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大治郎

大治郎の視点です

 船迫 要(中身は三刀屋鋼樹)たちが店内で買いものをしていた頃、黒猫のオイラは自転車置き場で時間を潰していた。車に傷がつくことに敏感な人間も、自転車の傷はそれほど頓着しないようだったからだ。

 サドルに乗ってみたりして遊んでいると、一番端の自転車のカゴが理想的な大きさをしていたので、思わずオイラは飛び込んでしまった。黒猫の姿になってから、猫の習性に染まりつつあるので気をつけてはいたのだけれど、うずうずしてしまって案の定というか、飛び込んだ途端オイラはカゴのカバーに付いていた紐に絡まって出れなくなってしまった。

 ここで騒ぐのは男らしくない。うう、しかし出れない。

 もがけばもがくほど可笑しなことになっていたようだった。

「…大治郎。何やってるの?」

 頭上から青空の声がして身体が軽くなる。

「あ、青空! 助かった~」

 青空がオイラに絡まった紐をほどいてくれて、危機を脱したのだった。大げさだけど…。

「皆さんは?」

「店内で買い物中」

「大治郎はここで何してたの」

「…じ、時間を潰そうかと思って」

「遊んでたの?」

「いや、あの、その…つい入りたくなって…」

 怒られるかと思って、青空の顔が見れなかった。

 遊んでたつもりじゃなかったんだけど…。

「猫らしくなってきたね」

「あ、やっぱりそう思う?」

 嬉しくなって顔を上げると青空がオイラの頭を軽く叩く。

「調子に乗らないの! これが任務だったらどうするのさ」

「ごめんよ…」

 最近オイラのような任務中の動物が帰ってこない事例が多いので青空はいつも以上にオイラを心配する。

 申し訳ない気持ちになってしまい、シュンとしているとクスッと笑う声が聞こえた。

「青空?」

「ごめん。だって封印されたころのこと思い出すと可笑しくて」

 オイラが黒猫に封印されてすぐの頃は、4足歩行に慣れなくて後ろ足で歩こうとしたりしたこともあった。足がもつれて転んだりしたこともあったなぁ。

「良く癇癪起こしてたね」

「慣れるのにこんなに時間がかかるとは思わなかったよ」

 空中を飛べる事もなかなか慣れなかったけれど、歩くよりは早く覚えた。青空のためだったから。

 青空の所属する玉繭(一般的に死神のような仕事をする機関)には階級があって、今の青空の階級では空を飛ぶことは許可されていない。その代り、オイラのしっぽにつかまって空を飛ぶ。

 船迫 要の魂を発見した時も、そうやって空を飛んでいた時だった。

「そういえば玉繭に戻ってたんだろ? 何て言ってたのさ、青空」

「うん。今はカラスのオニ(名前がオニ、式神のようなもの)が近くにいるから大丈夫だと思うけど、新学期になって学園に行くようになると、僕らはなかなかそばにいられないから、助っ人を呼ぶことになったらしいんだ」

「助っ人? えっ、まさか七夜姉妹じゃなかろうね…」

 七夜姉妹っていうのは青空の上司であるラゴ様の妹達の事で、負けず嫌いの人が多い。

「誰かは教えてもらえなかったけど、違うと思うよ。僕らはあの学園の敷地に入れないし」

「そっか…そうすると玉繭に所属してないやつってこと?」

「たぶん、そうだと思うよ。幽体で動ける人間があちら側にいるとなると、すぐに対応できる人がこちらにいないと困るからね」

 オイラたち動物なら中に入れるけれど、人間に追い出される確率が高いし、カラスならなおさら窓が閉まっていると入れないことの方が多いってことなんだろうけど。

「それだけ危険度が増したってことなのかい?」

「うん。三刀屋さんにコンタクトを取って来たということは、向こうも少し急いでいる理由があるのかもしれない。もし身体の居場所が分かっても喰いつかない方が良いって言われた」

「助っ人って誰に頼むんだい?」

「玉繭関係でもない人間でもない者って言ってたけど、詳しくは教えてもらえてないんだ。近いうちに紹介されるとは思うよ」

 人間でないものってとこに引っかかったけど、青空も教えてもらってないんだから聞いても仕方ない。

「この後の予定は?」

「少し三刀屋さんとお話をしたら、僕は帰らなきゃいけないんだ。緊急に仕事が入って春空さんと北の方へ」

 春空さんってのは青空の先輩で、青空と同じようにラゴ様の養子の一人だ。他にも養子がいるらしいけど、オイラは会った事がない。意外に玉繭内の福祉に積極的なラゴ様で、一度聞いたことがあるのは「面白いことなら何でも!」というのがポリシーなんだそうだ。

「オニとオイラだけで大丈夫かい?」

「えーとね…ラゴ様が来てくれるそうだよ…」

「ラゴ様自ら!?」


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