第三十九話
ラゴ様がうれしそうに説明を始めた。
「大抵コレクターは彷徨っている魂を捕まえて気に入ったものを集める。だが、今回は何を考えたのか、人間と協力することを思いついたらしい」
「個人主義のコレクターでは珍しい事です」
青空が難しそうな顔をしつつ、そう言った。
「そういえば、さっきも複数のコレクターが関わっているって言ってたっけ? でも複数のコレクターで俺一人の魂? 魂って分割できるのか?」
「魂自体は分割できません。しかし、記憶は分けることができるんです」
「記憶…?」
「はい。魂には記憶という霧のようなものが詰まっています。それを魂玉よりもさらに小さい玉に封じ込めます。それをコレクションにするコレクターも多いのです」
「楽しい記憶だけを集めるものが多いが、逆に苦しい記憶や哀しい記憶を集めているコレクターもいる。私には理解できないがな…」
ラゴ様は美しい(俺がいうのもなんだけどさ)眉を寄せて、首を横に何度か軽く振った。
「魂玉はきれいな音を奏でるって言ってたけれど…記憶の玉は? どうなるのかな?」
都雅が聞くと、ラゴ様がにっこり微笑む。説明するのが楽しいようだ。
「そうだな…。そなた達の世界でいうと、魂玉がオーケストラであり記憶が楽器といったところだろう。記憶だけでも音は奏でる。だが、魂玉というオーケストラに勝る音はない。特に玉響は素晴らしいのだ」
ラゴ様の隣で青空が少し呆れた顔をした。
「ラゴ様…本当はあちらのコレクターに加わって、砂時計の玉響を聞きたいと思っていらっしゃるのではないでしょうね」
「む…いや。そうではないのだが」
「そういえば、ラゴ様もコレクターだって言ってませんでした?」
勇気が思い出したように言うと、青空が頷いた。
「それなのに…何で青空さんと一緒にいるんですか? 個人主義じゃないんですか?」
「私は特別なのだよ」
「ものは言いよう…ですね。ラゴ様は面白いと思ったことにしか関わらないのです。普段はお願いしても手伝ってくださらない」
「俺の身体が盗まれた事が、面白い事?」
俺がラゴ様を睨みつけると、意に介さないといった様子で笑う。
「そなたが面白いのでな」