第四十七話
「さ、さてと。俺もそろそろ帰るかな。お袋心配するだろうし」
「そうだね。僕も一緒に帰るよ」
勇気が俺の鞄を持って渡してくれる。
ほんと、勇気って気が利くやつ。
部屋を出て階段を下りると、すでに右文さんはおらず、マナちゃんがソファに座って雑誌を読んでいた。
「あら、もうお帰り?」
「はい、お邪魔しました」
勇気がぺこりと頭をさげると、マナちゃんは残念そうに溜息をついた。
「ちっとも邪魔じゃないのよ、もっといてくれてもいいのに」
「はいはい、マナちゃん、わがまま言わないで」
都雅が苦笑しながら母親をなだめる姿は(悪いが)面白い。
玄関に出て靴を履き、勇気と二人で外へとでた。
「また遊びにきてよ。マナちゃんも喜ぶからさ」
「おぅ、また来るよ」
「絶対絶対来るよ!」
勇気は満面の笑みでそう答えた。
うんうん、愛いいやつ。素直でいいねえ。
などと思っていると、思ったことが顔に出たのか、都雅に笑われてしまった(勇気のことを言ってられないか)
「電話しなくていいの?」
「歩きながらかけるよ。近くに公園あっただろ、そこに迎えに来てもらうからさ」
「そう、それじゃ、またね」
玄関の扉の後ろからマナちゃんが寂しそうに顔を覗かせている。
「また、来ます」
「ええ、絶対来てね! 待ってるから」
まるで、俺たちが友達のように、そう言ってマナちゃんは都雅よりも柔らかい微笑を見せてくれた。
これで都雅の母親だっていうんだから、驚きだ。姉だって言っても通じるだろうに。
オホンと都雅がわざとらしく咳をしたので、俺は慌てて歩き出した。
「そ、それじゃまたな~」
「またね」
勇気と一緒に手を振って、都雅の家をあとにした。