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第四十一話

 ラゴ様は短い溜息をつくと、話し始めた。

「気配を消すと言っただろう? 気配を消してしまう前、一瞬だけ眩い光を放つ。いわゆる目くらましというものだろうね。私が魂玉に入れられたのは、あの時兄妹に話しかけられて違う方向を見ていたためだった。そうでなければ二人とも目がくらんで逃がしていただろうね」

 今回はそれで逃げられたということなんだろうか。

「しかし…今回で他のコレクターにも知れ渡る。次は無いだろう」

 ラゴ様は本当に残念そうにため息をついた。

 しばらくの沈黙のあと、青空が目頭を押さえながら口を開いた。

「いくら玉繭に属さないコレクターでも、人間とコンタクトを取ることはしてはならないと分かっているはずなのに…」

「え…僕たちは…いいんですか?」

「三刀屋さん達の場合は特別なんです。我々は普通、姿を隠していなければならないんですよ」

 確かにコンタクトを取りすぎて、この世とあの世がくっつくと面倒な事になりそうだ。

 青空は小さくため息をついて顔を上げた。

「コレクターは魂を無理やり取り出す事ができないので、人間に魂を取り出してもらう代わりに、その器は人間に渡す…と協定を結んだのですね…きっと」

 そいつらにとって、俺の魂も身体も物同然ということか。

「ずいぶんな扱いだな」

 俺の目が怒りに燃えているのを見て、ラゴ様は小さく笑った。

「尊厳を主張するかね? だが、そのためには身体を見つけなくてはならない」

「このままでは、気の糸が切られてしまうのではないかと、心配です」

 青空の吐息が震える。

「まぁ…それは大丈夫だから安心しなさい。青空」

 ラゴ様は何でもない…といった風にヒラヒラと手を振った。

「どうして大丈夫だって、分かるんですか?」

 都雅がこれまた深刻そうな雰囲気もなく、茶のみ話のように気楽に尋ねる。

「ふむ。そなたも変わった魂だの。どうだ? 死した後は私のものにならないかね?」

「ラゴ様…!」

 青空は勢いよく立ち上がった。

「分かっておる、青空。だが、急いては事を仕損じると言うではないか。落ち着きなさい」

 右手で顔を覆って、青空は落ちるように座る。

 ちょっとだけ青空に同情するよ。俺的にはラゴ様って上司に持ちたくないタイプだ。

「あの砂時計の魂玉が全て落ちてしまうまでは切れないだろうから大丈夫だ。そういうところだけはきっちりと守るのがコレクターだからね」

 根本的なルールを守れよ…と言いたい。

「生贄の場合はどうですか? 肉体が死んでしまったら切れてしまうのでは?」

 都雅が小首を傾げて言った。

「生贄にしろ何にしろ、あの砂時計の時間は守られる。だが、生贄が一番厄介だろうね。新器と依り代ならば、魂は違うが身体は一応生きている。生贄はそうはいかない……が。私は生贄ではないと推測する」

 全員がラゴ様に注目する。

「どういうことですか?」

「何に捧げるか…によるが、少なくとも私の知っている生贄の儀式というのは器と魂両方を捧げるものだからだ。今回の場合、魂は離脱させられている。もちろんこの考えは推測であって百パーセントではない。それゆえ…言うのをためらっていたのだが…」

 ふと横を見ると、勇気が一生懸命理解しようとしている様に見えた。

「勇気。オーバーヒートしないように気をつけろよ」

「え? あ、うん。えっと…質問…いいですか?」

 ラゴ様と青空の顔を交互に見ながら勇気がそう言うと、二人は頷いた。

「依り代にするなら、盗むまでしなくても良いような気がするんです。もちろん、何らかの危険があるのかもしれないですけど…でも、変な言い方すると、誤魔化して説得すれば、盗まなくても済むでしょう?」

「一理ある…と言いたいところだが、それならば三つとも誤魔化して説得できる。そもそも忘れていないかね? 本来ならば、すでに魂玉に入っているはずなのだ。そうすれば、器は空になる。それを持っていった…と言う事だ」

「ああ…そうか…」 

 勇気はため息まじりに言って、目を閉じた。

「身体を見つける事も重要だが、見つけた時にどうやって奪還するか…という課題も残っている。あちらも、それを阻止しようとするだろうからね」 

「コレクターが複数いることを考えると…」

 青空は深くため息をついた。

 ラゴ様みたいな奴が複数いると思うと…俺もため息が出る。

「そなたがあの校舎へ通うようになるまでに、何か策を考えなくては」

 ラゴ様が楽しそうに言う。

 効果音を付けると…そう「ウキウキ」といった感じだ(効果音じゃないか…?)。

「それまでに、何か俺がやっておく事ってないのか?」

「特にありません。新学期になるまでは、あの校舎に近付かないで下さいね」

「ダメなの?」

 勇気がそう聞くと、青空は小さく微笑んだ。

「八潮路さんと蔦沢さんは結構です。そうですね…春休みの間に偵察に行っていただけますか?」

「いいよ」

「僕、がんばります」

 二人は頷く。

「ちょっ。えっ。俺は?」

 ラゴ様がフフフと笑って俺の両肩に手を乗せた。何か意味ありげ。何か重要な事でも?

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