第二十三話
屋上のドアは鍵がかかっていなかった。
ノブを回して屋上へと出ると、何故か勇気が立っている。
しかも、後ろから都雅の声がして、俺は振り返った。
「……いつもなら、鍵かけられてるのにね」
「都雅…勇気?」
「ほら、屋上に出て。鍵閉めるから」
都雅に背中を押されて、俺が勇気の側に行くと、都雅は屋上のドアの鍵をかけた。
「これでよし…と。さて、不思議そうな顔してるね? 要」
「だって…何で二人とも…」
勇気と都雅の顔を交互に見ると、勇気は困った顔をして見せた。
「僕…空耳かとも思ったんだけど…。『昼休み、屋上』って聞こえたんだ」
「……都雅も?」
「うん、まぁね。まさか猫が喋るとは思わなかったからさ。要の…腹話術かと…思ったよ」
某芸人さんの様に、声が遅れて届くまねを都雅がして見せた。
「できないって…」
「そう? それなら…やっぱり猫が喋った…という事かな」
「え…っと…」
「猫? 猫の声だったの!」
勇気が目を見開いて、俺を見つめる。
「え、その…どう説明していいやら…」
こんなに部外者がいたんじゃ、大治郎は出てこないだろうし…どうしよう。
「猫がしゃべっちゃ、悪いかい?」
そう声がして、屋上の手すりの上に大治郎はいた。
勇気は口をポカンと開けて驚いているし、都雅は目を瞬かせている。
どうやらさっきみたいに、二人にも見えているらしい。
「前みたいに、他の奴には見えないようにできなかったのか?」
俺がそう言うと、大治郎は手すりを下りて、俺たちの足元に歩いてきた。
「残念ながらできなかったんだよ。結界のせいでね」
「結界?…っていうか、そんな話、二人に聞かせていいのか?」
「どうやら、おいらの声が聞こえたようだし…良いんじゃないの?」
大治郎の言葉に俺は脱力。
でも、巻き込むわけにはいかない…と気力で俺は大治郎と二人の間に立って、ちょっと怖い顔をしつつ二人の顔を見つめた。