第四十話
「俺が…面白い?」
「そう。そなたは五百年に一度、現れる…という珍しい魂なのだ」
俺と都雅、勇気はそれぞれ顔を見合わせる。
「珍しい魂?」
「そなたの魂は魂玉に入ると、歌を歌うのだ。他の魂玉は音を奏でるが、歌いはしない」
「何だ…それ」
「僕たちも最近まで詳しいことが分からなかったのですが、ラゴ様が協力してくださる事になって分かった事なんです」
「われわれコレクターにしか分からない気配だから、大抵はコレクター同士の争いで終わる。が、今度はそうは行かなかったようだな。そなたの身体と魂の交換が条件だろう。だが、魂が逃げた」
俺は、自分が空中にフワフワと浮いていた時のことを思い出した。
「危険を察知したのではないでしょうか? それで身体から無理やり離された魂は、魂玉に入れられる前に逃げた…」
青空がそう言いながらも首をかしげる。
「でも…どうやって逃げたのでしょう…」
ラゴ様を見上げた青空は、笑っているラゴ様を見て目を瞬かせた。
「もしかして…ご存知なのですか?」
ラゴ様は笑いながら頷く。
「何しろ、最初に見つけたのは私だったのだからね」
「……え?」
全員がラゴ様を見つめる中、都雅が、
「と、言う事は少なくとも五百年は生きている…という事か」
と呟いた。
「まぁ…私のことは置いておいて」
「五百年に一度…という事を分かっているということは、ラゴ様が見つけられる前にもあったと言う事ではないのですか?」
「うむ。確かにめずらしい魂がいる…というのは書物にも残っている。だが、コレクターが見つける前に来迎部が向かえ、祝部によって新しく生まれ変わってしまっていた。私が見つけるまでは誰も魂玉に入れた事はなかったのだ」
青空が慌てた様に、どこに隠していたのかノートパソコンを取り出して開いた。しばらくカチャカチャとキーを打っていたが、目的の物が見つかったのか手が止まった。
「あぁ。これですね。……確かに五百年ごとに現れている…虹色の魂?」
「虹色が珍しいってことは、普通はそんな色じゃないのか?」
「ええ。それぞれ色は違いますけど…虹色というのは無いですね。僕も見たこと無いです…あれ?…でも彼を助けた時は虹色じゃありませんでしたよ…ラゴ様」
ベッドの上で丸くなっていた大治郎も顔を上げて頷いた。
「おいらも見たけど、虹色じゃなかったなぁ…」
「そこがこの魂…私は“こよなし”と呼んでいるが…の不思議なところだ。気配を消すのだよ…それと共に色が無くなる。彼を見つけた時、オーラが無かったであろう? 普通の魂ならば光っているはずなのに」
青空と大治郎は顔を見合わせた。
「黒いオーラだったわけではないのですね?」
「深夜だったために気づかなかったのであろう。虹色ならば、他のコレクターに見つかっていてもおかしくは無いのだから。青空が見つけたのは何故だ?」
「他の魂を探索した帰りでした。偶然、空中に浮遊している魂を大治郎が発見しまして…玉繭(たままゆ 黄泉の国をまとめている組織名)と連絡を取ると、まだ器が生きているとの報告と器が行方不明との報告を受け取りました。それで最初は気を探したのですが、どうしても途中でわからなくなってしまったんです」
「つまり、大治郎や青空が発見しなければ、他のコレクターに拾われていた可能性があると言うことだ」
話の展開が早すぎて理解できない。
青空は難しそうな顔をして、うつむいた。
「それで、どうやって逃げ出すのか…教えていただけますか」
ラゴ様一瞬どうしようかと天井を見上げたが、すぐに青空に視線を戻す。青空も顔を上げてラゴ様を見つめた。