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第二十一話

「なっ、何っ」

 全員が注意をそらされたらしく、その隙にできた間をぬって、トイレを出たらしかった。

 廊下に出た気配。箱柳たちの声が遠ざかっていくのが分かる。

 都雅は俺を背負ったまま階段を一階まで駆け下り、保健室に運んでくれた。

「先生!」

「どうしたの?! とにかく、ベッドへ」

 保健室のベッドに寝かされた俺は、少し楽になったために、都雅に笑って見せた。

「猫だ…は良かったな」

 都雅は、俺が軽口をたたけるようになったと気付いたのか、ほっとして側にあった椅子に座る。

「箱柳が、さっきの猫騒動におびえていたからね。多分、うまくいくだろうと思って」

 制服の上着を脱いでハンガーにかけてもらい、シャツのボタンを二つ、自分で外した。

「サンキューな。楽に…なった」

「そう…? それなら良いけど。退院したばかりなんだろう? 無理しないほうが良い」

「まったく、本当よ」

 そう言って、ベッド周りのカーテンを開けながら保健室の先生が入ってくる。

「八潮路くん。もうすぐ授業が始まるから、教室に戻った方がいいわね」

「はい」

 都雅はそう言って立ち上がると、俺を見下ろす。

「テストは受け取っておくよ。また後で」

「ああ、悪いな」

 軽く手を振って、都雅は保健室を出て行った。

「さて、船迫くん」

「何?」

「何? じゃないでしょう。保護者の方に連絡して欲しいの?」

「うわっ、ごめんなさい。連絡しないで下さい」

「本当は…呼びたいところなんだけど」

「ほら、もう元気だし」

 先生の白衣の胸元に付いているネームプレートに、《朝来》と書かれてあるのを見つけた。

「あさき? ちょうき?」

「え? あ、名前? これはね《あさら》と読むの」

「へぇ…あさらですか。下の名前は?」

「すっかり元気になったようで、先生も嬉しいわ」

 そう言って、朝来先生は苦笑する。

「やせ我慢も程ほどにね。まだ少し顔色が悪いようだから、眠るといいよ」

「どうも…」

 朝来先生はベッド周りのカーテンを閉めて行ってしまった。

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