第三十四話
「お邪魔します…」
「…へぇ…随分と…絵が多いなここは」
玄関にいきなり龍の絵がお出迎え。さらに廊下に山の絵と鳥の絵。
リビングに入ると、どデカイ絵が飾ってあった。見返り美人ってやつか? 着物を着ている女の絵だ。
「うわー、本物だ!」
勇気が歓声をあげて絵に近付く。
「僕、絵画集でしか見たことないよ」
「…なるほど…と、言う事は都雅の親父さんは画家なわけだ?」
都雅は頷いた。
「あっちの平屋はアトリエなんだ。だから半分は父のスペースってわけ」
「ふうん…」
「要くん! この絵はね、右文の奥さんがモデルなんだよ!」
見返り美人を見ながら、勇気は俺に説明する。
「っつーことは、都雅のお袋さんか…へぇ。美人だな」
「有難う」
と、いきなり後ろから声がして、俺は振り返った。
「え、あっ」
そこには絵の見返り美人と同じくらい綺麗な女の人が立っていた。洋服だったけど。
「始めまして。都雅の母です。八潮路 真鶴、マナちゃんって呼んでね?」
キャピ(後ろにハート)…という効果音がつきそうな感じだった。見た目、いいトコのお嬢様って感じ。都雅の母親にしては若くみえた。
「お母さん…」
「やだー、マナちゃんって呼んでってばー」
都雅は俺と勇気に苦笑して見せた。
「マナちゃん」
「はい、何かしら? 都雅」
「友達、紹介するよ」
都雅が言った言葉に、都雅のお袋…マナちゃんはひどく驚いた様子だった。