第三十八話
とても和やかな昼食だったけど、俺は窓の外にキラキラ光るものを見つけて、はっと気づいた。
「都雅」
俺の方を振り向いた都雅は、気づいたのか頷いて立ち上がった。
「さ、片付けちゃおうか」
「あら、後片付けなら右文さんと二人でやるから良いわよ。今日はお友達も来ているんだし、特別に免除しちゃう」
「そう? 有難う。それじゃ、行こうか」
「うん」
ぽやーっとしている勇気を引っ張って二階に上がる。
駆け上がって都雅の部屋に入ると、鍵をかける。っつーか鍵つき…羨ましい。
部屋には青空と大治郎がすでに待っていた。大治郎はベッドの上に、青空は立っている。
「悪い! 待たせたかな」
「大丈夫ですよ」
「かなり待ったんだけどねぇ」
青空がにっこりと微笑んで言った後、大治郎がわざとらしい溜息をつきながら首を振る。猫の溜息…ちょっと面白い。
「こら! 大治郎」
大治郎はそ知らぬふりで、歩き出すと窓から顔をだしてニャーと鳴いた。
その声が合図なのかラゴ様が窓の外から入ってくる。
「窓の外がキラキラしてたから、気づいたんだけどさ…」
俺がそう言うと、ラゴ様はにっこりと微笑んで長い髪を指でつまむ。
「ふうむ。私の髪も役にたつのだな」
「ところで、時間もあまりない事だから、さっさと説明始めてくれよ」
「はい、分かりました。ええと、それでは…何から説明しましょうか」
青空が頷いて俺たちの顔を見回す。
「俺が一番聞きたいのは、俺の身体が盗まれた理由」
「それは、こちらでも分からないとお答えしておきます。ただ、いくつか推測できることはあります。第一に生贄の場合。第二に新しい器。第三に依り代の三つです」
青空が指を一本一本増やしながら説明する。
「生贄は何となく分かるけど…新しい器と、それから依り代って何だよ」
「新しい器とは、三刀屋鋼樹さんの身体に違う魂を入れる…と言う事です」
「今の俺みたいにってこと?」
「はい」
俺の身体に俺じゃない違う魂が入ると思うと少し…いや、かなり変な気分だった。
要もこんな感じだったんだろうか。
「それじゃ、依り代は?」
青空が説明する前に都雅が本棚から辞書を引っ張り出してきて、開く。
「“依り代”神霊が現われる時の媒体となるもの…だそうだよ。つまりは神様を君の身体の中に下ろすってことだね」
「はぁ…?」
理解しにくい。俺に神霊を下ろしてどうするんだよ。
「ラゴ様から先ほど教えて頂いたお話だと、どうやらコレクターと人間が結託しているようなんです」
「それが何か?」
「コレクターは器など求めん。魂…それも美しい音を奏でる魂を手に入れたがるのだ」