てきたのか」

そう俺が呟くと、律儀に「ええ」と余沢が答えた。

「キッチンだと結構な時間かかるんですけどね。インターホンも新しいものに変える予定です」

応接間やらリビングは掃除がまだだそうで、申し訳なさそうにキッチンのとなりにある食堂に通された。

予想以上に広い食堂で、長いテーブルに椅子が窓側に五脚、反対側に五脚、両端に1脚ずつというものだった。

その五脚もゆったりと置かれているので、やたらと長い。

「もともと教会だったのを買った人がリフォームして住んでたらしいです。そのあと2回持ち主が変わって、しばらく誰も住んでなかったそうですね。他の部屋はそうでもないんですけど、食堂は何故かこのままでした。小さいテーブルにすることも考えたんですけど、まぁしっかりしたテーブルだしもったいないってことで、このまま使うことになりました」

木でできたテーブルで古びた感じはあるものの、古いからこその光沢みたいなのがあって、綺麗だった。いわゆるアンティークってやつかな。

「お好きな椅子に座ってください。お茶入れてきます」

「あ、お構いなく!」

「あぁ、流歌。先に紹介しておくよ。君が通う学校の同級生になる子たちだ」

俺たちを見回したあと、小さく笑った。

「なんだ、同級生か。そっちの人は年上かと思って」

都雅のことだろうか。

「こちらが船迫 要くん。こちらは鳶沢 勇気くん。そして八潮路 都雅くんだ。こちらのお嬢さんは九網 獅狩さん。都雅くんの彼女だったね?」

「あ、はい」

獅狩が頷くと、余沢があからさまにがっかりした顔をした。

「何だ彼氏持ちか~。ま、仕方ない。そっちの彼氏、そんな顔しなくても彼氏がいる女の子に手をだしたりしないよ。安心して」

そういって余沢はキッチンに行ってしまった。

都雅がむすっとした顔で窓際とは反対の椅子に座り、獅狩がその隣に楽しそうに座る。4人並んで座るのもなんなので、俺と勇気は窓際に座ることにして、ラゴ様は一脚のところに座った。

「まだ色々ものが揃ってなくてすみません、しばらくはボク一人なんで、ティーバッグの紅茶しか持って来てなくてティーセットもまだ来てないんです」

「いやいや、これで充分だよ流歌。ありがとう」

ラゴ様がクマのマグカップで紅茶を飲む姿を見ることになろうとは思わなかった、ちなみに俺のが兎、勇気が象、都雅のは、わざとなのかハートで獅狩のがリンゴのマグカップだった。


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