第二十七話
勇気に言われて、説明をしていないことに俺も大治郎も気付いた。
「そう。おいらの相棒の名前だよ」
「そうそう。上下真っ黒な服着てる奴でさ」
「青空は、いつも真っ黒な服を着ているわけじゃないよ? いつも真っ黒な服を着ているのは『じゅう』の奴らだけさ」
俺と勇気と都雅の目が点になる。
「じゅう…って何?」
「あっ…ええと。うーんと。その説明は今度。それより、さっきの続きだけど。面倒なことっていうのは、その結界のことなんだ。実は、隣の校舎の結界が一度壊されて、再び構築されたみたいなんだ」
「何が面倒なの?」
「その結界に入った猫や鳥なんかが、戻ってこない」
「戻ってこない?」
「そう…因みに、その猫や鳥って言うのは、おいらと同じような仕事をしている奴らだよ。そいつらが戻ってこないっていうんで、青空は心配して…おいらを向かわせてくれないんだ」
どうやら深刻らしい。
大治郎と同じ仕事…ということは、きっと青空たちの代わりに偵察するのだろう。
「どれくらい?」
都雅が大治郎に視線を合わせるために、しゃがんだので俺も同じくしゃがむ。
「鳥が三羽に猫が四匹。全員が戻らないのはおかしいだろう? それで、青空はお前さん達が通うこの校舎に、気があったかどうか確かめて来てって言ってた。なるべくなら、こっちの校舎にあって欲しいって…ここに無いって事は…つまり」
「…つまりは、その結界が構築された校舎が、怪しいってことか…」
都雅と勇気は御互いに顔を見合わせると、苦笑する。
「気って何?」
「あ…そうか。ええと、何だっけ?」
確か青空に説明を受けたと思うけど。…忘れてしまった。
大治郎がため息をついて、説明する。
「器と……器ってのは肉体の事。器と魂を繋ぐ糸みたいなものだよ」
「ちょ…っとまて、大治郎…」
俺はごくんと唾をのみ込んだ。
「確か、遮断されているだけで、切れているわけじゃ無かったんじゃなかったか? それなのに…この校舎に気がないという事は…」
「切られちゃった…」
「なっ…!」