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第十六話

それにしても、学年末試験けっこう早いんだな。この学校」

「まぁ…エスカレーター式だしね」

 肩をすくめながら都雅が言う。

「結果は? もうでてるのか?」

 勇気と都雅(とが)が、同時に無言で頷いた。

 ちょっとドキドキする。要の試験の結果はどうだったんだろう。

「ちなみに、もう高等部のクラス分けも発表されてるよ」

 勇気の言葉に、俺は驚いて椅子から落ちそうになった。

「はぁ? いくらなんでも早すぎないか?」

「一応、仮のだけどね。他の学校に転学する人もいるから」

「で…その…俺のは?」

「あ、えっと。ちょっと、待ってね」

 勇気が一度自分の席に戻って、鞄の中から折りたたんだ紙切れを持ってきた。

「ええと、要くんは学年七位。高等部でも同じクラスだよ」

 と、いうことは受かっているわけだ。エスカレーターだと分かっていても、試験と聞くと恐怖が思い起こされる。

「そ、そうか…」

 軽い脱力感。ホッとしていると、左側から声をかけられた。

「あ、あのー。船迫くん…、席変わってあげようか?」

 声のした方を見ると、少し怯えた風の生徒が立っていた。

「あ? ああ。悪い。ここ、お前の席?」

「え…あ、うん。そうだけど…」

 勇気の方を振り返って首を傾げて見せると、気づいて名前を教えてくれる。

「彼は江上くん。江上 宗也くんだよ」

「ふうん…そっか。悪いな、今、退けるから」

「あ! いや、いいんだ。僕があっちに行くよ」

「いや、でも悪いし」

「良いんだ、じゃ、じゃあ」

 慌てた様に窓際の席へと行ってしまう。

「何だよ…良いのか? かってに席変えて」

「構わないだろう。卒業まで間もない事だしね」

 都雅がふわりと優しい顔でそう答えた。ふむ。男の俺から見ても美形だし、こりゃ女にモテルだろうな…(うらや)ましい…などと、つい思ってしまった。いかんいかん。

「あ…僕が鞄持ってきてあげるよ」

 勇気がニッコリと微笑んで窓際へと歩いて行く。

「おぉ…サンキュー。助かるよ」

 勇気が窓際の席から、俺の鞄を持ってきてくれた。ほんと、気が利く奴。

 持つべきものは友だと、都合のいい解釈をしつつ。受け取った鞄を、机の横のフックに掛けた。

 とうとう始まりのベルが鳴る。

 懐かしいその音が、自分の身体を捜す、始まりのベルでもあるのかもしれないと、そう思った。


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